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W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~  作者: 白鷺
五章 残全生落 悪意の災
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四十二話 先見の明

水の天術最上位色“白”の天術 白水の上級天術は神の存在すらも脅かす。

属性相性が悪いにしても、炎雷神 ブレイズがあそこまでの痛手を受けるとは。


「……化け物め」


素直な感情が自然と口から漏れ出ていた。


(わたくし)も神を名乗っておりますので。

本物の神に負けてはいられません」


澄ました顔をしやがって。

実に腹立たしい。

あの澄まし顔を一変させる手段は《八雷神》以外には存在しないだろう。

俺の今のエナの量なら使えて後、五回ってところか……。

だが、さっきの様子だと当分はブレイズを呼び出せそうにない。

若雷神 リ・マインドも俺より格上のシエラユース相手には使えない。

顕現させる神を慎重に選ばなければ、この戦い完全に詰む事になる。


「戦意喪失ですか?」


まるで行動を起こさない俺をわざと焚き付けてやがる。


「バカ言え。お前を倒す方法を考えてるところだ。黙ってろ」


白水の攻撃を受けず、シエラユースを倒せるのは

光化できて神速で移動できる伏雷神 ライトニングしかない。

俺が天に手を(かざ)し、詠唱を始める前にシエラユースが言葉を放つ。


「なるほど。光化させる神速蒼雷の神馬ですか。確かに手段としては良好ですが、私相手には無意味ですよ」


その言葉に俺は口を閉ざした。

俺はまだ八雷神を呼んでいない。

にもかかわらず、奴は呼び出す神の名を言い当てた。

(あまつさ)え、その能力までもだ。

思考を読む能力か?

いや、奴が俺やライトニングの思考を読めたとて神速の攻撃をかわせるわけがない。

今は余計な事を考えるな。

隙を与えるな。


「現れよ、我が“八雷神”が一柱。駆け巡れ、伏雷神! ライトニング!」


蒼雷が目の前に落ちると、脚に黒い雷雲を纏い角から蒼い雷を放電する蒼黒の神馬が顕現した。


「先に無駄だと言ってあげましたのに」


「御託はいい! やれ! ライトニングッ!!」


俺の命令でライトニングは神速で飛び出す。

数秒後、シエラユースは見るも無残な肉片に変わっているだろう。


「何を期待しているのですか? 残念ですが、貴方の頼みの神馬は既にそこに倒れていますよ」


シエラユースの指差す先には、ライトニングが地面に横たわっていた。


「冗談だろ……」


ありえない。《八雷神》が二柱も負けただと?

神速で動ける神をどうやって倒した? どんな能力を使った?

疑問が次から次へと頭に浮かぶ。

だが、答えは出ない。出るはずもない。

考察する要素が少なすぎる。


「理解できないという顔ですね」


平然と俺を見下ろすシエラユース。

ライトニングの身体は酷く焼け(ただ)れ、よく見ると渦を巻いたような跡がある。

恐らく、白水の攻撃を受けたのだろう。


「還れ、ライトニング」


俺は即座に負傷したライトニングを天に還す。

あの一瞬で何をしやがった?

奴が攻撃をしている素振りなんて見えなかったぞ。

いや、俺が見えていないだけで、奴も神速で動ける可能性もある。

先にライトニングの能力を言い当てた事も加味すると相手の思考が読める可能性もある。

俺の頭の中に膨大な情報量が錯綜とする。


「ふふ。成す術無しと見えますね。

ヒントをあげましょう。

ロード、貴方は防五段階(ぼうごだんかい)をご存じですか?」


突然のシエラユースの言葉に俺は返事に戸惑う。

だが、その言葉は知っていた。

精霊界に来てイシデムの鍛錬場でポテ師匠から会得した力。防五段階。

俺は確か、防五段階三を会得していた。


「知ってるが、それが何だ」


「防五段階。一、神域は感覚でかわす」


その言葉を聞いた瞬間、身が震えた。


「ご理解いただけましたか?」


「あぁ……理解した。お前がどこまで滅茶苦茶な存在なのかって事をな。

お前は神速の攻撃を()()なんて曖昧なものでかわしたのか」


「正解です。私たち“裁きの調停者(テスタメント)”はほぼ皆が

防五段の上段を有しています。並の攻撃は当たらないと思ってください」


もう速度とかいう概念は不要って事かよ。

どこまでも規格外だな。


「それに加えて攻五段階(こうごだんかい)で一、神域は感覚で当てる。

その力でライトニングに攻撃まで与えたってか?」


「残念、それは不正解ですね。私は攻撃をしていないし、攻五段階は三までしか会得していません」


「何?」


攻撃していないだと?

それに攻五段階三?

だが、それはおかしい。

攻五段階。三、名人は目で当てる。だった。

奴はこの戦いが始まってから、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

視覚の情報に頼っていないのだ。


「何故、私が伏雷神 ライトニングを顕現させると分かったと思いますか?

何故、攻五段階三の私が適格に神速を捉えられたと思いますか?」


「んなもん知るか」


「では、お教えしましょう。

それは私が……()()()()()()()()()を視ているからです」


「……は?」


こいつ今何を言った?

未来を視ているだと?


「私の能力《先見の明(ディ・ヴィジョン)》は未来を見通す眼。

私には既に視えているんですよ。貴方の全てが。この先の未来が。この闘いの勝敗が、ね」


そう言ってシエラユースは柔らかに微笑んだ。

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