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W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~  作者: 白鷺
六章 心呑まれし堕黒の姫
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四十一話 CN.スノーマン CN.アート

格納庫にて、突如、ノアが消えた。

残された朔桜は、たった一人で二人の男女と対峙する事に。

情け容赦なく放たれた氷の塊は、朔桜の命を狙う。

死を感じた朔桜は人差し指を伸ばし、親指を立て銃のように構え

精霊魔術を唱える。


「破壊力が凄い一点集中のエレ!」


言葉により効果を明確にして付加を付けたエレは朔桜の指を離れ

朔桜のイメージ通りの破壊力で氷の塊を粉々に粉砕した。


「うそ……」


少女は自身の攻撃が小さな電撃に正面から打ち負けた事に落胆する。


「スノーマンの攻撃を真っ向から打ち砕くなんて……。

それに気の量も凄まじい……」


青年の方も朔桜の途方もない無尽蔵のエナに驚きを隠せない。

それもそのはず、朔桜のエナ値はそこらのエナ持ちとは一線を画す。

雷国(エベレリオン)の“十二貴族(じゅうにきぞく)”レグルス・フォン・ディオスと

“並木”の一族、並木 桜花の娘なのだから。超超一級家系にもほどがある。

それに加え、胸元にはエナの貯蔵庫宝具【(エレクトロ)電池(チャージャー)】も所持しているとなれば

格下との真正面からの攻撃の打ち合いで朔桜が負ける事など、ほぼ無いに等しい。


「次から次へとヤバい敵ばっかり来る」


「それでも、もう誰も殺させない」


二人は朔桜に敵意を剥き出しにする。


「待ってくださいっ! 誤解ですっ! 私たちはこの船を助けに来たんですっ!」


「助けに、だと? あんだけ僕らの船員(かぞく)を殺しておいてよく言える!」


茶色の瞳で朔桜を睨み、激昂(げきこう)する眼鏡の青年。

くすんだ黄緑色の髪。

角ばった黒縁眼鏡の下には薄っすらと雀斑が浮かぶ。

白、灰、千歳茶(せんざいちゃ)色の縦縞のデザインシャツ。

緑黄色(りょくおうしょく)のシンプルなズボンに茶色の革靴を履いている。


「あなたたち、何が目的で船員たちを殺した?」


朔桜に問いかけてきたのは

身長百三十センチあるかないかくらいの小柄な身体の少女。

白いふわふわの帽子には青いリボンが二つ。

眉毛は無い故に長い睫毛(まつげ)が良く目立つ。

真円の二つの青い瞳は些かくすんでいる。

繊維のような淡い金髪の髪が首に巻いたリボン状の巨大なマフラーで盛り上がっている。

身の丈に合っていない袖が朱色の長い白衣は半分以上地面についているが

汚れなどは見当たらず純白のままだ。


「なんでも何も、ここの船員さんは誰一人として傷付けていないです!」


朔桜は自身の潔白を精一杯説明する。

ここの二人と争うのは朔桜の本位ではない。


「嘘、あの仮面の奴の仲間でしょ」


朔桜の足元から氷の槍を突き出す。

いち早く攻撃に気づいた朔桜は自慢の身体能力で

身体を捻り氷の槍を身軽にかわす。

次に少女は朔桜の周囲に小さな氷の粒を展開。

それは次第に大きくなり、鋭利に変化してゆく。


「絶対に許さない」


怒りを露わにする少女。

埒が明かないと判断した朔桜は、強硬手段に出る。

指を構え二人の間に素早い電撃を放ったのだ。

二者間を通り抜けた電撃は後方の戦闘機を大破させた。

生身の人間が受けていたら即感電死していたであろう威力。

二人は電撃を視認する事すら出来なかった。


「貴女の氷が成るよりも、私の電撃があなたたちを穿つ方が速いです。

これ以上の攻撃はやめて私の話を聞いてください」


朔桜が冷静に少女に手を構える。


「なら、やってみて」


少女は朔桜の言葉に触発され、氷の弾丸を放とうとする。

朔桜も意を決し指先にエナを集中させた時だった。


「待て、スノーマン」


眼鏡の青年が前に出て手で攻撃を止めろと制す。


「止めないで、アート」


「無理だ。電撃と氷撃じゃ速度が違いすぎる。

それに見ただろさっきの攻撃。

あれを食らえば、僕か君のどちらかは一撃で殺られる」


「でも…………」


二人の間で意見の対立が生まれた。

その隙を衝いて朔桜が対話を試みる。


「一撃で殺らないので安心してください!

私たちは船の要請でオスプレイから助けに来たんですよ!」


「オスプレイ? もしかして、君ら“門を無断で開けた容疑者”の方かい?」


「な、な、な、な、な、何の事でしょう??????」


朔桜は確信的な言葉に明かな動揺を示す。

逆にその行動が青年の信用を買った。


「なるほど。本当に奴らとは違うみたいだね」


「アート、信じるの?」


「まあ、六割信じる。この子は(てぃな)側の子だろう」


知っている名前に朔桜がすぐに反応した。


「明を知っているんですか?」


「ああ、よく知っているよ。このところ、門の件でモメにモメてるからね」


「もしかしてあなたたちが“人魔調査団”?」


「そう。僕はアート。そして彼女がスノーマン」


「アートとスノーマン?」


名前に違和感を感じ朔桜は首を傾げる。


「ああ、僕たちは“人魔調査団”七ヵ国の代表だから情報が漏れないよう

CN.(コードネーム)で呼び合っているんだ。

本当の名前はお互いに知らないよ」


「なるほど~」


朔桜はその意味に深く納得した風を装い何度か頷いた。


「突然仕掛けて悪かったよ。ごめん。

ほら、スノーマンも謝って」


「突然仕掛けてきたのは、あのチビの方。私悪くない」


スノーマンは頬を膨らませそっぽを向く。


「あ、そうだ! ノアちゃんは何処ですか! うちの子に何をしたんですか!」


朔桜は敵対を解除され、口調を変えて強気に出る。

仲間を害されては朔桜も黙っちゃいない。

実際に戦いたくはないが、徹底抗戦だ。

すると実にあっけない言葉がアートから返ってきた。


「安心して、彼女は無事だよ。

今出してあげる。だけど、くれぐれも強襲はしないでくれよ」


アートが指を鳴らすとノアが目の前に出現する。


「あれ? ノア戻って来れた?」


「どうだったかな、僕の美術館は?」


「ノアちゃんストーーーップ!!」


猛獣のようにノアが飛び出す予感を察知して先に朔桜が待ったをかけた。

その判断は正しかった。

ノアは既にアートの喉元まで鋭利な衣を伸ばしている。


「なぁに! 朔ちゃん!」


「あの人たち敵じゃないって!」


「でも最初に仕掛けてきたじゃん!」


「最初に仕掛けてきたのはそっち」


スノーマンはノアに睨みを利かす。


「何を~」


「ん~~」


小さな二人は言い争いを始めてしまった。


「まあ、とにかく当面協力って事でいいのかな……?」


「あ、はい。お願いします……」


こうして朔桜とノアは“人魔調査団”のアートとスノーマンと協力関係となった。

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