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W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~  作者: 白鷺
四章 輪廻凱旋! 都市奪還作戦
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三十四話 重鎮の核

外では既に一人の男が戦っていた。

五区衛兵長ランデュネン。

臆する事なく、彼はたった一人で十数体のオーガを相手にしていた。

だが、彼は全くの無傷。苦戦していたようには見えない。

どこに潜んでいたのか二十を超えるオーガがぞろぞろと湧き出して来る。


「しつこいんじゃが!!」


ランデュネンは両手をオーガに向け、手を上下に合わせた途端、

上から超重力がかかりオーガの群れを押し潰す。

オーガは身一つまともに動かせないどころか、どんどんと地面に沈み、

バキバキと骨が砕ける鈍い音が聞こえてくる。


「どうじゃ、わしの《重鎮の核(グラビトン)》の味は!!」


《重鎮の核》。

肉眼で視認できる場所に超重力を上から下に落とす重力操作攻撃。

対象地点から近いほど強い重力は強くなり、遠いほど弱くなる。

瞬きするとその効果は切れ、連続使用は出来ず、再度発動時には僅かのラグが生まれてしまうランデュネンの能力だ。

ランデュネンは誇らしげに笑うが聞いているモノはもういない。

あの一撃で二十を超えるオーガの群れは一匹残らずぺしゃんこに潰れ、エナとなり霧散。

能力を使った一帯は全てが押し潰され、凹凸の無い真っ平な平地と化していた。


「たわいないじゃが」


オーガの処理が終わり地下に戻ろうとした時、街の奥から大きな影が伸びた。

巨大な何かが地面を這いずる轟音が響く。

青塔のもとへと真っ直ぐ歩み寄ってきているのが分かる。

ゆっくりと姿を現したのは、湖でノアの分身を消し飛ばし、町を消失させたあの肉塊。

だが、以前の個体よりも歪な形。折れた足が飾り程度にくっついていて筋肉の動きだけで前進している。


「なんぞえらいのが出てきたのぉ」


ランデュネンは肉塊を見ても怯む事も無く、

自分の能力を最大限の威力を発揮するためギリギリまで近づける。

そして、冷静に向き合って両手を重ねた。


広重力帯(ワイドグラビティ)!!」


次の瞬間、高さ五メートルほどの肉塊は一メートルほどに平たく潰れた。

しかし、動きは止まらない。水が流れるかの様に少しずつ進んでいる。染み出ている。


「ほう、まだ死なんのかい。なら、これならどうじゃ!」


手を一度離し、両手の人差し指と中指を突き出し上下で指を差し込む。


狭重力帯(スクイズグラビティ)


指と指の骨がぶつかり合い骨の音が鳴ると同時に

肉塊の中心部分だけがくり抜かれた。

正確には中心部分だけがより深く沈み込んだのだ。


「まだじゃがぁ!」


肉塊に無数の穴が開いてゆく。

広重力帯は広範囲に重力を落とすが、

狭重力帯はランデュネンが狙いを絞った部分に集中させて重力を落とす事ができる。

最大三十センチと範囲は狭いが、その威力は絶大。

あの肉塊を一瞬にしてハチの巣に変えた。終いには跡形も無く押し潰しエナへと還した。


「たわいない」


涼しい顔でエナを吸収するランデュネンを見て

遅れて出てきたノア、ザギバ、シュトロンは唖然とする。


「へぇー……そこそこやるね」


ノアがボソッと呟く。


「終わった頃に出てきおってからに。もう終いじゃが。このままとっとと消えんかい」


シッシと手を払った。

一息ついたと思いきや空から何かが降って来る。

いち早く気づいたのはノア。

誰よりも眼が良いノアなら遠くからでもその正体が分かる。

皆に警告するよりも先に、目にも留まらぬ速さで飛び出して落下物の迎撃に出た。

人と羊のような見た目だが、異様な白い機械の身体構造。

その特徴は間違いなく、あの精天機獣だ。


蜂羽切(ハバキリ)!」


鋭く変化させた雨の羽衣で先制で攻撃を計る。

身体を挟んで真っ二つに断ち切ろうとするが、

突如、全身が白い綿によって包まれ、衝撃を吸収。

綿の強度はノアの雨の羽衣ですら断ち切れないほど。

硬いのではなく、まるで力が吸われているかように変化がない。挟み込む負荷すらもかからない。

ノアは身を翻し、一度退いて着地。その後、精天機獣も遅れて着地する。

綿が縮むとその正体が分かる。

さっきの綿はこの精天機獣の長い髪の毛。

今までの精天機獣とは違い、妙に女性を感じる。

所々歪ではあるが、精霊獣よりも人型に近く、華奢で柔らかみがある。

胸もあり、腰の部分は激しく損傷しており、たくさんの罅が入っていた。

髪はくるくるのふわふわ。

クリーム色の長髪。膝裏まで長く伸びている。

黄土色の巻き角と目。

手足の先には大きな黒い爪。

そして胸元には白いひし形の宝石が埋め込まれている。


「レディあれは……まさか!」


「うん、間違いなく精天機獣。気をつけてね。

あの綿、鋼より全然硬い。少し下がってた方がいいよ」


ノアの忠告を無視して一人の男が前に出る。


「ちょっ……おじさん話聞いてた?」


「あいつぁ王城で少し借りがある」


前に出たのはスネピハ衛兵総長ザギバ。

王城で動けないザギバを片手で放り投げた精天機獣。それがあの機体だ。


「二人で闘う。それでいいだろ」


「はぁ……足手纏いにならないでよ?」


ノアとザギバは同時に飛び出したが、広範囲に広がる重力が二人を地面に押し潰す。


「この……力!」


「カッ……チーン……殺す。あのジジイィ!」


二人は一瞬で誰の仕業か理解する。


「そこで()(つくば)って見とれ」


二人の足を止めたのは


両手を合わせ、味方に重力攻撃を仕掛ける


五区衛兵長ランデュネンの姿だった。


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