三十一話 Dr.の見立て
一旦落ち着いたところでDr.が今回の一番メインの話を切り出す。
「それで、僕に何を聞きに来たんだっけ?」
Dr.の問いに合わせ、一人の少年が前に出る。
「“九邪候補”に与えられる試練ってのについて詳しく聞きたいんです」
「君は?」
「俺はレオって言います。
“九邪候補”のカテスから仲間のキリエを取り返す手がかりが欲しくて精霊界から来ました。
Dr.さん、“九邪”の奴らについて覚えてる事や、何か奴らに繋がる手がかりはありませんか!?」
レオは藁にも縋る思いでDr.を見つめる。
「なるほど。思い出せる限りで話す事しかできないけど
試練というのは、あの影が気に入る結果が出せるかどうかって事だね」
「気に入る結果?」
「僕の場合は、与えられる位は【探求】で影から指示されたのは
・人工宝具を作ること。
・無尽蔵の力を持つ機械兵器を作ることだ。
まあ、人工宝具の作製とエナを持たない無限の戦力って事だね」
「あれ? でもDr.は両方クリアしてたよね」
「ああ、そうだね。
でも、ノアには言っていなかったが、条件はもう一つあったんだ」
「もう一つ?」
「それは、人間界の破壊だ」
その言葉を聞いて朔桜は表情を変える。
「もちろん、僕はそれだけは断った。
僕の研究は子供たちを救う事だ。世界を壊しては本末転倒だからね。
その話は一度その場で流れたけど、無理やり渡されたのが、あの“忌竜”を封じた玉手箱さ。
そして、君たちが“竜宮城”に来て条件が変わった。
ロード・フォン・ディオスさえ殺せば、世界は壊さなくてもいいと言われ、君らと対峙したんだ。
まあ、結果的に主が止めてくれなければ、世界はもちろん大切なモノも全てこの手で壊していただろうね……」
Dr.その時の事を思い出し、再び心からロードに感謝した。
「恐らく、“九邪”へ加入する条件は大きく三つあると、僕は思う。
そして、その条件はフォン・ディオス一族への復讐心と人間界への憎悪はかなり根深いものがあると感じた」
「じゃあ、奴らの狙いはフォン・ディオス家の人たちと人間界って事ですか?」
「僕の想像では、だけどね」
「だったらなんで、影は私とロードたちを精霊界に呼んだんでしょう?」
「流石に今ある情報だけではそこまでは分からないね。
でもそこに“九邪”と“九邪候補”が居たのなら、彼らの力を試す一つの試練だったのかもしれないね」
「精霊神を復活させて精霊界をぶっ壊すのが試練の一環? 奴らふざけやがって!」
有り余る怒りを拳に込め、強く握り締めるレオ。
「決めました。フォン・ディオス家を代表として私が、あの影や“九邪”と決着を付けます!
奴らの試練にこれ以上この世界も、誰も巻き込ませない」
「朔桜……私も力を貸すわ!」
「ノアも~!」
「俺もです!」
「私も最後まで付き合うゾ!」
「フォン・ディオス家が神の血族と聞いたら最後まで付いた方が得だよね」
「んじゃ、俺も乗るわ」
「あたいもお供致しますにゃ」
「儂も気が変わった。これは精霊界でくすぶっているよりも遥かに刺激的じゃ!」
「皆意見が一致したみたいだね。勿論、僕も今後ともバックアップを続けるよ」
「皆さん、よろしくお願いします!」
朔桜は意志の籠った強い瞳で全員を一人ずつ見る。
いつもみたいに頭は下げない。
それが、雷国 の王にして黒極の地を統治する十二貴族
フォン・ディオス家を代表とする者の立ち振る舞いだった。




