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W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~  作者: 白鷺
五章 残全生落 悪意の災
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三十二話 風断つ手

シ・セウアの風の精霊術 固空で息をしなくなって

臨死していた朔桜は、白の空間に十分以上滞在していた。

しかし、意識が戻って来るまでの間、現実世界ではほんの数分しか経っていなかった。

ロードが朔桜の蘇生処置を行っている間、ロードから電力を補給したノアとシンシアが

なんとかシ・セウアの攻撃を食い止めてくれていたのだ。

朔桜はすぐに宝具《(エレクトロ)電池(チャージャー)》で

八雷神二回分とノアに与えたの電力分のエナを回復させた。

だが、これで宝具に溜まっているエナの量は残り僅か。

もう大袖を振る事は出来ない。

宝具発動の光に気付いたシンシアが振り向くと

一足で後方へと戻って来る。


「朔桜っ! 生きていて良かった!」


「すみませんっ! ご心配かけましたっ!」


「朔ちゃん~!」


弾丸の如く跳んで来たノアが朔桜に抱き着く。


「うぐっ! ノ、ノアちゃんもごめんね……」


その光景を見て、レオ、キリエ、カシャも安堵の声を漏らす。


「さぁ、仕切り直しだ!」


気合の入ったロードの身体から激しく紫色の雷が(ほとばし)った。

朔桜の復活で一同は気合を入れ直し、士気も上がる。

反撃を開始しようとする空気の中で突如、シ・セウアは甲高い雄叫びを上げた。

空気は震え、重圧が全身にのしかかる。

耳を(つんざ)く声に一同は怯んでしまう。

その隙を見逃さず、シ・セウアは鋭い(くちばし)を開口。

小さな空気の球体を作り出す。名を球風。

球風は周囲の風を巻き込み、螺旋状のブレスと変化。

台風のように暴風を吹き荒らし、一同に向かって放たれた。

烈風と同様、破壊の風。食らえば最後、一瞬で肉片へと変わるだろう。


「(ノア!)」


ロードは大声でノアに防御の号令を出そうと試みるも

空気が震えず声が出ない。


「――――っ!」


再びシ・セウアの固空で空気が固定されたのだ。

ロード、朔桜、ノア、シンシアはその場から動く事も呼吸する事も出来ない。


「みんなっ!」


「まさか、また空気を。。。!!」


レオとキリエも皆の異変に気が付く。


「シュレーターダッシュ!」


カシャは四人を助けようと一目瞭然に駆け寄るが、無色透明な壁に激突。

完全に固まった空気の壁に進行を阻まれた。


「コウテイパンチ!!」


カシャは壁を拳で打ち破ろうとするが、ビクともしない。

その間にも、ブレスは先頭に立つロードの寸前まで迫っていた。

主戦力は拘束され、この現状に対抗できる者はいない。

残された者にはなす術がなかった。

ロードたちに確実な死が迫る。

その時だった。


「《縦断(じゅうだん)》!!」


突如として放たれた斬撃が

シ・セウアの破壊の風諸共、周囲の空間を一瞬で消し去ったのだ。

その攻撃の正体をシンシアは知ってる。

ロードたちの窮地救ったのは、身体を右側に向け、負傷した左手で手刀を振るう

几帳面にも丁度半分が交互に色の違う影とメサが連れてきた魔界の青年ハーフだった。

シンシアと戦い、敗北し、木に括り付けられていたが

烈風で運良く縄が切れ、自由の身を得ていたのだ。


「《縦断》!!」


間髪入れず、右手で手刀を振うと空間を切り取る巨大な斬撃が

風陣を貫通し、シ・セウア本体へと直撃。


「ま、僕の本領はこんなものかな?」


ハーフは勝利を確信して勝ち誇るもシ・セウアは無傷。

鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしている。


「嘘だろ。効いてないのか!?」


シ・セウアは能力《上鳥権威(じょうちょうけんい)》は

自分以下のエナの攻撃を一切受け付けない。

だが、風陣を破られたのには驚きを露わにしていた。

シ・セウアは一度、固空を解いて風陣を再構築し始める。

そのおかげでロードたちは身動き出来ない状況からなんとか解放された。


「朔桜、無事か!?」


「ごほっ……ごほっ……辛うじて……」


ロードは最優先で朔桜の身を案じる。


「まさか、貴方が助けてくれるなんて。ありがとう、ハーフ」


シンシアの素直な言葉にハーフは顔を背ける。


「縛ったまま放置だなんて、捕虜(ほりょ)の扱いがなってないよ。

僕を無視してあの化け物と戦いだしてからずっと生きた心地がしなかった」


「無事で何よりじゃない!」


「あんた、都合良いな!!」


助けられた手前、縛り付けていた事を忘れていたなんて

シンシアは口が裂けても言えなかった。

二人の会話にロードが割って入る。


「ハーフと言ったか? 風陣を貫けるなら十分な戦力だ。お前もこの戦いに付き合え」


「はぁ!? どうして僕が! 今のはただの気まぐれだよ!

お前たちを助ける義務は僕には無い!」


ハーフは悪態をつき背を向ける。


「ここを乗り切ったら、お前が影に加担していた事は不問にしてやる。

どうせこの世界に捨てられた身だろ。今はどっちに着くのが賢明かその変な頭を使って考えろ」 


お返しとばかりにロードも悪態で返すと、ハーフは目を閉じてどちらが得かを考える。

だが、考えるまでも無い。結論は明白だ。

ロードたちがここで敗北すれば、この世界は滅びるのだから。


「…………ちっ! 分かった、分かったよ!

ロード・フォン・ディオス、お前たちに付くよ!」


「賢明な判断だ。朔桜、エナはどれくらい残っている?」


「もう殆どないよ。黒風で徐々に減っているし」


「なら、そいつの左腕を治してやれ」


「うん! 分かった!」


「僕の腕を? いいのか?」


「問題ない。その代わり、お前には大役を務めてもらうぞ、ハーフ」


朔桜は宝具の力でハーフの怪我を治す。

ハーフという戦力が増えた事により

絶望的な状況から僅かな光明が見えだした。


「全員、一言一句逃さず聞け!!」


ロードは声を張り上げ、皆に勝つための伝令を出すのだった。

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