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W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~  作者: 白鷺
五章 残全生落 悪意の災
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三十一話 朔桜の力

精霊界から人間界へ行く私の過去の記憶から

夢幻のような白い空間に戻って来た。


「今のが精霊界から人間界に行った時の朔桜の記憶よ」


「記憶ツアーありがとうございます。

おかげで胸のモヤモヤが晴れました」


私は深々と頭を下げる。

過去の記憶でもお母さんやおばあちゃんに会えたのは嬉しい事この上ない。


「そう……それは良かった。

あの時の判断を桜花は正しかったかどうか凄く苦しんでいたから」


イザナミさんは自分の事のように、苦しそうな表情で着物の胸元を握り締める。

憑代にしていたという事は、感情や経験なども同調するのかもしれない。


「感傷に浸っている時間は無いんだった!

今のが私が話したかった事の一つ目。

そして、二つ目は朔桜、貴女の能力の話」


「私の……能力?」


「そ! 貴女には()()()()()があるの」


その言葉を聞いてドクンと私の心は強く高鳴った。


「すごい、すごいっ! どんな力なのか教えてください!!」


私にも能力があったなんて。

もしも能力を使えるようになれば、自分で自分の身を守る事も

みんなを守る事だって出来るかもしれない。


「いい? よく聞いて。そして覚えてね?

貴女の一つ目の能力は……《(ついたち)》。

(さく)の時にだけ、“神の力”を行使できる能力よ」


「朔? 神の……力?」


「朔は世界から見て、月と太陽が直列に並んだ時の僅かな時間の事。

厳密な時間で言えば、三分から七分くらいの間かな」


「意外と短いんですね……」


「でも、その間だけはこの私 創世神イザナミの

天地創造、森羅万象、完全無敵の力を使えるという事よ」


「う~~ん」


天地創造、森羅万象、完全無敵の力?

あまりのスケールの大きさに相応しい言葉が出てこないなぁ。


「まあ、限定的ではあるけど能力としては間違いなく最強の力だよ。

《朔》とも相性の良い宝具もあるしさ」


イザナミさんは私の肩をポンポンと叩く。


「は……はぁ……」


「そして、二つ目の能力は――――」


突如、目の前が白く弾け、意識が途絶えそうになる。

激しい眩暈に襲われ、平衡感覚が狂う。

全身の感覚が切り離され

夢から覚める間際みたいな、現実と夢の間の曖昧な感覚だ。


「これ――――ない――――わね」


言葉が飛び飛びでイザナミさんが何を言っているのが全然聞き取れない。


「いい――――三つ――――桜花――――天界――――生き――――いる」


言葉の要所要所だけだけど僅かに聞き取れた。


「朔桜……桜花を……助けてあげて……」


ハッキリと聞き取れたその言葉を最後に、私は白い世界から弾き出された――――――。



目を覚ますと、顔の目の前にはロードの顔。


「わっ! 近っ!」


驚きのあまり咄嗟にロードを突き飛ばしてしまう。

予想以上にあっけなく吹き飛ばされたロードはひっくり返っている。


「ごめんっ! ロードっ! つい!」


怒られるだろうかと身を縮込めているとロードは盛大に笑った。


「随分と荒い眠り姫だな」


「ごめんて!」


「それだけ元気なら問題ない。

朔桜、お前が生きていて本当に良かった」


素直に向けられた親愛の言葉に胸が跳ねる。

なんだろうこの気持ち。

言い表せない感情に戸惑う中、いち早く起き上がったロードは静かに手を差し出す。

なんと紳士的なのだろう。

私はその手を取って立ち上がろうとする。

でも、ロードの思惑は違った。


「とりあえず……回復してくれ」


なるほど。


「……はぁ……」


久しぶりに深くため息をつく。


あぁ、今すぐにでも私の感動を返してほしい。

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