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W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~  作者: 白鷺
六章 心呑まれし堕黒の姫
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八話 星奏調律対策

星矢が降り注ぎ、消しとんだ森の跡地に

息を切らしたシンシアが佇む。


「はぁ……はぁ……」


可能な限り星矢の回避に徹底し、致命傷はなんとか避けれたが

身体は自身の放った攻撃で負傷し鮮血が流れ出ている。

周囲を見渡すも、仲間の姿は一人もない。


「みんな巻き込まれていなければいいけど……」


シンシアは仲間を心配しつつ、一緒にグリフォンに乗っていた朔桜を第一優先で探す。

すると、草木を掻き分け、誰かがシンシアに近づいて来た。


「ちっ。あの猫女、本命を連れ去りやがって。手柄を奪い取るつもりかぁ?」


(こも)った声で不満を漏らしながら木々の暗闇から現れたのは若い男。

白藤(しらふじ)色の跳ねた髪。

顔には藍色と赤と茶色が不規則に混じり合った仮面。

漆黒の上下の衣服に黒い靴。

上着の肩と手首付近には白い線が数本入っている。

衣服の特徴からして魔界の魔人。


「何を言っておるかリョクエン。あのままでは小娘の方が死んでおったわ」


後方から若い男をリョクエンと呼んだ年老いた男が姿を現す。

薄くなった白髪頭。

鼻下の白い髭は横に長く伸びている。

顎髭は量が多く二つの球体のようなボリューム感。

白い服の上に柳色の分厚い羽織りは薄汚れよれている。

こちらは精霊界の精霊人だろう。

若い魔人と年老いた精霊人の異色の組み合わせが

シンシアの不安をより一層駆り立てる。


「まあ、結果オーライだろ、ドクレスの爺さん。

俺らの仕事はその他の処理だしな」


二人はシンシアと対峙する。


「貴方たち、何者……!?」


「何者って、ここ最近数人の精霊人と魔人とコトを構えたはずだぜ?

それのまぁ……余りってこったぁ」


「それじゃあ、貴方たちも使い捨てかしら?」


その飾りの無い言葉に仮面の男が笑う。


「言うねぇ。ま、その程度の認識でいい。

だが、ちっとばかし癖があるぜ」


「そう。それは楽しみね」


シンシアは不意を衝くかのように素早く矢を放つ。


「ふん」


仮面の男が指を曲げるとその方向に矢が曲がる。


「っ!」


そして、矢は放たれた勢いを保ったまま

シンシアへと襲い掛かる。

顔の寸前でシンシアは()を掴み直撃を阻止した。

一連の動作でシンシアの勘は確信へと変わる。


「どうして貴方が()()()()を?」


シンシアには今の能力に心当たりがあった。

視界に入る等速直線で動くモノを指の動きに合わせて同速度で操る能力《指定方向》。

これは以前、キジュ村でシンシアが戦った“金有場(カナリバ)”メティニが使っていた能力だ。


「なんのことやら? 爺さん」


質問を一方的に遮り、老人に合図を送る。

老人は手を前に翳し、精霊術を唱えた。


「ウインフレイブレム!!」


炎が風に煽られ、大きさを増す。

巨大な炎が渦を巻き、シンシアへと迫る。


「火と風の“二適者(デュアル)”!

でも、この炎の大きさなら私の矢を捉える事は出来ないわ!」


炎の渦を目隠しに仮面の男から死角に移動。

惜しげなく矢を放つ。

しかし、仮面の男が指を曲げるとシンシアの矢は

視認されていないにもかかわらず、シンシアへと返る。


「そんなっ! なんでっ!?」


矢を素手で弾くも、炎の渦がシンシアを狙う。

素早く横に逸れるも、仮面の男の指に従い猛火が命を宿したかのようにシンシアを追尾する。


「くっ!」


「さあ、お得意の弓矢で反撃出来るものならしてみろ。

その炎はお前を焼き尽くすまで永遠に追い回すぜ!」


見えないはずの位置からも矢を意のままに操れる事に

シンシアは動揺を隠せない。


「メティニとは別の能力なの!?」


攻撃を意のままに操り返すという能力であるのは明白。

だが、メティニと異なるのは、目で見えていない攻撃も返せるという点だ。

このまま逃げ続けても埒が明かない事を悟り、シンシアは意を決して足を止めた。


「随分と諦めがいいな! 楽で助かるぜ! まずは一匹ぃ!」


指の動きに従い、巨大な炎の渦の中にシンシアは呑み込まれてしまうのだった。

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