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W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~  作者: 白鷺
五章 残全生落 悪意の災
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四話 ロードと朔桜

鎮まり返った木造の家で三人が顔を突き合わせる。

暫くの時が経ち、初めに口を開いたのはのクェア村の村長チェイビだった。


「そろそろ……良いかの」


耳をピクピクと動かし、他に聞いている者がいないか確認する。


「まずは……どこから話そうかの……」


チェイビはしわしわな顔をよりしわしわにして首を傾げた。

今の言葉はどこまで知っているのかと言う意味だろう。


「ま、まず! 一番最初に聞きたい事がっ!!」


前のめり気味に手を挙げる朔桜。

チェビィは静かに頷くと朔桜は期待を込めて言葉を紡ぐ。


「私の……私のお母さんはここにいるんですかっ!?」


朔桜が最も知りたい事。

最大の目的と言ってもいい。

ロードにとっても、関係ない話ではない。

朔桜の母を見つける事が二人の共通の目的でもある。

母が見つければ朔桜が母から渡された宝具【(エレクトロ)電池(チャージャー)】をロードに渡すという約束をしているためだ。


「……残念じゃが、ここにはいない」


朔桜の期待も虚しく、希望はあっさりと打ち砕かれた。


「そう……ですか……」


朔桜はがっくりと肩を落とし、落胆する。

それを見てロードが朔桜と替わるように前のめりになった。


「ここにはって事は居場所は知っているって事だろ? どこにいるんだ?」


ロードの言葉に朔桜は微かな希望を取り戻す。

チェビィはゆっくりと天井を見上げた。


「おそらく、彼女は天界におる」


「え……それって……」


朔桜の胸がズキリと痛み、押し潰されるような激しい衝撃が走る。

息を荒らげる朔桜とは対照的にロードは冷静に息を漏らす。


「朔桜、安心しろ。別にお前の親は死んだって話じゃない。

今の言葉の通り“()()”にいるって事だ」


「はぁ……はぁ……天……界?」


朔桜は胸を抑え苦しそうにロードを上目遣いで見る。


「そうだ、この世界は四つの世界で創られている。

お前の居た人間界。俺の居た魔界。

今居る精霊界。そして、お前の母が今居るらしい天界だ」


その説明を聞き、朔桜の乱れた呼吸は次第に正常に戻る。


「落ち着いたかの?」


チェビィは朔桜の容態を気に掛けると朔桜は軽く頷いた。


「はい、もう大丈夫です」


「次は俺の質問だ。何故、こいつの親が天界に居ると知っている?」


ロードは惜しげもなく切り込むとチェイビの表情が曇る。

悲しそうな、申し訳なさそうな表情だ。

チェイビは手を前に広げ自身の契約精霊の名を呼ぶ。


「キキラパ」


すると彼女の傍らに緑色の髪に透き通るように薄い四枚羽。

幼い少女のような顔つきの小さな人型妖精が出現。


「儂と古くから契約している風の精霊のキキラパじゃ。

この子が精天門(せいてんもん)を渡り、精霊界へ行くところを最後に目撃しておる。

彼女は……精霊界を守るため一人で戦い“精天戦争(せいてんせんそう)”を未然に防ぐため

自ら天界に行ったんじゃ」


知らない情報が一気に押し寄せ、朔桜の頭の中は大量の?で埋め尽くされた。

何から聞いていいものか朔桜の開きかけた口が閉じる。

代わりに口を開いたのはロードだ。


「率直に聞くが、朔桜の母親は何者だ?

俺らのように門を渡れるうえ、一人であの天界に乗り込むなんて正気の沙汰じゃない。

普通の人間なんかじゃないんだろ?」


チェイビはロードの言葉を肯定するように頷く。


「そう。彼女は普通の人間などではない。

この“()()()()()()()()()()()”特別な存在なのじゃ」


朔桜は口をぽっかりひらいたまま唖然とする。


「私のお母さんが……この世界の在り方を変える?」


「そうじゃ。彼女は……“()()()()()()()”」


「神の力を得る者だと?」


「そう。お主が宿す“()()()”と同じモノじゃよ、ロード」


同時にロードはその言葉を聞いた瞬間、何かに気づく。


「っ!?」


目を大きく見開くと、チェイビの目がその真実を肯定していた。

あらゆる可能性がロードの脳内を巡り

物事を整理するように一言一言丁寧に言葉にしていく。


「俺は昔、母さんに言われた……。

神の力は創世神の血族のみに与えられる力だと。

俺は魔人の父と人間の母の子だ。

魔の力が強すぎると神の力は抑止され使えない。

故に俺の兄と姉は神の力は使えなかった。

だが、三番目の俺は魔の血が薄まり“純悪な神の力”を得た。

それが“八雷神(はちらいじん)”だ」


過去の言葉を語りながら一つの可能性が浮かぶ。


「なになに? なんの話をしているの?」


朔桜は話に付いて行けず、混乱気味だ。

ロードはそんな朔桜にゆっくりと向き合い、しっかりと顔を見た。


「朔桜」


「はい?」


「お前の……母の名を教えてくれ」


ロードが真剣な面持ちで問う。

朔桜も雰囲気に呑まれ真剣に答えを返した。


「……桜花(おうか)。私のお母さんの名前は並木(なみき) 桜花」


その瞬間、ロードは手で口を覆った。

全身に鳥肌が立つ。

動悸が激しくなり、心音がうるさいくらいに鳴り響く。

目は大きく見開いたまま、しっかりと朔桜の顔を見つめていた。


「何? どうしたの、ロード?」


朔桜はロードのいつもと全く違う仕草を見て顔をしかめる。


「そちは……気づいたようじゃの」


チェビィはロードの方を見て目が合うとロードはゆっくりと頷いた。


「まさか……そんな事が? こんな奇跡的な事がありえる……のか?」


「ありえるからこそ、お主らは今ここに並んで居るのじゃろぅ?」


二人の会話に入れない朔桜の頭には?が浮かびすぎてついに口から出てきた。


「も~! 二人で話してないで、私にも教えてよ~!」


朔桜は頬を膨らまして抗議する。

チェイビは朔桜のために助け舟を出す。


「ロード。お主の母の名は?」


チェイビの言葉に促され、ロードが緊張した様子で朔桜に向き合う。

そんなぎこちない様子に朔桜は緊張感無くきょとんとしている。


「俺の……母の名は……()()()。 ()()()()()()()()()()()()だ」


「え? ()()()……? それって? え? 私のお母さんと同じ名前?」


「名前だけではない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「…………え?」


「お主ら二人は……兄妹じゃ」


驚愕する朔桜はロードの顔を見つめたまま硬直している。

ロードはチェイビの言葉に何の異論も唱えない。

朔桜の反応を緊張した面持ちで窺っている。


「ロードが……私のお兄ちゃん?」


脳内で言葉の意味を理解していないように呟く。


「妙な呼び方するな! 気色悪いっ」


ロードは後ろに仰け反ると朔桜を怪訝な目で見る。


「気色悪いは酷いっ!」


朔桜は床をバシバシと叩いて抗議。


「ほほ、初めての兄妹喧嘩かの」


チェイビは優しい表情で二人のやり取りを眺める。

ロードは異論を唱えるべく、朔桜の行動を無視してチェイビに向き直った。


「血筋は分かった。だが、おかしいだろ。母さんが消えたのは大体九年前だ。

間男の子にしてはこいつと俺と歳が近すぎる」


ロードは十八歳。朔桜は十六歳。計算が合わないのだ。


「それとも、もともと精霊界に居た隠し子か?」


ロードは朔桜の顔を窺う。

朔桜が大きく口を開け、反論する前にチェイビがその問いの答えを返す。


「いいや、正真正銘お主らは同じ両親から生まれた血の繋がった兄妹じゃよ」


「そんなバカな――――」


「聞け、ロード」


チェイビはロードの反論を遮断する。


「これから語るは六十四年前ほどの話じゃ。お主らの母、桜花の話である」


二人が息を吞み静まると姿勢を正す。

チェイビはよろしいと一言言うと

まるで数日前の事を思い出すかのように、桜花と過去の出来事を語り出した。

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