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W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~  作者: 白鷺
四章 輪廻凱旋! 都市奪還作戦
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五十二話 貴橋合流

二区と三区を繋ぐ貴橋(ききょう)前。

精天機獣(せいてんきじゅう)午の刻(サァジタリス)の本体を倒したキーフ、キリエ、イツツは

腰を下ろし休息を取っていた。

レオはキリエの膝の上に頭を載せて

むず痒そうに横になっている。


「おーい!」


レオに助けられた衛兵が先頭を駆けてレオたちに増援の合図を送る。

その後ろには数名の衛兵と朔桜、シンシア、カシャ、そして

負傷し背負われた三区衛兵長モルボの姿があった。


「みんな無事?」


駆けつけたシンシアは一同の様子を見渡す。

レオは右手と右腹部を負傷している。


「シンシアさん……俺はこんなですけど、命に別状はないですよ。

キーフが午の刻をぶっ倒してくれました!」


「キーフが?」


「ああ、多少無理をしちまったが」


キーフは立ち上がり、自分の足を叩く。

その動作でシンシアはなんとなく察しがついた。


「そう……。よく頑張ったわね。みんなが無事で本当に良かった。

こっちも“精天機獣”丑の刻(アバラン)に邪魔されて多少時間を喰ったから

間に合わないかと思った」


「そっちも精天機獣を倒したんすか!?」


「ええ、この人が、ね」


シンシアがカシャに視線を送る。


「どうも」


カシャは挨拶して手を挙げた。


「モルボさんっ!」


だが、レオが目に入ったのは負傷したモルボの姿。

カシャの奇妙な格好よりも先にそっちを気を取られた。

ボロボロの身体でモルボに近寄るレオを支えてキリエも一緒に動く。


「聞いた話だと、彼一人で肉塊三体相手にした後、丑の刻と戦ったみたい。生きていただけでも奇跡よ」


シンシアは衛兵から聞いた話を織り交ぜてレオに伝えた。


「無事、なんですか。。。?」


レオは真剣な眼差しで息を呑む。

朔桜も真剣な面持ちでレオに向き合う。


「私がポテさんから託されたエナを使って助けたからもう大丈夫。

でも、今エナがすっからかんで、レオ君の怪我をすぐに治せそうにない……」


「そうですか……師匠の……。師匠も喜んでると思いますっ! 自分のエナジードで一人の命が救えたって!

俺はこの通り死ぬような怪我じゃないんで気にしないでくださ―――いてててて!!」


レオは無理やり身体を動かすが、腹部の傷が疼き(うずくま)る。


「レオ無理しない。。!」


キリエはそんなレオを叱ると再び地面に寝かせた。

朔桜は彼の言葉に救われた。

自分の行動は間違いではなかったとポテの弟子から賛同をもらう事ができたからだ。


「よかった」


心の底から出た言葉。

自分の行動が、確かな自信に繋がった瞬間だった。


「お~~~い!」


シンシアたちが通って来た大通りの遥か遠くで大きな声が聞こえる。

一人以外誰もその正体を判明できていない。


「新手か?」


キーフが戦闘態勢に入るとシンシアが制す。


「大丈夫。向こうも全員無事みたいね」


シンシアの視線の先にはハッキリとノア、衛兵総長ザギバ、自警団長シュトロンの姿が見えていた。

精天機獣との激戦を生き残った面々が無事集い、ザギバは一同を見渡す。


「勢ぞろいだな。五区の市民を救出して本部まで送り届けたんだが、

あんたらと入れ違いになっちまったみたいだな」


あんたらとはシンシアたちの事だろう。


「誰から聞いたの?」


「あぁ、二区衛兵長サビーが教えてくれた」


「あーそういえば、本部にいたわね」


ザギバとシンシアが話しているところにノアが割り込む。


「聞いて、聞いて! ノアね、丑の刻ぶっ殺したよ!」


その言葉を聞いて多くの衛兵が湧き立つ。

だが、シンシアの表情は険しい。


「待って? 私達も丑の刻と戦ったわよ?」


「あーじゃあそっちのは複製体だよ。後残りは~午の刻の本体だけかな?」


「そいつは俺が倒した」


キーフが前に出て自身の増えたエナで証拠を示す。


「へぇー、やるねぇ。未のお姉さんも死んじゃったし、

スネピハの精天機獣は壊滅。残りは精霊王だけだね」


「あの羊も倒したのですか!」


「良かった! これで殺された親友たちも報われます! ざまあみろ! 化け物共め!」


ノアの言葉でより一層衛兵が湧き立ち、衛兵は蹂躙された鬱憤を口々に出していく。


「彼女の事を悪く言うな!」


シュトロンが鬼の形相で前に出て、大声を張り上げた。

その一喝で衛兵は戸惑いながらも静かになる。


「おい、シュトロン。こいつらは奴らの事情を知らねぇ。一方的にキレるのは違うだろ。

悪いな、こっちであった事を説明する。お前たちも今までの経緯を教えてくれ」


ザギバは五区での経緯を説明。

五区衛兵長ランデュネンを紹介。

市民を救出し、仲間になった未の刻から聞いた“精天機獣”の詳しい話を共有。

丑の刻の奇襲を受け、死んだ未の刻をシュトロンが吸収し、精天機獣に対応できる強さを手に入れ、

ノアが丑の刻の本体を倒した事告げる。


キーフは三区での経緯を説明。

三区で以前湖で遭遇した“喰者(フルーヅ)”バルスピーチの存在を確認。

弟子一同で挑み、レオが負傷を負ったがキーフが午の刻を倒し、ポテの仇は取った事を告げた。


シンシアも本部からの経緯を説明。

丑の刻と戦っていたモルボを救出し、朔桜がポテのエナを使いその命を救った。

金有場(カナリバ)”のカシャが仲間になり、丑の刻の複製体を倒した事を告げる。


「じゃあ残りは二区と一区の精霊、精霊獣の大軍勢と“喰者”バルスピーチ。そして王城でふんぞり返ってる精霊王アーガハイドってこったな」


ザギバが話をまとめると一同は頷く。


「みんなもうひと踏ん張りだ! もう少しで俺たちの平和が、都市が返ってくる!

死んだ家族、親友、同僚、そして王のためにも気合を入れるぞ!!」


ザギバの号令で一同は湧き立つ。

一区、二区を取り返せば、スネピハを奪還できる。

皆の表情に僅かに希望が見えてきている。

一夜にして落とされた都市を半日で半分奪還できたのだ。

死者も損害も多大だが、悲しむのは後。

まずは精霊王を討つのが最優先となる。


「随分と活気があるな!」


衛兵長と衛兵を見たカシャが隣に立ってた朔桜に不意に話しかける。


「そうですね!」


朔桜の口調は普段の穏やかな口調とは違い少し刺々しい。


「桜髪、私に怒っているのか?」


「当たり前ですっ! 初対面でトロそうはないでしょっ!」


頬を膨らませ怒りを露わにする。


「最初に言い出したのは私ではないゾ! 雇い主が言ったんだゾ!」


朔桜は先の戦闘で聞きそびれていた事をふと思い出す。


「雇い主ぃ? ……そういえば、貴方の雇い主って誰なんです?」


まだ少し言い方がツンツンしている。


「ああ、その話は途中だったな。すっかり忘れていたゾ!

私の雇い主は精霊王アーガハイドとあそこで戦っている」


カシャが指差した場所は緩やかな傾斜のついた坂の先。

貴橋を越え、二区を越え、王橋(おうきょう)を越えた一区の一番高い王城。


「私の新たな雇い主は、ロード・フォン・ディオスだゾ!」


「え。             えーーーーーーーーーーーーーーー!?!?」


再び、朔桜の大きな声がスネピハに響き渡った。


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