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W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~  作者: 白鷺
五章 残全生落 悪意の災
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三十六話 反撃の拳

精霊神シ・セウアを相手に

ロードさんは倒す手段を必死で模索し

朔桜さんはそれを宝具で手助けし

ノアちゃんは作戦に一役も二役も立って

シンシアさんは奴の攻撃を何度も食い止めて

カシャさんはここぞってところでロードを助けているし

あのハーフって人も能力でみんなを救っている。

この場で何も出来ていないのは俺とキリエだけ。完全な場違いだ。

こんな格の違う戦闘に混ざれる実力も、勇気も持ち合わせていない。

ここ最近の戦いはレベルの違う相手ばっかりだ。

無鉄砲な昔の俺はもういない。

いつの間にか、みんなの邪魔や足を引っ張らない事だけを考えている。

何をすればいいのかこれっぽっちも浮かびもしない。

一言のアドバイスだって出てきやしない。


「これじゃダメだっ! 考えろっ! 考えろっ! 俺の出来る事をっ!」


みんなは精霊界を救うためにあの化け物と正面から戦ってるんだ。

必死で無い脳を回転させている間に、シ・セウアは黒い風を球体に集約していく。

凡人の俺でも見れば分かる。

あの一撃はこの世界を滅ぼす一撃だと。

そんな途方もない攻撃だと。


「昔の俺ならどうしていた? 教えてくれよ、相棒……」


ふと弱音が零れ出ていた。

その瞬間、バシッと強く背中を叩かれる。


「昔のレオはこんな時、考え無しに前に出ていたよ。。。」


キリエはこんな絶望的な状況にも関わらず、強い信念ある目で俺の顔を見た。

周りのみんなもそうだ。みんなの目は全然死んじゃいない。

最初から死んでいるのは、俺の目だけだったんだ。


「そうか、そうだったよな。キリエ、サンキューな」


俺の取柄は、真っ直ぐな意志。

そして、この拳だけだ。

俺は静かに最前に立つ。


「バカ! 死ぬぞっ!」


ロードさんが俺の身を案じてくれている。

こうやって優しく甘やかして、いつも守ってくれるから安心しきってしまっていた。

でも、それじゃダメだ。

救われてばっかじゃいられない。

今度は俺がみんなを救う番だ。


「見ててください。この土壇場、俺がひっくり返します!」


そう豪語して拳を構える。

意識を拳だけに集中。

だが、強風で足場が安定せず、意識が削がれる。


「キリエ! 左足だけ固定してくれ!」


「レオ。。。! そんな事したら。。。」


「構わない! 頼む!!」


「……分かった。。。アースロウ。。。!」


「これで準備は整った。空気を固められた時だけ援護、お願いします!!」


キリエは地面を泥のように変化させ、俺の左の足だけを固定してくれた。

万が一の援護も頼んだ。

もう有余も無い。逃げ場も無い。ここで打ち返すしか打開策は無いんだ。

思い出せ、ディガラベアに飛び出した度胸を。

思い出せ、イシデムでの辛い鍛錬を。

思い出せ、賊長ジオラとの戦いのタイミングを。

思い出せ、肉塊との戦いの勇気を。

思い出せ、午の刻(サァジタリス)との戦いの知恵を。

思い出せ、鬼人との戦いの怒りを。

思い出せ、カシャさんとの訓練を。

思い出せ、俺の目指す目標を。

そして、思い出せ、相棒との約束を。


「妹を、キリエを……………………頼む」


俺の人生を、全ての経験を、今この時に活かすんだ。

右足を半歩下げ、体重を乗せる。

上半身を捻じり、身体の向きを巨大なシ・セウアに合わせ上方に修正。

全神経を研ぎ澄ませ、右の拳に集中する。

俺の《反拳》は拳に受けた事象を二倍にして反射する能力。

物理でも術でも全て跳ね返せる。

だが、能力の発動が少しでも遅れれば、俺の手は吹き飛び、俺諸共みんなも死ぬ。

大丈夫だ。自分を信じろ。

決心と同時にシ・セウアの攻撃は放たれた。

圧倒的な膨大なエネルギーの塊。

肉塊の放つ熱閃の何万倍もの力を肌に感じる。

以前なら自己犠牲をしていた。諦めていた。

だが、今の俺はあの時とは違う。

皆の期待を背に最大の威力で拳を打ち込む。


「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!! 反  拳!!!!!!」


拳にぶつかる黒風の球は小さな球体と思えないほどの質量を持っていた。

まるで精霊界を拳で受けているかのようだ。

一瞬でも気を抜けば、腕が持っていかれる。

存在が消えて無くなる。呼吸をする暇だってない。

みんなが息を呑んで俺の背中を見守ってくれているのが分かる。

そうだ。

背負っているのは、仲間の命。

背負っているのは、世界の平和。

背負っているのは、友との約束。

背負っているのは、大切な存在。

その()()に比べれば

()()()()()覆せないわけがない。


そう思った瞬間、拳が少しだけ軽くなった。


「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!」


思いっ切り振り抜いた拳は黒風を真正面から打ち返し


神の半身を跡形も無く消し飛ばした。

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