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W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~  作者: 白鷺
四章 輪廻凱旋! 都市奪還作戦
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五十四話 脳の領域解放

突如、森の奥から現れた魔人メサ・イングレイザは、

あの“喰者(フルーヅ)”の一角 誘香粘竜 ストロベリアルを一瞬で消し去った。


「お前……今何を――――」


「早く吸収しないと魔力が飛んで行っちゃうよ」


手の内は教える気はないらしい。

だが、メサの能力は不死身のストロベリアルを一瞬で殺す力がある事は確かなようだ。


「ちっ」


癪ながらもストロベリアルのエナを吸収し、エナとエナ値を上げた。

これでギリギリ雷神を二回は呼べるだろう。


「よしよし。じゃあ、二つ目だね。カシャ、君はロードに力を貸してあげてくれ」


「分かったゾ! よろしく頼むゾ! ロード!」


「呼び捨てかよ」


「不満か? じゃあ、仮主? 仮雇い主?」


与えられた兵を使うのは好きじゃない。

特にこいつから渡された兵なんて怪しさしかない。

どう考えても寝首を搔く刺客だろ。


「カシャとか言ったな。俺がお前を正式に雇ってやる」


俺の発言に待ったを出したのはメサだった。


「それは困る。カシャは僕たちが雇い入れたんだ」


メサが俺とカシャの間に割って入るが、

その背後から顔を出す。


「私は金がある方に付くゾ!」


カシャは随分と乗り気なようだ。

流石、傭兵。忠義ではなく金額で動くとは

見どころがある。これなら付け入る隙はあるな。


「手付金の200000リル。そして、今日から一日一個の200000リル相当の金塊でどうだ?」


懐から以前ホノポ村で売りそびれた金塊を片手一杯に見せる。

シンシアから物、宿、馬車、傭兵などの相場は大体聞いている。

明らかに上限額を振り切っている超絶条件。

命を預ける額にしては上等だろう。

問題はメサがこれ以上の額で雇っている可能性だが……。


「乗ったゾ!」


即断即決。問題は無かったらしい。

メサが新たな条件を出して気が変わる前に先にブツを渡しておく。


「まずは現金と金塊一個だ」


袋に金塊を入れ、銭袋を投げ渡す。

カシャは金を取り出して一枚一枚数えると納得したように頷く。


「確かに」


「これで俺が正式な雇い主だ。馬車馬の如く使ってやるから覚悟しろ」


「戦場でもどこでもばっちこいだゾ!」


こうしてカシャは俺の傭兵となった。

メサはあっという間に手駒を取られ、溜息を衝くしかないらしい。


「まあいいか。どうせ餌のつもりだったし」


ボソッと呟いた言葉を俺は聞き逃さなかった。


「じゃあ、気を取り直して三つ目。これが一番喜んでもらえると思うよ」


メサは俺に小言を聞かれた事を察し、追及される前に話を進める。

まあいい。俺にはもう関係のない事だ。


「よく聞いてくれ。今から君の脳の領域を2%解放する。

これで君の力は2%増しだ! どうだ凄いだろ?」


「5%だ」


「え?」


聞き取れなかったのか、理解できなかったのか

メサはアホな顔をしている。


「5%解放しろ」


「いや、いきなり5%なんて、君、死ぬから。君を殺したら僕が殺されちゃうからさ、勘弁してよ」


ごちゃごちゃと文句を垂れる。


「いいからやれ」


「2%解放するだけでも頭が弾けて割れんばかりの痛みがあるゾ」


俺を止めようとカシャが話に割って入ってくる。


「その口調だと、お前もやったのか」


「ああ、強くなるためだと無理やり。そのおかげで随分と強くなったが」


自分の拳を握り力をアピールする。


「こいつが2%なら俺は5%だ」


「その謎の対抗意識はなんだい? ああ、そういえば君はカシャに負けてたね」


「負けてねぇ。逃げられただけだ。とにかく早くやれ。時間が無い。やらねぇならこの話は無しだ。

精霊王を手下にしてお前らと戦わせてやる」


ここで話が破談になっても俺にデメリットはない。

エナは回復し、カシャという便利な手駒が手に入った。

もう十分なメリットだ。

ここでメサと戦闘になってもカシャをぶつけて

俺がスネピハに行くには十分のエナがある。


「たくっ……分かった、分かったよ。5%解放すればいいんだろ?」


メサは俺の前に立ち、人差し指を俺の額に向けて真っ直ぐ伸ばす。


「死んでも責任取らないからね」


「決めたんなら四の五の言わずに早くやれ」


メサの指から黒い蝶か現れ、俺の額に吸い込まれるように消えた。

途端、脳が膨張しているような、凝縮しているような激痛が襲う。


「ぐっ……」


あまりの痛みにふらつき地面に膝を付く。

目など開けていられない。目玉が飛び出しそうになる。血涙が溢れそうになる。

首の血管がドクドクと激しく脈打つ。呼吸すら忘れそうになる激痛。

地獄の数分を俺はなんとか耐え抜いた。

まだ頭部に違和感があるが、身体変化があった。

指を動かすと今までよりも数コンマ早く動く。

脳の伝達速度が上がっているのだろう。

身体も(いささ)か軽い。


「驚いた、死ななかったね」


メサは口では驚いたと言ったが、その表情と声色からは驚いている様子が一切ない。


「これで解放は成功だ。約束通り、精霊王を始末してきれくれ」


「あぁ、蒼雷!」


素早さの増した蒼い雷がメサを襲うも、涼しい表情でかわされた。

確かに魔術の威力も速度も増している。

脳の領域解放ってのもあながち嘘じゃないみたいだ。


「おいおい、約束が違うじゃないか」


「悪い。手が滑った」


「すごい手の滑り方だね」


「手癖が悪いんだ」


「なんにしても僕と遊んでいる暇は無いんじゃないかな。急がないとみんな死んじゃうよ」


メサは意味深に笑みを浮かべる。


「あいつらがそんな簡単に死ぬかよ」


「本当にそうかな? じゃあ少し僕と遊んでいくかい?」


メサ・イングレイザは身を斜めに逸らし右手を構える。

冷静且つヘラヘラしてはいるが、ストロベリアルを一瞬で倒す力。

それに不意打ちの蒼雷をかわせるほどの実力があるのは確かだ。

軽い(たわむ)れで済む相手ではないだろう。


「俺もそこまで暇じゃないんだ」


「ああそうかい。まあいいや、じゃ、頼んだよ。

君がきっちりと精霊王を殺して吸収する事、いいね?」


メサは構えを解くと手を振る。


「ああ。行くぞ、カシャ」


話半分に聞き流し、風壁―球でカシャを包んで、飛翔で移動を始める。


「これからよろしく頼むゾ! ロード」


「呼び捨てかよ」


「じゃあなんと呼べばいい?」


「なんでもいい」


「じゃあロードで」


「結局呼び捨てかよ」


地上のメサを見ると笑顔で手を振っている。

あいつはどこか得体が知れない。

ここで仕留めておきたかったが、奴もまだ手の内を隠しているだろう。

あの場で戦っても無駄に時間が掛かるだけだ。今回は見逃しておいてやる。

俺は雑念を払拭して今やるべき事に意識を向ける。

そして、全力でスネピハへ向けてカッ飛ばした。

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