表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~  作者: 白鷺
四章 輪廻凱旋! 都市奪還作戦
152/395

三十三話 一時休息

五区の生存者を青塔の地下シェルターで(かくま)

一人で統率していた五区衛兵長ランデュネンとの間に溝が生まれてしまった。

詳しい状況も聞けないまま、彼は地上へと去って行ってしまった。


「衛兵総長! 都民の情報集め終わりました!

有益そうな話は上の方に、あまり関係がなさそうな話は下の方にまとめてあります!」


三枚にまとめられた紙を衛兵から受け取ったザギバは労いの言葉かける。


「おう! ご苦労! お前たちも今は休んでおけ。話し合いが終わったら声を掛ける」


「はいっ!」


良い返事をしてザギバの命令を伝えに衛兵は駆けて行った。


「よくできた兵たちだね」


シュトロンが褒めるとザギバは嬉しそうに笑う。


「当たり前だ。俺の部下たちだぞ!」


受け取った紙をノアとシュトロンにも渡し、

三人で地べたに座り込んで集まった情報に目を通してゆく。

今となっては衛兵たちが都民から集めた情報だけが今の情報源だ。


「ここの見た事もないオーガってノアが瞬殺した奴の事かなぁ?」


「ブラッドオーガなんてそうそう出るようなモノでもないし、恐らくそうだろうね。

僕の方にも同じような話が多いかな。衛兵総長は?」


「俺はここの奇妙な青牛の精霊獣ってのは気になるな」


ノアにはその正体に心当たりがあった。

それはスネピハへ向かう道中、精霊王アーガハイドとばったり出くわし、全員で戦った時の事。

シンシアの放った絶対封印に捕らえられたアーガハイドの一声で上空から雄叫びを上げ現れ、

強固な結界をいとも容易く拳で叩き割った存在。

機械的な白い機体とたくましい青い肉体が合わさった牛だ。


「あー、多分それ精天機獣だよ。精霊王と戦った時、それっぽいのノア見た事ある」


「本当か!?」


ザギバは膝に置いた手で体重を支え、身を乗り出してノアに迫る。

ノアは引き気味に身体を後ろに傾けた。


「近い」


「おお、すまん」


ザギバは申し訳なさそうに座り直す。

ノアは溜息をつき、何も無いコンクリートの天井を見つめて人工宝具の完璧で確かな記憶を遡る。


「えっとね、かなり力が強かった。単純な物理なら今まで見た生物の最上位クラスかも。

名前はねー、えっと……精霊王はなんて呼んでたっけ……。

うーん、興味なくて忘れちゃったなぁ。アなんちゃらって名前だったかな」


物事を完全記憶できるノアの脳だが、ノアが興味のない事は記憶されないらしい。

容量の問題ではなく、これは本人の問題だ。


「この際名前はどうでもいいさ。問題はブラッドオーガを一瞬で倒せるほど強いレディが、

物理で最上位と判断したのが問題だ」


「おいおい……この世界にはどれだけ化け物がいんだよ」


ノア以上の物理攻撃を持つという事の意味を知り二人は意気消沈。


「大丈夫、大丈夫。ノアが倒してあげるからさ~」


対照的にノアは能天気なほど元気だ。


「そんなヤバいのがこの五区にいるのなら、最初に立ち回りを考えねぇとな」


「そうだね。具体的にどうする? 先に脅威を排除するかい? それとも都民の避難を優先するかい?」


腕を組み呻るザギバ。


「ここから四区まで一時間弱。この人数を連れて歩くにはあまりにも危険で遠い」


「じゃあ、五区の脅威を排除って事でいいのかな?」


「俺的にはそれが最善だと思うが、お前らはどうだ?」


「そうだね、僕もそれに賛成だ」


「ノアもいいよ」


「じゃあ、ランデュネンにもこの事を伝えねぇとな」


「ついさっきあんな事があったっていうのに。衛兵総長、貴方は――――」


シュトロンの言葉を途中で遮る。


「ランデュネンは根は悪い奴じゃねぇんだ。ただ、誰よりも王に対する忠義が厚い奴なんだよ。もしかしたら、衛兵総長の俺よりもな。

だが、それゆえに周りが見えない。力はあるのにそれを万人のために使えねぇんだ。

だから王はランデュネンではなく、俺を皆を従え、王を守る衛兵総長に決めた。

奴は衛兵総長に選ばれた俺が王を守れないでおめおめ生き延びているのに苛立ちを抑えられなかったんだろうよ」


ザギバは苛立っていた。

それはシュトロンでも、ランデュネンに対してでもない。

自分に対してだ。


「よし、そうと決まれば行くぞ」


「今すぐ向かうのかい!?」


「善は急げだ!」


そう言ってザギバは立ち上がるが、一人の衛兵がそれを制した。


「衛兵総長! お待ちくださいっ!」


「なんだ? 緊急か?」


「いえ、えっと……お三方、朝から戦い詰めではありませんか?」


「ああ……そうえばそうだな」


「一、衛兵如きが差し出がましいのですが……えっと……少し休んではいかがでしょうか?」


「いや、そんな時間はない」


そう言った瞬間だった。ザギバの足元が縺れ、地面に膝を付く。


「衛兵総長!」


心配し駆け寄ってきた衛兵を手で制す。


「大丈夫だ。問題ない……」


立ち上がろうとするザギバの前に立ったのはノアだった。


「少し休も」


「バカを言うな! 俺達に休んでいる時間なんて……」


「コケて膝を付いているおじさんに言われてもねぇ……。

そんな身体で万全に戦えるならいいけど。足でまといはゴメンだよ?」


ザギバはバツが悪そうに歯を強く噛み締める。


「衛兵総長がそんなんじゃ、他の衛兵にも示しがつかないよ。

レディの言う通り今は少し休もう」


シュトロンもザギバの身を案じ、休息に賛成。


ザギバは渋々首を縦に振り暫しの休息を取る事になった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ