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W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~  作者: 白鷺
六章 心呑まれし堕黒の姫
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三十四話 ヒュージア・ブロード

オスプレイに乗って約一時間。

一同は大西洋の上を飛行していた。

到着予定時間はあと三十分くらいだ。

そんな時、突如として無線が入る。


「こちら“人魔調査団”!! “人魔調査団”!!

大西洋をステルス迷彩で飛行中のオスプレイに次ぐ!!

至急、後方の七ヵ国航空母艦“ヒュージア・ブロード”に着陸せよ!!

繰り返す。至急、“ヒュージア・ブロード”に着陸せよ、現在――――」


ブツりと通信が切れる。

目的地のカムイエクウチカウシ山寸前で

“人魔調査団”がついにアプローチをかけてきたのだ。


「よし、沈めましょう」


ティナは既に戦闘態勢に入っている。


「判断早すぎない!?」


朔桜はティナの躊躇の無い判断に驚く。


「従っても背いても面倒臭い事になるのは変わらないわ。

どちらか選ぶのなら、スッキリする方を選びましょう」


「どうにか逃げきれないの?」


「無理。あの船には戦闘機が何十機と積んであるし

そもそも海を進んでくる母艦が空を飛んでるオスプレイに追いついて来ているのよ?

いくら何でも速すぎる。普通じゃないわ。

そこから戦闘機でも出されたらあっという間に撃墜される」


ティナの中ではその速度の理由には予測が付いていた。

だが、核心がない以上それを言葉にはしない。


「作戦はまず、従ったフリして降下。

どうにかこうにかして船底に穴開けて沈没させる。以上」


「ざっくりしすぎではっ!?」


ティナのあまりに雑な作戦に

朔桜が大袈裟に反応する。


「あの規模だと敵の数は約五千弱くらいだから」


「五千っ!?」


「数は大した問題じゃないわ。

問題なのは、七ヵ国が差し向けたクソ共が居る事よ」


ティナの棘のある言葉には私念が込められている。


「じゃあ、強いのは七人って事?」


「強いと言っても集団として対峙した場合ね。

個々で戦うのならばそんなに脅威ではないわ」


「おいおい、個々って事は俺やドクレスの爺さんも戦力として数えてんのかよ」


当然の戦力として数えられていたリョクエンが異を唱える。


「当たり前でしょ。そのために連れて来たんだから。

オスプレイは着陸させない。速度と高度を落として、私たちだけ飛び降りる。

適度な距離を維持したまま追走して来て」


ティナの指示通り操縦者は速度と高度を落とす。

すると母艦の甲板を見た視力の良いノアが第一に顔色を変える。


「ありゃりゃ~もう終わってるね、あれ」


「終わってる? 何が??」


ノアの言葉の意味が分からず、朔桜が問う。

オスプレイが船に近づくにつれ、次第に一人一人と皆の表情が強張っていく。

だが、朔桜だけがいまだに理解出来ていない。


「船の上見てみ」


言われた通り朔桜が船の上を見る。

だが、特別変わったモノは見えない。

綺麗に整列した戦闘機の数々。

そして、一面の赤い地面。


「朔ちゃん、あの赤いの全部血だよ」


「え」


朔桜が状況を理解した瞬間、船上で大爆発が起きた。

戦闘機が次々と連鎖的に爆発していく。

既に甲板は火炎の地獄だ。

赤、青、黄、緑と色とりどりの続服(つなぎふく)を着た人々が

散り散りに飛び出してオスプレイに向かって助けを求めていた。


「大変! 助けなきゃ!」


「助けるぅ!? なぁに言ってるの朔桜!?

殺す手間が省けてむしろ良かったわ。

予定変更。このまま目的地まで向かいましょう」


「でも、まだ生きている人が沢山いるんだよ!」


「んな事私たちに関係ないはずよ。

あなたたちは仲間を取り返しに人間界に来たんでしょ!」


「そうだよ! 絶対にキリエちゃんを助ける!

でも、その前にあの人たちも助ける!」


「この善意の化け物!!」


「なんとでも呼んでいいから!」


「再度予定変更!

先端は火の回りが遅い。船上五メートルくらいまで降下!

私たち降下後は距離を保ったまま左後方で追従して来て」


パイロットは動揺しつつも、ティナの指示に従う。


「てめぇら正気かよ!? 下は火の海だぞっ!?」


リョクエンが冗談だろとティナの顔を見る。

だが、残念。本気だ。


「朔桜が行くと言ったら行くのよ!」


「お前ら……流石にイカれてるぜ……」


「ごちゃごちゃ言わず早く行け、白髪」


ティナがリョクエンを蹴り落とした。


「おいっ! てめぇーーーーーー!」


「降下! 降下!」


カシャ、レオ、ドクレスが続き

ノアの衣に抱えられた朔桜と最後にティナが

死の七ヵ国航空母艦“ヒュージア・ブロード”へと降り立ったのだった。

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