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W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~  作者: 白鷺
四章 輪廻凱旋! 都市奪還作戦
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十八話 起床王子と甘い果実

同刻、精霊王アーガハイドに足をバッキリ折られ、出血多量で気を失っていたロード。

鍛錬場のベッドで目覚めた後、ヒシメから一連の話を聞き終わっていた。

まず初めに頭を抱え、深々とため息をつく。


「あのバカ人間……まーた捕まったのかよ。

宝具なんて奪って人間界に置いて来れば良かった。

本当にどうしようもない足手まといだな」


朔桜の言っていた意志の疎通とは真逆の反応。

それどころか散々けなされていたのだった。


「本当に世話のかかる奴だ」


文句を言いつつも、指をパキパキと鳴らし凝り固まった肩を回す。

朔桜の宝具で出血は止まっていたが、骨はまだ折れたまま、歩けるレベルではない。

動かす度に、脳に響くような激しい痛みが走る。

だが、ロードは無理にベッドから立ち上がった。


「まだ安静にしておきなさい。その足では歩く事は出来ないわ」


ヒシメは一言忠告するも、ロードは忠告を無視して飛翔で飛び上がり庭へと出た。


「やれやれ……」


呆れつつも、その後を追う。

ロードは鍛錬場の庭に降り立つ。

目の前には派手に壊れた大岩がある。

これは数日前、レオが修行で壊したものだ。

分厚く巨大な大岩を拳一つで粉砕した跡地。

その岩の前に片足で降り立ち、地の魔術を唱える。


「ストーンアーマー」


砕け散った周囲の砕石が折られた右足に密に集積。

隙間なく揃った即席のギプスを作り出し、足をしっかりと固定した。

出来を確かめるようつま先で地面を数回突き、庭を半周歩く。


「御主人様、大丈夫ですか? 痛くないですか?」


いつの間にかヒシメの隣に現れたリクーナはソワソワしながらその様子を窺う。


「まあ、多少の痛みはあるが、即席としちゃ上出来だ。後はあいつに治させるから問題ない」


ロードは早々と飛翔で飛び上がる。

まだ本調子ではないが、最低限の調整だけを済ます。


「もう行くのですか?」


「ああ、あのくそ野郎に借りは返さねえとな。留守の間、そいつを頼む」


「ええ、それは構いませんが、スネピハの場所はご存じなのですか?」


「こっちにデカいエナを複数感じる。どうせそこだろ?」


ロードが指差す先は水都市スネピハの方向で違いない。


「結構。では、健闘を祈ります」


「御主人様! 御無事でっ!」


二人に見送られたロードは、一迅の風とともにあっという間に飛び去った。


「相当彼女の事が心配なのでしょうね」


「御主人様はとても慈悲深いお方ですから」


リクーナは柔らかく微笑む。

傍から見た二人の目にもロードの焦りは透けて見えていた。


「皆さん、無事に戻って来ますよう祈りを」


握り合わせた手を額に当てる。

リクーナも見様見真似で一緒に祈った。

残された二人は戦場に出た全員の無事を祈るのだった。



ロードは鍛錬場とスネピハ間の森上空をすっ飛ばし、一直線で敵地に向かう。

天気は生憎(あいにく)の曇り空。

今にも雨が降りそうなほどに空は一面の灰色だ。

馬車で四時間の道のり。飛んで行けば、小一時間ほどで到着するだろう。

途中、しっかりと自身の魔力量を確認する。

八雷神の一柱 伏雷神ライトニングを呼んでから一日以上経ったが、

ロードの魔力は大して回復されてない。

足の自己修復に魔力が回されたのだろう。

残りの魔力は完全時の半分程度。八雷神は呼べて一回。

飛翔も常にエナを使い続けるため消費もばかにならない。

加えて、高速で動いている分、余計に消費してしまう。

まともに精霊王と殺り合うには一度、朔桜の回復が必須だ。


「魔術の使いどころは、慎重に選ばねぇとな」


そう決意した最中の事だった。

後方からなにか大きなエナの塊が急速に迫る。

いち早く察し、振り返って確認するも、その姿を目視することは出来ない。

精霊界の()せ返るような多くのエナのせいで、ハッキリとした座標は不明。

ロードは左右に大きく移動するも、その後ろを付いて来ている事は分かる。

狙いは間違いなくロードのようだ。

一刻も早くスネピハに向かいたいところだが、紛糾(ふんきゅう)としている都市におまけを連れていく訳にはいかない。

ロードはその場に留まり、早々に片づける選択した。

エナの量的に決して弱い相手ではない。

それに、ロードはこの向かい来るエナの正体に少々覚えがあった。


「このシチュエーション……どこかで……」


ふと思い出す。精霊界に来て最初の洗礼。

精霊界の絶対制空権を握る“精霊女王の忘れ形見”“喰者”(フルーヅ)の一角。

灰の空、分厚い雲の上から大きな黒影を落とし、雲を突き抜けて真っ赤内巨竜が姿を見せた。

一度の旋風のような羽ばたきで周囲の雲は霧散。

ここが空の中心であるかのように、赤竜の周りだけ大きく雲が開く。

以前、仕留め損なった相手を前に、ロードは血を(たぎ)らせる。


「久しぶりだな。以前の借りを返させてもらおうか」


双方空中で対峙する。


飛行した事を罰するかのように。


精霊王のところに向かうのを律するように。


荘重(そうちょう)と立ち塞がる。


赤く熟した不可思議な赤竜 誘香粘竜(ゆうかねんりゅう)ストロベリアルが再び、


ロードの前に飛来した。


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