表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~  作者: 白鷺
四章 輪廻凱旋! 都市奪還作戦
161/396

四十一話 覚醒の足

相棒(レオ)が上半身を消し飛ばしたにもかかわらず、午の刻は当然のように動く。

顔の無い機体は真っ直ぐにレオたちの位置を捉えていた。

紛れもない完全な化け物。

異常な殺気に満ちていやがる。


「来るぞ!!」


俺が忠告した瞬間、

呼吸する間も、瞬きする間もなく、

異質な白い塊がレオの右腹部を抉った。


「ぐあぁぁぁぁ!!!」


午の刻(サァジタリス)の視野は確かでないようで

レオは辛うじて即死は間逃れたが、おびただしい量の血が流れている。


「レオッ。。。!」


妹のキリエが近寄ろうとするが、レオがそれを手で制す。


「来るなぁ!! キリエ!!」


レオの忠告は間に合わない。

リアリングした午の刻は前足で《弾》を放つ。


「加足!!!!!!!!!!!」


俺は十一回目の加足を使用。

キリエとイツツを抱え、真上に跳んで攻撃を凌ぐ。


「キリエ! 足場を!!」


俺の指示に合わせ地の精霊術で足場を展開。

高低差を活かす事で広範囲に広がる《弾》の対策を取る。


「そこで待ってろ。レオを拾ってくるっ!」


一足でレオのもとに駆け出す。

足が空気のように軽い。周囲の景色が流れてゆくようだ。

俺の速さはもう普通の精霊人が出せる速度を超越していた。


「来るな、キーフ! 俺は囮だ……!」


「んなもんは知ってる! でも、助けなきゃ……死ぬだろッ!」


真っ直ぐレオに突っ込むと午の刻はそれを待っていたかのように

倒れて動けないレオに向かって《弾》を放つ。


「キリエ!! レオを突き上げろ!」


「アースウォール。。。!」


地面を底上げして石の柱がレオを押し上げた。

キリエも《弾》の攻略に慣れてきたらしい。

しかし、柱の根は爆ぜて崩壊。

崩れた柱からこぼれたレオは地面に真っ逆さま。

砕けた石柱の残骸を空中で足場にして、レオのもとまで駆け上る。

俺らが固まった好機の逃さず、午の刻が真下から追い打ちの《弾》を空中に放ってくる。


「加足!!!!!!!!!!!!」


俺の足は更にその速さを増す。

圧倒的な速度。足だけが時間の流れが違うかのような感覚。

未来を進んでいるかの足だ。

同時に精密な足さばきも可能となる。

細かな岩々を跳び、レオを雑に掴んだ。


「相棒……助かったぜ――――って」


「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉらっ!」


掴んですぐ遠心力を利用してキリエたちの方へ

レオを投げ跳ばす。


「後は俺に任せろッ!」


レオの目を見て伝えた後、十三回目の加足を使う。

その速さは既に音速の領域。

レオたちはもう俺の速度を目で追う事は出来ないだろう。

少ない足場を利用して地面に降り立つ。


「俊敏。精霊人デアリナガラソノ速サ。ナカナカノ素質」


「そりゃどうも」


「残念。我ニハ及バヌ」


午の刻が駆け出すと同時に俺も駆け出す。

さっきは奴の動きを全然捉えられなかったが、今は違う。


「驚愕。我ノ動キニ付イテクルダト!」


「正直、目だけでは追う事は出来ないが、お前と同じ速度で動けば対等だ」


「小癪。精霊人ノガキガ!」


感情に任せて放たれた攻撃を易々とかわす。


「お前のせいで精霊人の域を超えちまった。責任取ってもらうぜ!

加足!!!!!!!!!!!!!!!」


十四回目の加足。

一段階上がった速度は、午の刻の速度をも越えた。


「移動速度で驚くなよ? 蹴りはもっと早いぜッ!」


繰り出す瞬足の連撃。

午の刻はかわす事が出来ず、真横の家に吹っ飛んだ。

威力も速度も申し分ない。これなら十分“精天機獣(せいてんきじゅう)”と戦える。

だが、上半身は悲鳴をあげてやがる。

足の速度に身体が付いてきていない。

体感がイカれてくる。まだまだ修行不足だったらしい。

そういえば、師匠が言ってたな。


「もっと力を抜け……。そんなんでは見えるモノも見えず、守れるモノも守れぬ……。

自身の足を鍛え上げ、自身の能力を扱えるように一歩ずつ成長するんじゃ……」


二三歩飛ばしで加足を使っちまったが、自分が守りたいモノは守れた。それに悔いはねぇ。


「否定。コノ午ノ刻ヨリモ早イナド……認メン!」


「言ってろ!」


俺は午の刻のボディに無数の蹴りを叩き込む。

白い機体は固すぎて俺の蹴りじゃ壊せないが、一部の身体は生身らしい。

効いてるって足ごたえを確かに感じた。

ベコベコに凹んだ身体からは赤い血が流れる。

身体の見える位置に宝石らしきモノはない。

恐らく、宝石は身体の中。

見えないなら虱潰しに蹴り入れてけばいいだけの話だ。


「うらうらぁぁぁぁぁぁl!!!!」


四方八方からの蹴りは午の刻に反撃の隙を与えねぇ。

蹄の先だけに気をつければ、奴の《弾》を食らう事はねぇ。

蹴り進め、下から腹を蹴り上げた時、午の刻は《弾》を放ち、身体を上に跳ばした。

その時、違和感を感じた。

腹下は攻撃されたくないような、無理やり蹴り上げて逃げたような違和感。

なるほど。


「宝石はその腹の下だな!」


「……明察。ダガ、貴様ノ動キハモウ覚エタ!」


案外ちょっとした違和感ってもんは当たるもんだな。

奴が馬鹿正直に白状してくれて狙いはもう一点に決まった。腹の下だ。

腹下にある宝石を狙えば、師匠の死の元凶、精天機獣を俺の足で討てる。


「言ってろ。さぁそろそろ終わりにすんぞ。

覚悟を決めろよ、馬鹿野郎!」 


「殲滅。最初二消エヨ瞬足ノ精霊人」


俺は午の刻と最後の会話を交わした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] そんなに速くして大丈夫か……?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ