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W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~  作者: 白鷺
四章 輪廻凱旋! 都市奪還作戦
118/394

一話 悪夢凱旋(表紙絵あり)

挿絵(By みてみん)

登場人物


●ロード・フォン・ディオス


種族:魔人と人のハーフ

属性:雷 風 火 水 地 樹(六適者)

能力:《無常の眼》《八雷神》

宝具:【爪隠】 

魔装:『黒鴉の衣』『黒帽子』『骨断』

魔導具:『黒鏡』


●並木 朔桜


種族:人

属性:雷

能力:なし

宝具:【雷電池】

魔導具:『黒鏡』


●ノア 


種族:人工宝具

属性:なし 

能力:《ノアの方舟》

人工宝具:【最高の親友】【変身】【鵜の目鷹の目】【敏感感覚】 【満腹】

博士の発明:『雨の羽衣』

魔導具:『黒鏡』


●シンシア 


種族:精霊人

属性:雷 風 火 水 地 樹(六適者) 

能力:不明

宝具:不明

精霊装備:『母天体』


●レオ


種族:精霊人

属性:火

能力:《反拳》

宝具:なし

精霊装備:『ガントレット』 


●キーフ


種族:精霊人

属性:雷

能力:なし

宝具:なし

精霊装備:『グリーブ』


●キリエ


種族:精霊人

属性:土

能力:なし

宝具:なし

精霊装備:『短杖』

精霊界での旅路で出会ったレオ、キーフ、キリエの師匠ポテに鍛えられた一同は

イシデムの中心に戻り、出店を回って不足した食料などを買い足すため市場に出向いていた。 


道すがら不意に思い出したかのように金髪碧眼のエルフであるシンシアが唐突に足を止める。


「そういえば、朔桜。貴女は精霊装備どうするの?」


「精霊装備?」


朔桜は聞いたことない単語に首を傾げる。


「私のこの『短杖(たんじょう)』。。。お兄ちゃんが足に付けた『グリーブ』。。。レオの手に付けた『ガントレット』が精霊装備です。。。契約精霊を使ってより強力な力を出す事ができます。。。」


キリエは杖を出すと軽く振って見せる。


「ちなみに、私はこの『母天体(マザァーム)』が精霊装備よ」


大きく白い骨のような弓を取り出す。

精霊装備といっても様々あるようだ。


「はぇ~~みんな持ってたんだね」


「朔桜もちゃんと精霊術を使えるようになったから、そろそろ手に入れてもいいわね。

少し見に行きましょう」


朔桜、シンシア、キリエの三人は精霊装備の専門店を回る。

変な眼鏡やダサい帽子など精霊装備の形は様々なようだ。

それを朔桜に付けて三人は楽しそうにわいわいと笑っていた。


「この世界の滅亡まで一か月も無いのに、奴らは随分と楽しそうだな」


その様子を遠目で見ていたロードは能天気さに呆れる。


「ここ一週間鍛錬詰めでしたから、あれぐらいの休息はいいんじゃないっすかね」


「まったく、吞気なもんだ」


ロードとレオが話していると、珍しくキーフが会話に入ってきた。


「お前たちには、本当に感謝している」


いつもロードに好ましくない態度を取ってるキーフが突然、感謝の気持ちを述べてきた。


「突然なんだ、気持ち悪い」


「キーフが素直にお礼言うなんて激レアっすよ」


互いを相棒と呼び合うレオでさえ激レアと言うのだから、相当レアみたいだ。


「単純な感謝だ。お前たちと旅してからというもの、妹は毎日楽しそうだ。

ここ数年、俺とレオとキリエ三人で旅していて、歳の近い女友達と話す機会もなかった。

あんなに楽しそうに笑う妹を俺は久しぶり見た」


「やめろ、むず(かゆ)い。あまり柄にもない事ばかり言ってると、死亡フラグが立つぞ」


「死亡フラグ? ってなんだ?」


「人間界の言葉で“この戦いが終わったら結婚する”とか

“この幸せがいつまでも続けばいい”とか幸せに感謝してると死ぬって事だ」


「縁起悪い言葉っすね……」


「だからこの話は終わりだ。感謝を述べるならあの黒い影をぶっ殺して

精霊神とやらの復活を止めた後、いくらでも聞いてやる」


「……そうだな」


ロードはそのまま二人に背を向けてその場を去り、わいわいと買い物する三人に行くぞと促す。

結局、気に入る精霊装備が無く、次の水都市スネピハの方が種類も品質も高いという事で

朔桜の精霊装備を選ぶのは見送る運びとなった。

シンシアとリクーナは預けていた馬三頭と馬車を厩舎から出し、

レオとキーフは荷物を積み込む一連の流れ。

全員ちゃんと旅慣れしてきた。良い傾向だ。

早々に出発の準備は完了。

一同は馬車に乗り込み、イシデムに別れを告げて次の目的地水都市スネピハ目指す。


「ノアちゃん、この魚鮎みたいで美味しい! ほら!」


「ホントだ!! 美味しい! キリちゃんも! この串焼き美味しいよ」


「もぐもぐ……ほんと、美味しい。。。。」


「ノアちゃん私にもちょぉ~だい! はむ!」


「あーーー!! 一番美味しそうな部位食べたぁ~~」


朔桜とノアとキリエはノアが大量に買って来た屋台の食べ物を両手に持ち

シェアしながら幸せそうに食べている。何とも気の抜けた光景。

だが、現地の食べ物を抵抗なく食べれるのは良い事だ。

保存の利く人間界の食べ物は万が一があってもいいように出来るだけ温存したい。


「ロード君も食べる?」


ノアは串焼きの根元、ほぼ炭と化した魚の尾の部分だけをロードの口前に差し出す。


「焦げたところだけを押し付けるな!」


「まあまあ!」


ノアが串を無理やり口に突き立て、ロードは反射的に口を開ける。


「おいっ! ん………美味いな……」


こうして一同は遠足気分で過ごした。


馬を走らせ、二時間。

都市の近くだけあって景観が良くなってきた。

草木も整い、道も小石も無いほどに整った綺麗な道だ。


「リクーナ、少し御者してみる?」


「は、はい!」


リクーナが隣に座ると馬の手綱を手渡す。

緊張した面持ちで手綱を握るが、リクーナが優秀なのか、馬が優秀なのか、目立った揺れはない。


「そうそう、上手いじゃない!」 


シンシアは嬉しそうにその腕を褒める。


「本当ですか?」


「馬の気持ちが分かっているかのようよ。御者の才能あるかもしれないわね」


リクーナは少し不安そう表情を曇らせたが、その後も褒められ続け、

終いには嬉しそうに照れていた。


それからまた二時間後。

突如、シンシアが声を上げた。


「みんな、停まるわよ。すぐに戦闘態勢を取って」


馬車が停まり、みんながどうしたのかと顔を出す。

屋根で寝ていたロードも目を覚ました。


「何事だ?」


「あれよ」


シンシアは指差すも、遠すぎてロードには見えない。


「お前ほど目が良くないんだ。言葉で言え、言葉で」


「オーガの壁よ。それも以前の比じゃない。

横一列に十層くらい連なっている。おそらく千体はいるわね」


「千体!?」


レオは驚きのあまり大声を出す。


「構わん、進め。

視認でき次第、俺が全て消し飛ばす」


「了解よ」


リクーナを馬車に戻し、シンシアが御者を引き継ぐ。

次第に退紅色のオーガの大群が見えてきた。

間近で見るとその量は圧巻だ。

そして馬車の進行先に異彩を放つ一人の精霊人が平然立っていた。


「っ!?」


シンシアは突如現れた男に驚き、馬車を急停止。

頭には黒い冠。

白い長髪が重力に逆らうかのように広がり

長い耳が目立つ。

柳色の分厚い着物の縁全てに金色のライン。

白いファーのようなものが肩から背中にかけて覆っている。

見るからに身分の高そうな精霊人だ。

普通の者ならオーガを見たら腰を抜かして動けないか、慌てて近くの町に逃げ込む。

しかし、この者はオーガの群れに背を向けて平然と立ち、ロードたちの馬車を見ていた。

オーガはその男を襲う気配すらない。


「何者だ。お前」


ロードが問いかけると精霊人は目を強く見開く。

黒い目に白い瞳。その無機質な眼光に一同は身を強張らせる。

長く大きい耳が一同の目を惹く。


「貴様、何者だ?」


男は質問を質問で返す。


「こっちが先に質問してんだ。答えろ」


「……無礼者め。我を誰と心得る」


男が指を動かし、指示をすると綺麗に並んでいた千のオーガが動き出す。

前方のオーガが一斉に大きな棍棒を頭上高く振り上げロードへと振り下ろした。


「当たるかよそんな攻撃」


ロードは当然のように一瞬で身を引き、攻撃をかわす。


「オーガを操っている!? 嘘……まさか、そんな事……」


シンシアは一瞬で顔色を青ざめさせる。

その理由は単純。彼女は精霊、精霊獣を操れる能力を持つ者の事をよく知っていた。


「精霊を操る……まるで()()()()()アーガハイドじゃないかよ……」


レオがふと漏らした呟きに男が訂正を入れる。


「まるで、ではない。()()()()()()()()


男は一体のオーガに命令を送ると猪突猛進で馬車に向い走り出し

巨大な大木で作られた棍棒振り下ろした。

衝撃で辺りに土埃が舞う重い一撃。

しかし、それは軽々と突き出された拳で受け止められていた。


「軽いぜ。その一撃」


受け止めていたのはなんとレオ。

以前は三人でギリギリ倒せていたオーガの渾身の一撃を、軽々と受け止めるまでに成長していた。


「次は俺の番だ!」


棍棒の衝撃を拳にのせ一気に放つ。


「反拳!」


放たれた拳の衝撃波は容易に太い棍棒を貫き、オーガの頭までも吹き飛ばした。


「どんなもんだ!」


息巻くレオを男は鼻で嘲笑う。


「この千年。精霊人の質は……()()()()()()()()


精霊人を見る目ではない。モノを見る目だ。


「っ!!!!」


シンシアが攻撃の前兆に気づいた時にはもう遅い。

男がゆっくりと伸ばした右の手から光が放たれた。

目映い光は大地を壊し、周囲を呑み込む。

ロードたちが居た緑豊かな森の道は、一瞬で消し飛び

辺り一帯は綺麗に整った荒野へと変わり果てた。

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