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W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~  作者: 白鷺
四章 輪廻凱旋! 都市奪還作戦
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四十七話 追い込まれた機獣

精霊王に選ばれた能力持ちの精霊獣ミノタウロス。

他の生物を圧倒し、好き放題暴れていた彼にとって

精霊人は生きているエナジードの塊でしかない。

そのはずだった。

結合され、丑の刻となった無双の牛は、惨めにも地面を這い(つくば)る。

これは生まれて初めての体験。

初めての屈辱だ。


「不覚。身動きが取れん……」


砕けんばかりに歯を鳴らし、怒りを露わにする。

精霊人を見下し、喰える遊び道具とすら思っていた丑の刻(アバラン)

シュトロンの鞭剣『才色兼備』に身を絡め捕られ、

ランデュネンの重力で動きを完全に封じられた。


「助かったぜ、ランデュネン」


「五区衛兵長生きてたのか……はっ! 衛兵総長!」


シュトロンの長く伸びた剣も、ランデュネンの能力《|重鎮の核》《グラビトン》で潰されていて、剣先ひとつも動かせない。


「今後二度と無い最大の好機だ! 丑の刻を倒すのは今しかない!」 


「おう!」


ザギバは背後の糧斧を地面から引き抜く。


「不快。精霊人などに……この我が負ける? あり得ぬ! あり得てはならぬ!! うごぉぉぉぉぉぉ!!!」


雄叫びを上げ、丑の刻は全力で重力に逆らい身体を起こす。

家数件分を背負って立っているようなものだ。


「バカなっ!あの重力で動けるのかよ!」


ザギバのそのあまりの迫力に一瞬腰が引けてしまった。


「底力。我の――――」


「じゃかあしい!!」


ランデュネンは一瞥。

重力を更に集中させ、超重力で再び地面に押し戻す。


「く……屈辱。屈辱ッ!」


「情けない。とっとと始末せい」


「ああ!」


丑の刻の横に立ち糧斧を振り上げた。

その刹那、立ち並んだ家屋を消し飛ばし、巨大な光の束が戦場に向かって放たれたのだ。


「は?」


一瞬で視界は白い光に埋め尽くされた。

地面は熱閃で溶け、深い窪みになっている。

ランデュネンが咄嗟に超重力を広重力帯(ワイドグラビティ)に戻し、

閃光を押し潰してなんとか難を逃れた。


「今、完全に死んだと思ったぜ」


「僕もだよ」


二人は青白い顔で薄ら笑いを浮かべる。

ランデュネンの能力に救われた形でその場の全員が命を拾った。


「また厄介な……」


うんざりした様子で愚痴を漏らすランデュネン。

ザギバは本腰を入れ斧を肩に担ぎ、シュトロンは腕で流れ出た汗を拭う。


「援護。有難し」


いつの間にか重力の呪縛から解き放たれた丑の刻は

遠くの建物の屋根で高らかに笑っている。


「野郎、仲間がいやがるのか」


「何度でも潰せばいいじゃが! こんな風に!」


丑の刻に狙いを定め、広重力帯を落とす。

しかし、潰れたのは家屋のみ。

丑の刻の姿はない。

見失ったと同時にランデュネン目の前に斧が振り下ろされる。


「余計な事を」


丑の刻のエナを吸い速度にも対応出来るザギバの『糧斧』が巨大な拳を受け止めた。

同時に全身をシュトロンの鞭剣『才色兼備』が雁字搦めに固める。

丑の刻は尻尾柔らかに使い、糸を解くように自在に動かす。


「ランデュネン! 重鎮の核を!」


ザギバの指示は少し遅かった。

丑の刻は身を引きピンと張った才色兼備を尾で叩いて

シュトロンのバランスを崩させた。


「くっ! まずい!」


緩んだ鞭剣から丑の刻は容易く抜け出した。

遠くで三人の顔を次々と見ていく。


「個体。禿げた大斧男。速度対応不足。得意。斧のエナジード吸収と斧の盾。近距離警戒。

個体。長髪の剣士。速度対応。得意。自在に伸びる剣も厄介。中距離警戒。

個体。長顔の重力の男。速度対応不足。得意。能力は重力と推測。遠距離警戒。

確認。どれも単体では相手にならぬ。だが、結託されると些か厄介。

思考。接近戦排除。遠距離戦不得手。戦法。……確定。」


丑の刻は静かに地に降り立つ。


冷静に。冷静に。


追い込まれた獣は限りない冷静さをみせていた。


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