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W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~  作者: 白鷺
六章 心呑まれし堕黒の姫
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三十三話 甘い思想

一同が乗る小型のオスプレイをDr.、ハーフ、バグラエガ、ペテペッツが見送る。

中から元気良く手を振る朔桜。

鉄納戸(てつなんど)色のボディースーツに同色の胸当てとズボンを着用し

身体の節々には、衝撃吸収保護プロテクターが常設されている。

朔桜の服には桜色のライン。

ティナの服には金色のライン。

ノアの服には蒼白色のライン。

皆の髪色に合わせてある三人娘お揃いの専用装備。

上級魔術一撃くらいなら命を取り留める事ができる防護性能だ。

レオ、カシャ、リョクエン、ドクレスの四人は機動力に支障が出る重装は装備せず

今までの服の下にDr.考案のエナジード耐術インナーを着込んでいる。

オスプレイに乗って早々、ティナの無線にDr.から通信が入った。

ティナは皆に聞こえるようヘッドホンへの通信を全体に共有する。


「聞こえているかいティナちゃん?」


「ええ。感度良好よ」


「早速だけど、悪い知らせだ。

沖に滞在中の“人魔調査団”が君たちが乗るオスプレイを追跡し始めた」


その情報を聞いて一同に緊張が走る。


「何よ今更! 門を開けたのがバレたって事?」


「いや、流石に向こうもそこまでは掴めていないだろう。

だが、疑っているのかもしれない。なにせ、そのヘリには

エナジード持ちが大勢乗っているからね。

接触してくる可能性も大いにある。警戒を怠らないでくれ」


「その言葉、誰に言ってるの?」


「余計な一言だったね。

接敵した場合の対処は君の判断に任せる。

事後処理は僕がするから君が思う最良の判断で行動してくれ」


「了解」


通信が切れるとティナは皆を見渡す。


「聞いての通りよ。このオスプレイもステルス迷彩を搭載しているけど

奴らはエナ持ち。私たちのエナジードで位置はバレているわ。

攻撃された場合、即座に殲滅する。

おチビちゃんは朔桜の護衛。その他は敵を一掃しなさい」


「なるべく穏便にね」


朔桜の一言にティナは睨みを利かす。


「朔桜、貴女いまだにそんな甘い思想を他人に押し付けているの?」


「甘い思想って……」


「っはぁ~呆れた。この世界は生きるか死ぬか。喰うか喰われるか。

それ以外に生きる術はないでしょ」


「そんなの――――」


「間違っていると思う? なら、貴女が戦いなさい。

貴女が言っている事は、本気で殺しに来る敵を相手に

あなたたちは手を抜いて戦ってくださいって意味と同義よ」


「っ……!」


朔桜はその言葉を聞いて自分が今まで

どんなに勝手な事を言っていたのかに気が付く。

朔桜自身も何度か戦いを乗り越えて来たが

敵対する相手に手加減をする余裕など一切無かった事を思い出す。


「私自身、朔桜の温情でロード・フォン・ディオスに殺されず

ここに存在しているけど、これから先はそんな温い戦い方では朔桜を守れない。守れる自信がない。

そんな舐めた戦い方が出来るのは、()()()()()だけなのよ。

故に、私は敵を殺す。あなたの命、私の命、その他の命を守るために敵は殺して殺して殺し尽くす」


「明……」


「そこの金髪の言う通りだ。

今の我々にはロードやエルフのような圧倒的な力はない。

抑止は出来ても、寝首を掻かれては本末転倒だゾ。

戦場では、その救った命が仇になる事だってあるのだ」


「俺もまだ敵に手加減している余裕はないです……」


「ノアは強いからなるべく殺さないように出来るよ! 強いから」


「朔桜が戦う相手は生かすなり好きにすればいいわ。

でも、この先その考えを他人に押し付けるのはやめて」


価値観の違い。

朔桜の親友であるティナだからこそ

それを真っ向から否定し意見する事が出来た。


「わかった……。

みんな今まで勝手な事言ってきて本当にごめんなさい……」


朔桜は深々と頭を下げる。

そして、機内は暫くの間、空気の重いお通夜状態になったのだった。

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