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W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~  作者: 白鷺
六章 心呑まれし堕黒の姫
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三十話 地下施設の主

藤沢町の山中。

森は大きく切り開かれ、その中に一際目立つ人工物があった。

それは平らに均された広大なヘリポート。

パイロットの手腕でオスプレイを無事着地させると

ヘリポートが沈み、地下へと降下してゆく。


「ハイテクだ~!」


山奥の化学技術に朔桜はテンション高く驚く。

地面と同化したシャッターが閉ると森の中から木に扮した機械からホログラムが映しだされ

森との境界が完全に分からなくなった。

人魔門の除石作業は既に終了しており、丁寧に舗装までされており

物々しいオートタレットまで配備されている。


「この地下施設は魔界の門にも続いていて全部で二十の出入口があるわ。

迷ったら面倒だからはぐれないように」


ティナが一同に忠告すると同時に降下が完全に止まり、後方の出入口が開いた。


「さあ、Dr.のところに行きましょう。

でもその犬は留守番よ。物理的に通路通れないから」


「ぶ~」


ノアは宝具【満腹(フルストマッチ)】で大量の食糧を出すと

バグラエガを鎮座させた。


「大人しくしててね」


「アギャ」


ティナを先導にいくつもの顔認証の扉を通ってゆく。

厳重なセキュリティーだ。

そして、ついに“九邪候補”と再会する。


「いひひ、お帰りノア。そして、朔桜ちゃん」


優しい声で二人を迎える。

綺麗な眼鏡に澄んだ目。

髪は整いで目にクマもない。

相変わらずの白い肌、三十代半ばの細身の身体。

真っ白な白衣が似合うここ地下研究所の主。

ノアを作り出した天才、Dr.Jの姿がそこにはあった。


「どなた!?」


「誰!?」


朔桜とノアは見た目の違いに驚愕する。


「酷いな。僕を忘れるなんて」


「いや、見た目変わり過ぎじゃないです!?」


「いやはや、困ったね。恋は人を変えるのだよ」


「え、何言ってるのこの人」


朔桜は素で困惑している。

頭を抱えたティナが溜息を吐く。


「そのままの意味よ。

そんなクソどうでもいい事は置いておいて早々に説明して。

何故、朔桜にエナがあるのか。

何故、帰って来たのか。

何故、あのクソ鴉がいないのかを」


ティナに聞かれた内容を朔桜の口から全て説明する。

そして、この場に居る一同に全ての情報が共有された。


「――――って訳なんだ」


「うんうん、よくわかった。じゃあ、今の話をまとめるわね」


ティナは人差し指をくるくると回しながら、話をまとめ始めた。


「朔桜とクソ鴉……ごほん、ロード・フォン・ディオスは同じ親から産まれた人魔にして血の繋がった兄妹。

創世神の血を引く存在でもあり、ロード・フォン・ディオスは戦いの最中、敵の策略にハマり

エナを膨大に吸収したせいで、神域へと昇華され別れる事となり

同行していた仲間が“九邪候補”カテスに(さら)われ

その目的が人間界で何かを起こすに違いないと思い

敵の思惑を阻止しつつ、仲間を取り返すために人間界に戻って来たと……」


「うん! そう! さすが(てぃな)!」


朔桜の言った事を完璧に纏める。

だが、ティナは呆れたような、心配しているような深妙な声でこう言った。


「朔桜……。少し休んだほうがいいよ」


「デジャブだなこれ!?」


朔桜は以前にもこんな会話をした覚えがある。


「全部事実だけどね~」


ノアが言葉を付け足すと信憑性が増しティナは深々と溜息を吐いた。


「……つっこみたいところは色々あるけど

急いている奴もいるみたいだし、今重要な事から話すわね」


横目で余裕が無さそうなレオの顔を窺いティナは話を進める。


「まず、私たちとの明確な認識の違いがあるわね」


「明確な認識の違い?」


「朔桜たちは四十日近く精霊界に居たみたいだけど

私たちの認識だと朔桜たちが精霊界に行ってまだ五日程度しか経っていないわ」


「五日っ!?」


「いひひ、恐らくだけど、人間界と精霊界の時間の流れは同じじゃない。

単純計算で八倍くらい時の流れに差があるみたいだね」


「じゃあ、たった五日でこの施設を作ったって事!?」


「いひひひひ、違うよ。

夏の辺りからある程度既に作っていたのさ。

君たちには内緒でね」


「ムカつくわよね。こいつも、クソ鴉も、このガキも」


「えっノアちゃんも知っていたのっ!?」


「うん、ていうか一緒に作ってたし。

機械兵の量産、基地の基盤の穴掘り、施設制作。

魔界への門前の除石もロードくんと一緒に作業してた」


「何で私たちに教えてくれなかったの!?」


「ロードくんが、朔ちゃんは口うるさいから黙っとけって。

ティナちゃんに関しては話す義理も価値もない。論外だって」


「あのクソ鴉、帰って来たら殺すわ」


「除け者にして悪かったよ。

今では凄くティナちゃんに感謝している」


「ふん、別に。私は大した事してないわ」


「明は何をしてたの?」


「“人魔調査団”と色々とね」


「色々って?」


「殺し合……小競り合いよ」


Dr.の顔色を窺い色々と心中お察しした朔桜は

それ以上この話題に追及する事はなかった。

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