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W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~  作者: 白鷺
六章 心呑まれし堕黒の姫
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四十三話 裏切り者の末路

朔桜とノアが降りるより前にウォーゾーンが船中心部に空けた大穴から

F1に落ちていたリョクエンとドクレス。

二人は朔桜とノアを避けるように船尾の方へ周り、再び飛行甲板へと戻ってきていた。


「ずっと奴らから離れる機会を(うかが)ってるなんて悪い爺さんだぜ」


「何を言う。お前も最初からそうじゃろ、リョクエン」


リョクエンは笑い声で肯定の返事をする。

二人は最初から朔桜たちに協力するつもりなど最初から持ち合わせていなかった。

そもそも“九邪”に敵対するなどあり得ない話。

叛逆の行いは死と同義だと二人は理解している。


「さ、ドクレスの爺さん。俺らの選択は三つだ。

一つ。ここからトンズラして人間界で好き勝手に暮らす。

二つ。“顔の無い集団(ノーフェイス)”を見つけて、九邪の配下に戻る便宜を図る。

三つ。やっぱりあいつらに付いて行くだ」


リョクエンの三択をドクレスは鼻で笑う。


「決まっておろう。人間界で好き勝手に暮らす一択じゃ。

ここは精霊界なんぞよりも遥かに文明が進んでおる。

それに儂を超えるエナジードを持つ者など数えるほどしかおらんじゃろう。

“九邪”が四世界を手中に収めるまでの僅かな余生はここで過ごす事に決めた」


「だったら、九邪に従った方が都合がいいんじゃねぇのか?」


「奴らはダメじゃ。儂らを使い捨ての駒としか考えておらん。

何個命があっても足りん」


「なら、あの甘ちゃんたちは?」


「同じじゃ。儂らを戦力としか考えておらんよ。

それに我々のような危険分子を人間界で野放しにするとは思えん。

最悪、戦死。よくて魔界送りというところじゃろう」


「ま、違いねぇな。俺はどの世界でもいいから好き勝手に暮らせればいいや」


二人の意見は固まった。

互いに朔桜たちと“九邪”を裏切り、この場から逃げる事を選んだのだ。

ドクレスが水の精霊術で海水を竜巻のように巻き上げ

甲板で燃え広がっていた炎を消火してゆく。


「リョクエン、まず二人が安定して乗れそうなモノをここから落とすぞ。

それをお前の仮面能力《指定方向(ディズイグネイション)》で等速で動かし

乗り物として陸地を目指すんじゃ」


「なるほど、考えたねぇ。了解さん、と」


二人が焼けた戦闘機の残骸を漁っていると

船尾の階段から一人の少女が登って来た。

小顔に似合うショートの金髪。

前髪は綺麗に揃っており、頭頂部から伸びる一本の長い髪が土星の輪のように頭を囲う。

鮮やかな蒼眼(そうがん)に白い瞳孔。

上下一帯になったボディーラインが強調される密着した薄花(うすはな)色の服に

セーラー服のような襟があり、肩から「本日の主役」と書いてある斜め掛けの(たすき)を掛けている不思議な少女だ。


「あなたたち、所属は?」


少女は表情を変えず、鉢合わせた二人に淡白な質問をする。


「俺らは……清掃員だ。今は炎の消火活動をしていたところだ」


「……そ」


リョクエンが咄嗟にそれらしい嘘を言うと

少女は興味なさそうに二人の間を通り、管制塔へ向かう。

少女が背を向けた事に目を光らせ、互いに目で合図をすると

四適者(リゾーマタ)”であるドクレスが水、炎、風の攻撃を少女の背に向かって放つ。 

攻撃の気配を察した少女は、一瞬でジェットのように加速。

地面を飛ぶように垂直移動を始め、ドクレスの攻撃を機敏にかわす。

だが、リョクエンがドクレスの攻撃を視認し、指で少女の軌道をなぞる。


「追尾……」


後から追ってくる攻撃を見て、本体を叩く方が早いと悟った少女はリョクエンに狙いを定めた。

空中とまるで泳いでいるかのように自由自在に動き回り

あっという間に距離を詰める。


「こいつ速っ――――」


そして、掌を静かにリョクエンに向けた。


「気攻―天承(てんしょう)!」


リョクエンは遠距離攻撃だと察し、術を見逃さぬように事前に上空に飛ばしておいた眼球を凝らす。

だが、次の瞬間、リョクエンの腹部に強烈な衝撃が走る。


「――――っ!」


リョクエンは声も出ず、船首の方まで易々と吹き飛ばされた。


「衝撃波か!」


ドクレスが攻撃の方法を見破るが

少女は既にドクレスの目の前に迫っていた。


「気攻―天承!」


加速したまま、(てのひら)をドクレスの腹部に(かざ)して気術を使う。

爆発的な加速が加わり、衝撃はドクレスの身体を打つ。


「かっ――――」


ドクレスもまた船首の方まで吹き飛ばされる。

二人は少女の掌底に成す術無く倒れるのだった。

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