二十四話 精人門
緑月が夜闇を照らす時刻。
敵一同の処遇は、一同との同行で決まった。
朔桜がフォン・ディオス家である事は最後まで信じる事はなかったが
拒否権の無いリョクエンとペテペッツは素直に従う他ない。
ドクレスはいまだ気を失っている状態だ。
三体のグリフォンに
朔桜、シンシア。
レオ、リョクエン。
カシャ、ドクレスで別れ
地を駆けるバグラエガにノア、ハーフ、ペテペッツが乗る。
当初の到着の時刻よりも、二時間ばかり遅れて
一行は、目的地である人間界と精霊界を繋ぐ門“精人門”に到着した。
門の周囲には、苔の生えた数十枚の板状の大岩が歪に重なり、封印されているかの如く地面に突き刺さっている。
「とりあえず、誰もいないわね」
精霊界に来た時にロードが破壊した大穴が空いているくらいで
他者に荒らされた形跡などは一切なく、敵が潜んでいる様子もない。
しかし、カテスの事もあり、警戒するに越したことはない。
シンシアが安全を確認したが、万が一のために警戒を怠らず
弓矢を構えつつ、周囲を再び警戒し続けている。
「それで? この門に来て何をしようって言うんだい?」
ハーフが朔桜に疑問を投げかけた。
「えっと、結構大所帯にはなっちゃったけど
この門を通ってみんなで人間界に行きたいと思いますっ!」
朔桜の発言で一同は騒めく。
「ん~? ロードくんと朔ちゃんは神の血筋だし
生物認定されていないノアは門の結界を通れるかもだけど
他のみんなは通れないんじゃない?」
ノアは指を頬に当て、可愛らしく首を傾げる。
「多分、大丈夫! 私が一時的にこの門の結界を解くから!」
そう言った朔桜は静かに門へと歩みを進める。
「(イザナミさん……)」
心の中で内に眠るイザナミに呼びかける。
「(はいはいはい。イザナミさんですよ~~!)」
「(えっと……大丈夫……ですよね?)」
「(結界の事? うん。以前の朔桜なら怪しかったけど、今の朔桜なら問題と思うよ)」
「(今の、って?)」
「(バグラエガの時、乖離した記憶が繋がったでしょ?
認識の一体化。曖昧だった自我の認識が確立されて
“四界の法”に神の血筋だと認定してもらったわけ)」
「(??????)」
「(簡単に言うと朔桜が成長したってこと!)」
「(お~~~~!!)」
よく分からず、歓声だけ上げておく朔桜。
「(取り敢えず、まずは門に触れてみて)」
「(はいっ!)」
常人では結界に阻まれ通る事すら許されない結界の中に
易々と入った朔桜はイザナミに言われた通りに古びた門の扉に触れる。
「(次に門から桜花のエナを感じてみて)」
「(エナを感じる?)」
「(桜花の事を思い出すって感じかな。声とか匂いとか雰囲気とか)」
「(お母さんの事……)」
朔桜は頭の中に桜花の姿を思い浮かべる。
四人の子を産んだとは思えないくらいの若く美しい容姿とハキハキとした明るい声。
自由奔放で子供のように無邪気ながらもずば抜けた戦闘センスを持ち
春の桜のような柔らかい香りに優しい包容力を兼ね備えた偉大な女性。
ロードと同じ黄金の瞳。
透き通るような白い肌。
紅赤のショートヘアで目に少しに掛かる程度に揃った前髪。
額部分の前髪は特徴的で桜の花びらのように見える。
耳より少し前のいわゆる触覚と呼ばれる部分が腰まで長く伸びていた。
首に輝いていたのは朔桜が今所有しているペンダント宝具【雷電池】。
そして、もう一つ。片時も肌身離さず持ってきた朱色の傘が印象的だった。
イザナミは朔桜の脳内を読み込み桜花の印象適合率を測る。
「(脳内は同調完璧ね。そのまま、手から桜花の痕跡、繋がりを読み取るの)」
「(痕跡……繋がり……)」
理屈では考えるに至らない行動を朔桜は感覚で行う。
すると、門と朔桜の手が接した部分が輝く出す。
「(神の血認証。“精人門”の封印結界の一時解除可能だよ)」
「(えっと、なんて言えばいいんですか?)」
「(なんでもいいよ。無言でも開くし)」
「(でも、せっかくだし!)」
門に触れた手に意識を集中させ、必死で考えた口上を唱える。
「かい・もん!」
それと同時に人間界と精霊界を繋ぐ門の封印結界は解かれ
重い扉が静かに世界への道を開いた。
「(かい・もん! ね。流石のセンスだよ、朔桜。
ちなみに桜花の口上は
世界の門よ、道を開け。
世界の門よ、道を閉ざせ。だったよ)」
「(そぉれ先に言ってもらっていいですかぁっー!?)」




