三十九話 散り散り
ノアと咲の二人は互いに距離を取り
一同とウォーゾーンの戦闘を成り行きを見ていた。
「あは~向こうさんも決着付かんかったなぁ~」
「そうだね~」
「これ以上あんたらと戦こうてても、全然埒明かんそうやし。
そろそろ宝探しに戻るわぁ~。向こうさんに負けるのは癪やしなぁ」
咲はウォーゾーンの肩へ飛び乗ると
何かを警戒した一同は臨戦態勢を取る。
「はい、どうぞ。って逃がすとでも?」
ティナが殺意全開で『八つ脚の捕食者』を構える。
「思わへんよ。だから強引にお別れしよか~」
咲がウォーゾーンの首を軽く叩く。その瞬間。
地面に突き刺さっていたウォーゾーンの根のような白い爪が地面を大破させた。
「ほな、さいなら」
深々と空いた母船の暗がりに一同は落ちてゆく。
ティナは手に握った装備を使おうとするが
目敏い咲はそれを許さない。
「おいたしたらあかんで?」
目には見えない気術の攻撃でティナの不意を衝き
深い船の最下層へと叩き落す。
「ぐっ!」
「うちのためにたくさん時間稼いでな~~」
咲はティナに向かって楽しそうに手を振る。
「明ーーー!」
朔桜は手を伸ばすも、その手は届くはずもなく
ティナは船の暗闇へと消えて行った。
落胆する朔桜をノアが衣で包み込む。
「取り敢えず、朔ちゃんゲット!」
ノアが朔桜の安全を最優先で確保する。
その様子を見たレオとカシャは一安心して拳を強く握る。
「この野郎!」
「やってくれる!」
レオとカシャが瓦礫を足場に咲へと向かってゆく。
「ウォーゾーンやっちゃって~」
咲の号令で七方向から爪が飛び出す。
「その技はもう見切った!」
「その技はもう見切ったゾ!」
二人は同じ台詞を合わせ、二人は強固な爪を拳で殴り砕く。
「甘いなぁ。ウォーゾーンの武器は爪だけちゃうよ」
太く長い歪な尾が二人を打ち付けた。
普通の生物なら全身の骨が大破して
自立出来ない肉と皮の塊と化しているだろう。
だが、レオは拳で受けて能力《反拳》で衝撃を吸収。
カシャは筋肉の鎧で素で耐えた。
「反 拳!!」
レオは拳を突きたて、衝撃を倍にして返す。
尾は中部付近で倍に増幅し、一点に集中された衝撃を受け、激しく引き千切れ
ウォーゾーン痛みのあまり暴れだす。
「ちょっ! 落ち着きぃや!」
咲はウォーゾーンを宥めようとするがその声は届かず
激しい激しい動きにより咲はウォーゾーンの肩から振り落とされる。
すぐに体勢を立て直そうとするも巨大な瓦礫が咲の頭を直撃。
「ぐえーーあっかーーん!」
咲は情けない声を上げながら船の暗闇に呑まれていった。
暴れ狂いその巨体の周囲をやたらめったら破壊してゆくウォーゾーンは
痛みを与えた元凶に狙いを定める。
両腕を前に伸ばし蛇のように身体をくねらせてレオへ猛突進。
「ぐっ!!」
その巨体から繰り出される威力は計り知れない。
「茶髪!!」
カシャはその凄まじい突進を目の当たりにしてレオの身を案じた。
「問題ないです!!」
レオは大声で自身の無事を知らせる。
再び拳を突き立て突進の衝撃を吸収していたのだ。
「返すぜ。この衝撃!!」
《反拳》で衝撃を反射しようとすると
腹部の一段と素早い爪がレオを引き裂いた。
「がぁ!」
レオは痛々しい声を漏らし、ウォーゾーンと共に暗闇へと落ちてゆく。
「レオ君っ!! カシャさん!! レオ君をお願いっ!!」
「承ったゾ!」
朔桜の命令を受け、カシャは瓦礫を強く蹴り
レオとウォーゾーンの後を追う。
ノアは朔桜を抱えたまま衣を器用に使い、甲板へと戻ってきた。
だが、そこには誰も居ない。
「あ~あ。ま~たみんなバラバラになっちゃったね~」
甲板に残ったのは朔桜とノアだけ。
今の交戦でリョクエンとドクレスの姿も消えていた。
「みんな……」
「大丈夫! みんな簡単に死ぬようなタマじゃないし」
「ノアちゃん……」
「とにかく片っ端から敵倒してみんなを拾いに行こ!」
「うん……! そうだねっ!!」
こうして朔桜とノアは二人で船内へ突入するのだった。




