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W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~  作者: 白鷺
四章 輪廻凱旋! 都市奪還作戦
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七十八話 三戦目へ

ロードの能力《無常の眼》は身体能力と魔力が二倍に向上する。

だが、同時に身体の感覚、痛覚や疲労もまた、それに伴う。

もともと精霊王との戦いで足と脇腹を折り、それに続き鬼人との戦いも強いられ

疲弊していたロードはそれが原因で倒れたのだ。


「ロードっ!」


朔桜は一目散に駆け寄り、ペンダントを(かざ)そうとするとロードは手で制止した。


「大丈夫……だ」


その手を上空に掲げ、呼び出していた《八雷神》クラウを灰雷にして天に還すと

手ですぐさま目を覆う。《無常の眼》で紫陽花のような鮮やかになった眼を元の黄金色に戻した。


「俺の回復は最後でいい……。死にかけ共を優先しろ……」


弱々しく視線の先に指を差す。

朔桜がその指の先を辿ると、二人の女性がゆっくりと歩いて来ていた。

一人は、しっかりと、ゆっくりと歩みを進める白藤色髪をした貴公子風の女性。

もう一人は息も絶え絶えで、顔は病的に青白い。右腕を失い、革のベルトで肩を強く括った血まみれの女性だった。


「シャーロンさんと、シンシアさんっ!?」


朔桜の声に気づいた一区衛兵長シャーロンは希望を見たような明るい顔をする。


「朔桜っ! 無事で良かった!」


「シャーロンさんも無事で良かったです!」


「再会して早々だけど、彼女の手当をお願い」


「はい!」


地面に寝かされたシンシアに宝具【(エレクトロ)電池(チャージャー)】を当てると眩い光がシンシアを包む。

鬼に喰われた腕を完治させ、消費したエナも完全に満たした。

呼吸は正常になり、顔色もどんどん良くなっている。


「ありがとう、朔桜……」


シンシアの言葉に朔桜は笑顔で返事をする。


「シンシアさんが生きてて本当に良かったです……。

私、他の人も治してきます!」


朔桜は足早にレオのところへ駆けて行った。


「シャーロン、貴女もここまで連れてきてくれてありがとう」


シャーロンは小さく首を振る。


「貴女にお礼を言われるほど大層な事はしてないわ」


「姉さんっ!」


シャーロンの傍らに駆け寄るシュトロン。

背も体格もほとんど同じ。

見比べると瓜二つだ。


「似てるとは思ってたけど、あなたたち双子だったのね」


上半身を起こしたシンシアが目を丸くして驚く。


「姉さん、生きててくれてよかった……」


「シュトロン。貴方も無事で良かった」


二人は互いを抱きしめ合う。


「久しく見ないうちに随分と逞しくなったみたいね」


「僕も色々と乗り越えてきたからね」


二人は顔を見合わせて笑う。

安息の時などない密度の濃い一日の束の間の休息の時間が過ぎる。


「お待たせ、ロード! みんな回復させてきたよ! 最後はロードの番」


「頼む」


折れた右足と左脇腹を治し、エナを三割ほど回復させた。


「ちょっとだけエナ残しとくね」


適格な対応にロードは笑みを浮かべた。


「一日で随分と見違えるようになったな」


「こっちはこっちで大変だったんだよー!

城から落ちたり、鳥ロボと戦ったり、馬ロボやら、牛ロボやら。

挙句、橋から落ちて、鬼やらと――――」


朔桜が語る最中、ロードは立ち上がり砂を払うと座り込んた朔桜を再び見る。


「お前が無事で良かった」


「ふぇ?」


突然のセリフに朔桜はすぐに反応できず、変な声が漏れる。


「停止したノアを起こして、ついでに飛び散ったカシャも集めてこなきゃな」


素直にお礼を言いい朔桜を褒めたのだ。

自信過剰で傍若無人のあの魔人ロード・フォン・ディオスが、だ。

ポカンと見つめる朔桜の視線に気が付き、ロードは怪訝な目で睨む。


「なんだ? 言いたい事があるなら言え」


「へへっ、ロードも無事で良かった!」


朔桜は満面の笑顔で真っ直ぐに答える。


「ふん」


ロードはすぐに背を向け、静かに飛び去って行った。

ノアとカシャを風の魔術で運搬。

ノアには雷の魔術で電気を与え、再起動。

飛び散ったカシャは風の魔術で身体を一か所に集める。


「こんなところだな」


ロードが状態を確認していると一人の女性が近づいて来た。


「ロード。それに朔桜とシンシアさんも聞いて。三人にはしっかりとここで謝らなければいけない。

私のせいで貴方たちの努力を無駄にしてしまった」


シャーロンが深々と頭を下げる。


「ロードが切り落とし、朔桜が奪った精霊王の腕を“喰者(フルーヅ)”バルスピーチに奪われて精霊王に《結合》されてしまったの。

シンシアがこれから戦う精霊王は、私のせいで元の力を取り戻してしまっている。

本当にごめんなさい!!」


「過ぎた話をいつまで言ってんだ」


「えっ?」


「そうですよ! シャーロンさんが取られたなら私が持ってても取られてましたし」


「心配しないでいいわ、シャーロン。私、勝つから」


「みんな……」


シンシアは修復された右手で手を伸ばす。

シャーロンがその手を取り、座り込んだシンシアを立ち上がらせ、二人は向かい合う。


「約束の握手よ」


「頑張って……」


シンシアは確かに頷く。


「朔桜に治してもらった両腕、もう落とさないように気をつけるわね」


「はい! ご無事で!」


「そして……ロード。役目、譲ってくれてありがとう」


「ふん、最初に言ったよな?

これは前哨戦(ぜんしょうせん)だ。本番は日食の日。とっとと終わらせてこい」


「そうね。じゃあ、一勝一敗の三戦目。行ってきます!」


大きな弓とたくさんの矢を携えたシンシアは

精霊王が待つ王城へと一人向かうのだった。

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