二十一話 戦果報告
皆の傷ついた身体と消費したエナを
朔桜の宝具【雷電池】で回復させ
皆は万全の状態に戻る。
「じゃあ、まずは情報を整理しましょう」
シンシアが率先して指揮を執る。
「私は撃墜された後、この二人と対峙して勝利、確保したわ。
その際、この若い男リョクエンと呼ばれていた方が
以前対峙した“金有場”メティニの能力を使っていたの」
「メティニの能力だと!?」
“金有場”の同僚でもあるカシャが驚く。
「何か心当たりがある?」
「いや、キジュ村でお前たちに負けた後、生き残った私とメティニは再び異空間に戻されたのだ。
その際、私はメサの能力を受けるため再び精霊界に移動したのだが、それ以来彼女の姿を見ていないのだ」
「じゃあ、そこで殺されて能力を奪われたって事?」
シンシアが推論を立てる。
「可能性は高い。私が此度対峙した“金有場”の師匠ラヴェインが能力を与えられたと言っていた。
それに実際、《軽重》という質力を操る能力にも目覚めていた。
私は彼に敗北し、彼の温情で今ここで生きている」
「俺の身体がずっと重いのは、ラヴェインの能力って事っすね……」
レオが不自由そうに身体を動かす。
「そうだ。私の右手と左肩もずっと軽いままになっている」
「持続的な能力なのね……。今後、レオとカシャはまともに戦えないかもしれないわ。
それに能力を奪い別の相手に与える能力を持っている者までいるなんて厄介ね……」
二人の会話を聞いて、皆の表情は一気に暗くなる。
他者に力を授ける能力が敵の手にあるならば
今後の戦いは更に熾烈を極める事になるだろう。
「話がズレたわね。今その話は後にしましょ。次は?」
「はい、はい! ノアが話す~!」
ピョンピョンと跳ね、元気よく手を挙げるノア。
戦績を自慢したくて居ても立っても居られない様子。
「はい、ノア」
シンシアが律儀に指名するとノアは嬉しそうに語る。
「えっと、半分くんを半殺しに嬲っていた
多分、グリフォンを襲撃してきた元凶のおっきなブロッコリーみたいな敵をぶっ殺した!」
「言い方な!」
ハーフが不服そうに突っ込む。
「でも本当の事じゃん」
「ま、まあそうなんだが……」
「それに優しく看病もしてあげたんだよ」
「看病?」
覚えが無い出来事にハーフは首を傾げる。
「ノアが栄養のあるお野菜を千切って食べさせてあげたんだよ?」
その言葉を聞いた途端、ハーフの顔の血の気が引く。
顔面蒼白。この言葉が今の顔色を表現するのにこの上なく正しい。
「おい待て、栄養のあるお野菜ってまさか……」
「詳しく……聞きたい?」
いたずらっぽく首を傾げるノア。
「いや、いい。金輪際、その話は絶対にしないでくれ……」
ハーフは想像し口を抑える。
皆は何があったのか分からず顔を見合わせた。
「とりあえず、ノア、ハーフのところは勝利したみたいね。次は?」
「はい! 俺も白い奴と戦って勝ちました!」
レオも重い手を挙げ、堂々たる戦果を報告する。
「白いのってもしかして、紙飛行機みたいなの?」
朔桜が覚えのある形状を例えに聞く。
「かみひこーき?」
だが、レオに人間界の固有名詞は伝わらない。
「えっと……シューって空を飛ぶ先端の尖ったやつ?」
「そうです! それです!」
二人の解釈が一致した。
「あ~~どさくさに紛れて朔ちゃんを攫ったやつだね」
ノアが少し怒った口調でその存在に理解を示す。
「うん。レオ君が倒してくれてよかった。
私も色々あって攫われた後、バグラエガって大きな魔物倒したよ!」
「すごーい! 朔ちゃん一人で倒したの!?」
「うん! でも、その魔物を操っていたペテペッツって猫みたいな女の人は逃げられちゃったけど……」
「十分に誇っていい成果よ、朔桜」
シンシアも朔桜の勝利を褒める。
「じゃあ、確定で残っている敵はラヴェインとペテペッツの二体ね。
他にまだ潜んでいるかもしれないし、みんな今後も気を抜かないようにしましょう!」
一同は深く頷き、返事をする。
気を落としているのか、いつもの熱量と覇気がないカシャ。
その表情は仮面で見えずとも、その心情は皆
特徴的な語尾が無い事で察していた。




