表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~  作者: 白鷺
四章 輪廻凱旋! 都市奪還作戦
183/396

六十三話 進化

街が消し飛んだ荒野で睨み合うキーフと生物。

事前に能力《加足(つぎあし)》を三回積んでいる。

だが、超強化された蹴りをぶち当てても生物はまるで無傷だ。


「加足!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


「加足!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


「加足!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


更に三回、加足を加えて足す。計二十回。

生物は殺意を剥き出し、あっという間にキーフとの距離を詰め

素手が腹部を貫こうと真っ直ぐに伸びる。

だが、その攻撃が届く前に、生物の両目にカウンターで伸びた(かかと)が打ち()えられた。

生物は後頭部から大地に叩き付けられ、地面が派手に砕けた。

雷がバチバチと弾け飛び、その衝撃の威力を物語る。

午の刻(サァジタリス)を吸収したキーフは生物の動きを辛うじて捉える事ができる。

そして足の速さは既にロード、ノア、シンシアに匹敵しており、

並の生命では視認する事のできない圧倒的な速度を手に入れていた。

だが、彼は己の力を完全に操れていない。

むしろ、能力に操られていると言っていい。

上半身の二十倍下半身の動きが優れているという事は、上下で動きの速度にズレが生じる。

脳の伝達処理を越えた働きで下半身が動く。

自分の足がまるで別の生き物のように自由に駆ける。

《加足》を使う度、自分の足が自分の足ではなくなる感覚に陥るのだ。

幸い、午の刻のエナを吸収し、エナ値が上がっているため、加足を追加した。

だが、既に限界。

もう身体が足に付いて行かない。

これ以上は上半身が持たない。

故に今ある全力を込め、生物に打ち込んだのだ。


「くたばったか?」


様子を窺うもその希望は儚く散った。

生物は何事もなかったかのように起き上がる。

口をもごもごと動かし、飲んでしまった砂を吐き出す。

その唾液には僅かばかりの血が混じっていた。


「まったくの無傷かと思ったが、そこそこ効いたみたいだな」


キーフはダメージがある事を知り安心する。

だが、不利な状況は変わっていない。

むしろその攻撃が状況を悪化させた。


「ア――――」


生物はより一層の殺意を持ちキーフに迫る。


「加足!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


限界を迎えた身体に無理を()いて更に能力を加え、素早く後方に下がった。

だが、横一線の手刀が鎖骨の上を掠めると、肉がパックリと裂けて血が流れる。


「っ! 加足!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! 加足!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


限界を越えた限界の限界。

咄嗟の判断で加足を足す。

並の速度の上半身が生物の攻撃をかわすには、下半身が生物の速度を遥かに上回って立ち回るしかない。

足の動きに振り回されながらもキーフは生物の連続の手刀をかわす。


「ア――――」


生物は攻撃が当たらない事に疑問を持つ。

その場で呆然と立ち尽くし、不思議そうな顔をした直後、口角を上げ笑みを浮かべた。

あまりの不気味さにキーフは危機を感じ、早急に生物から距離を離す。

生物は逃げる獲物に標的を絞り、本能に従うままキーフの後を追う。


「来やがった」


だが、生物は追いつけない。

速度ならキーフが僅かに勝っている。

そのまま自身を囮に、生物を数分間足止めできている。

そろそろキーフの足も限界。

足の血管が膨れ上がり、破裂寸前。

筋肉が張って()っている。もはや足の感覚が薄い状況だ。


「そろそろ引き時か」


後方からはもう人の気配はしない。恐らく、全員退避出来たのだろう。

キーフは残りの力で退く事を決意。生きて帰る正しい選択だ。

背後を見ると、生物は追ってきていなかった。

遠くでポツンと棒立ちしている。


「流石に諦めたか?」


疲れたのだろうか。諦めたのだろうか。

どちらにせよ、キーフにとっては足を休める事ができて有難い出来事。

油断はせず、いつでも走り出せる状態で様子を窺う。


「ア――――」


生物は叫びを上げ、背中を丸めて前かがみになる。

バキバキと骨が折れるような、鈍い音が鳴り響いた。

背中の肉を突き破り何かが出てくる。

長く伸びるのは、血に塗れた巨大な二枚の紺翼。


「なっ……!」


生物を覆うように大きく広がり、一扇ぎで空中に飛び上がった。

紺翼を羽ばたかせて血を弾き、荒々しい翼風が荒野の砂埃を撫でる。


「ア――――」


キーフに足で追いつけないと学習し理解した生物は


たった今、新たなる進化を遂げたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 出鱈目な敵ですな……
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ