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W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~  作者: 白鷺
四章 輪廻凱旋! 都市奪還作戦
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八十二話 明日への一歩

静かな夜明け。

崩壊したスネピハに朝日が昇る。

複数のラッパの音が鳴り響き、色とりどりの紙吹雪が舞う。

これはけじめにして区切り。

スネピハを救った英雄たちへの心ばかりの計らい。

三区の大通りに弾けんばかりの都民の大歓声が響く。


「ありがとうシンシア様! 貴方は私達の英雄だ!!」


「聖女様ありがとう!! 貴女様のおかげで私は命を拾いました!!」


「スネピハの英雄たちに感謝を!!!」


水都市スネピハを救った英雄たちを見送る都民の声だ。

都民全てが誠心誠意感謝を示す。

辛く険しい戦いを生き残った衛兵たちがロードたちの馬車道を作る。


「敬礼!!」


一区衛兵長シャーロンの掛け声で、全ての衛兵が姿勢を正し彼らの旅立ちを見送る。


駅馬車を御者するのはシンシア。

長い耳を隠すいつものフードは被っておらず、いつも以上に堂々と胸を張り、手を振り声に応える。

このスネピハにエルフであるシンシアを異形種類と蔑む者はいない。罵倒する者はいない。

英雄を罵る者など、いるはずがない。


「レオさん!! どうか、どうかお元気で!!」


レオが助けた衛兵が馬車のレオに向けて大きな声を掛ける。


「…………」


だが、レオは応えない。

親友のキーフが死に、心に傷を負った彼が、明るく元気に応えられる訳がない。


「お元気でーーーー!!!」


最後の最後までレオが助けた衛兵の大きな声が全員の耳に響いた。


馬車が見えなくなるまで盛大に見送った(のち)、多くを失った彼らは過酷な現実と向き合う。

消し飛んだ王城。崩壊した家屋。割れた地盤。命を落とした大勢の人々。

失ったモノは二度と帰ってはこない。

だが、壊れたモノは再び直せる。


「うほっ! お前さんらぁ仕事だ! 今週で都市を修復すんぞぉ!

まずは貴橋(ききょう)の修繕からだ! 材料持って来い!」


「はいっ!!」


三区衛兵長モルボの号令で、衛兵は休む間も無くキビキビと働き始める。


「サンデルの方々も、復興作業にご協力ありがとうございますでありますっ!」


四区衛兵長ムニエラがサンデルの増援を引き連れ、瓦礫の除去作業を始める。


彼らに手を止めている時間はない。

今は悲しみに暮れている者も、いつかは前を向き歩き出さなけばならないのだ。


「行っちまったな……」


簡易テントが張られた高台から寂しげに呟く衛兵総長ザギバ。

自警団長シュトロンは(なだ)めるようにザギバの肩に手を置く。


「彼らはもっと重大な使命があるからね。長くここに留まってくれなんて言えないさ」


二人は前日の夜に別れを済ませ、

その際、影の事、そして精霊神の事を聞いたのだ。


「あの精霊王よりもヤバいのと戦おうなんて本当にとんでもねぇ連中だ」


ザギバはもう苦笑するしかない。


「そうだね。今回は僕たちじゃなれそうにはないけど、いつか彼らが困った時

今度は、僕たちが彼らの力になろう!」


「そうだな! 今は死んだ王やランデュネンの分までこのスネピハを支えなきゃな!」


ザギバは大声を張り上げ、肩をぐるぐると回す。


「さぁ! 忙しくなるぞ!!」


二人は目標を確かに明日への一歩を進み出した。


精霊王が消え、能力《王の号令》で彼に従っていた精霊、精霊獣は各地に散った。

無駄に命を散らす事なく、スネピハの奪還に成功した。

隣の町サンデルへ避難した住民の受け入れ。

壊れた街の復興。

死者の弔いなど、やる事は山積みだが、彼らは今日も生きていく。


それが正義と正義。


平和と平和がぶつかり合った戦いの末の答え。

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