表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~  作者: 白鷺
五章 残全生落 悪意の災
215/394

十一話 絶対服従 八雷神 リ・マインド

朔桜の何気ない一言でロードはビッグレモンを倒す算段をつけた。


「一体、何を思い付いたの?」


朔桜はロードに作戦の説明を求める。


「いいか? “喰者(フルーヅ)漂酸(ひょうさん) ビッグレモンの正体、それは……スライムだ」


ロードの呟きに朔桜は首を傾げる。


「スライムぅ? あれが?」


「ああ。魔界にいるスライムは、目に見えないほど微細な菌や微生物の集合体だ。

それが大気のエナや動植物を喰らって、大きな成体になる。

成体になると単体で分裂を繰り返し、個体数を増やしていくんだ」


朔桜も今の説明でスライムとビッグレモンの特性が一致している事に気づく。


「それじゃあ、あのビッグレモンも微細な菌の集合体って事?」


「仮説だけどな」


「そうだとしても、あれをどうやって止めるの?

物理も魔法の攻撃も通用しないってロードが自分で言ったばっかりだよ?」


「簡単だ。自ら死滅してもらう」


「?」


朔桜はロードの言葉の意味が分からず、再び首を傾げた。


「まあ、見てろ」


論より証拠。ロードは風壁を何度も張り直し、漂酸の中を移動。

酸が届かない遥か上空に移動。右手を真っ直ぐ天に(かざ)す。


「現れよ、我が“八雷神”が一柱。全てを我が物と支配せよ、若雷神! リ・マインド!」


鮮やかな黄色の落雷から若い女神が顕現する。

着物のような白い衣服を纏う身体の曲線が綺麗な

前髪を中心で分け絹のような黒髪が腰まで伸びた女性。

人間でいうと二十代前半くらいだろう。

右の頭部からは鮫の牙のような形の鮮やかな黄色の片角。

背中からは身体よりも大きく仰々しいアンテナのような機器が生えている。

雷神では初めての人型の神だ。


「お久しゅうございます。ロード様」


丁寧に挨拶すると隣の朔桜を見る。


「此度服従させるのは、ロード様の隣に立つには身分不相応な下品な女でよろしいですか?」


優しそうに微笑むが、背筋が凍るような言葉に表せない恐怖感がヒシヒシと伝わってくる。


「違う。こいつは俺の妹だ」


リ・マインドは目を丸くし、長い裾で自らの口を抑える。


「あらあら、これはこれは、失礼致しました。

よく見れば、桜花様に似た美しいお方。気品に溢れております」


神速級の掌返しに朔桜は苦笑いで返す。


「対象はあれだ」


ロードはビッグレモンを指差すとリ・マインドは冷ややかな視線で見下す。


「あの猥物(わいぶつ)()()をご所望ですか?」


「ああ」


「数量は兆を超えております。

ロード様自身のご負担が莫大なものとなりますが、本当によろしいですか?」


「構わん、やれ」


「承知致しました」


リ・マインドの背中の機器が翼のように横に大きく広がる。

すると、森へ進行していたビッグレモンの動きが完全に止まった。


「服従完了です、ロード様」


「ご苦労だった、リ・マインド」


「勿体なきお言葉。これにて失礼いたします」


リ・マインドは膝を折り、深々と主に頭を下げると天へと還った。


「えっと……一体何をしたの? ビッグレモンはまだ倒せてないよ?」


ビッグレモンの動きは止まったが、今だ健在だ。


「まあ、焦るな」


ロードが静かに手を翳す。


「主であるロード・フォン・ディオスの命令だ――――消え果てろ、ビッグレモン」


その瞬間、ビッグレモンは一瞬でエナとなり霧散。

朔桜はその光景に驚き、ただ呆然としている。

ロードのたった一言で無敵と思われたビッグレモンは消滅したのだ。


「“喰者”討伐完了だ」


朔桜には理解が追いつかない。


「えっ………何が起きたの……?」


朔桜の問いには答えず、ロードは平然と大量のエナを吸収し、エナ値を増大させた。


「身体中にエナが循環していくのが分かる。

力が(みなぎ)る……。これならもう少しで八柱目も……」


「ロードってば!!」


朔桜が黒鴉の衣の首の部分を引っ張る。


「う゛っ……止めろ! 殺す気かっ!」


ロードは朔桜の手を振り払う。


「何をしたのか私にも教えてよっ! 気になるじゃんっ!」


面倒くさそう朔桜を(にら)むが、朔桜も譲る気は無いらしい。

ロードは根負けして渋々説明する事にした。


「若雷神リ・マインドは電波信号を操る神だ。

背中の翼から電波を放ち、生物の脳に直接作用させる。

電波を受けたモノは、リマインド及びその主である俺に絶対服従。

なんでも命令を聞く傀儡(くぐつ)となる」


「なにそれ!? 最強じゃん!?」


万物を裂く四腕の鬼。

大陸を揺るがす大気外の水晶。

光化し神速で移動する神馬。

みる概念を奪う幻想竜。

生物を操る支配の女神。

八雷神の度の越えた能力に朔桜は再び驚愕する。


「弱点もある。俺と同等、それ以上のエナを持つ相手には、全く効果が無い。

それにエナの消費量も異常だ。強さや数によっても異なるが

今ので八雷神三柱分のエナを持っていかれた」


「三体分も!?」

 

「だが、弱い生命の集合体には効果覿面(てきめん)だったがな」


ロードの前に現れたのが運の尽きだった。

もしも、対峙したのがロードでさえなげれば

ビッグレモンは未来永劫この精霊界に存在し続けられたかもしれない。


「戻るぞ、奴らが待ってる」


「うん!」


こうして二人は三人の負傷したエルフの命を救い


森の被害を最小限に抑え


最後の“喰者”漂酸ビッグレモンを見事、討ち果たしたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ