四十五話 咲vsCN.メイプル
ウォーゾーンの肩から振り落とされた“九邪”候補一文字 咲は
F3の居住区まで落ちていた。
「あたた……お尻割れてもうた」
スカートの汚れを払いながら立ち上がる。
「兎にも角にも、宝具を持ってる者を早よ探さんと」
咲は目を閉じ、周囲の気に集中する。
「なんや、近くにおるやん!」
そのまま腰の刀を抜いて一振り。
居住区の三割を剣圧で吹き飛ばす。
「随分と派手にやってくれるわね~。
今のでもし壊しちゃいけないものあったら、この船沈んじゃうわよ?」
破壊されたロッカーの物陰から一人の女性が出てくる。
癖のあるブロンドの長髪。は背を覆うほど伸び広がっており
旋毛の付近から髪束がインコのように跳ねている。
長い睫毛に大粒の苺のような赤く綺麗な大きな瞳に
左眼の下には魅惑の泣き黒子。
太腿を隠すくらいの丈が長い柔らかな黒シャツは
胸の部分がこれでもかというくらい前に飛び出ている。
下はスマートなGパン。
だが、お尻の部分だけが破裂しそうなほどパンパンに張っていた。
大人の魅力満載の女性だ。
「えらい別嬪さんが出て来たなぁ~。
ま、うちには劣るけど」
「ありがと。美容の参考までにその仮面取って貰ってもいいかしら?」
「ごめんなぁ~。この仮面付けたら二度と取れんねん。悪魔の契約、ちゅ~やつやなぁ~」
「あら、残念。死ぬ前にその美貌を拝みたかったのに」
女性の手流れ出た褐色の液体から、質素ながらも鋭い剣が形成される。
「それは自分が死ぬ前にって話ぃ?」
「さあ、どうかしら?」
駆け出した二人の刃が激しくぶつかり合う。
早々に打ち勝ったのは、咲の黒刀。
褐色の剣は、ぐにゃりと押し潰されるが、女性の方に焦りはない。
ただ、その様子を慎重に見守っているかのようだ。
何か嫌な違和感を感じた咲は、刀を引き抜こうとするが、ぴくりとも動かない。
どんどん剣へと呑み込まれてゆく。
たまらず咲は刀から手を放して距離を取ると
咲の黒刀は打ち負けた褐色の剣に完全に呑み込まれてしまった。
「なんなんそれ! うちの刀返して~!」
ぎゃーぎゃーと騒ぐ咲に対して女性は冷静そのもの。
咲のあまりの必死さにクスクスと笑いを溢す。
「少し気づくのが遅かったわね」
「それあんたの能力?」
「ええ、私はメイプル。能力は見ての通り」
「うちは咲言います~。ご丁寧に能力の説明はしてくれへんのやね」
「女は秘密がある方が魅力的でしょ?」
「それには同意やね!」
咲は不意を衝き、気術でメイプルの右脇腹を抉り、剣から引き離す。
「貴女、気術を使えるのね……」
メイプルは抉れた部位を押さえつつも、咲の気術の威力に驚きを隠せない。
気術の強さは七ヵ国の精鋭を遥かに凌駕していた。
咲は褐色の剣に呑まれた自分の刀を不用心にも素手で拾い上げる。
「なんや、このドロドロベトベトの液体?」
匂いを嗅いでみると僅かに甘い香りが漂う。
「それ私の体液」
「はぁ!? なんてもん触らすんっ!? 匂ってもうたやん!」
「失礼ね、日頃からちゃんと清潔にしてます!」
「そーゆー問題ちゃうねん」
気術でメイプルの体液を吹き飛ばし、刀を数回振り回す。
「これで綺麗、綺麗や。
そんで、その身体でどう戦うん?」
「そうね。そろそろ本気でやりましょうか」
メイプルはおもむろに服を脱ぎ始める。
「ほえっ!? こないな所でストリップショー始めんでぇ!? 放送出来へんわ!」
メイプルはお構いなしに黒いシャツを服を脱ぎ
下に着ていたGパンのボタンを外すと指を入れ下に滑らすように脱いでいく。
そして、彼女は際どい黒のマイクロビキニ姿へと変身した。
「これが私の戦闘服」
恥ずかし気もなく堂々と身体を晒して誇るメイプル。
咲が注視したのは、大事な部分が見えてしまいそうな乳房と股間の布と肌の隙間。
そして、抉り飛ばしたはずの脇腹。
「なるほどなぁ~。そーゆー能力なんやね」
メイプルの身体には気術で受けたはずの損傷は無く、玉のような美肌が輝いていた。
セーラー服の女子高生はメイプルの能力におおよその見当が付くと抜刀の構えで
真剣にマイクロビキニのお姉さんと対峙するのであった。




