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W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~  作者: 白鷺
三章 多種多様精霊界巡会記
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五十一話 イシデムの師匠

翌朝、ロードたちは各々の課題を胸にキジュ村を出発。

旅の合間に皆特訓をしながら二日ほどでイシデムが見えてきた。


「この通り懐かしいな~五年ぶりか~」


レオが感慨深く辺りを見回す。


「そうだな。全然変わっていない」


「でも、あそこは前には無かった新しいお店だね。。。」


それに同調し、キーフキリエの兄妹も楽しそうに外を眺めていた。

イシデムの正門前にある厩舎に馬三頭と駅馬車を預け、町に入る。

家は木造、通りは石造り。目立つゴミも全然落ちていない。

綺麗に整備された素晴らしい町並みだ。

今まで通って来たどの村よりも人気が多く

都市スネピハ隣するだけあって物流も盛んで、市場も凄く活気がある。

朔桜とノアはフラフラといい匂いの煙を出す屋台にまんまと釣られて歩き出す。


「おっと、買い食いは宿を決めてからにしろ」


ロードは二人の首根っこを掴み引きずり戻す。


「あ~」


「う~」


二人はモノ欲しそうに屋台を眺めたままジタバタと足掻く。


「とりあえず師匠の家行きますか? 鍛錬場を経営してるので

部屋が空いていれば、一応あそこも寝泊まりできるかもですよ」


「鍛錬するならそっちの方が効率がいいな。まずはそこまで行こう」


レオたちの案内で一行は真っ直ぐ師匠の居る鍛錬場に到着。

イシデムの西側中心から大きく外れた郊外の森を進む。

近くに滝があるのか、大きな水音が聞こえてくる。

三十分ほど歩くと大きな門が見えてきた。

入り口を前にして朔桜が言葉を選ぶ。


「あ~なんていうか……(おもむき)があると言うか、すごく歴史を感じるね!」


「ボロいね」


「くそボロいな」


しかし、ノアとロードは思った感想をそのまま口にする。


「まあまあ、鍛錬にはいい場所なんですよ。

こんにちはー! 弟子のレオでーす。誰か居ますかー」


レオが大声で呼びかけると

内側から古い木の戸の(かんぬき)が外れる音がする。

そして、勢いよく戸が開かれた。


「レオさん!? それにキーフさんにキリエさんも!!」


出てきたのは紺の胴着を着た坊主の少年。

キリエよりも身長が低く、十代前半くらいの顔立ちで

つぶらな瞳と太い眉毛が特徴的だ。


「おお! イツツ! 元気してたか!」


三人の知り合いのようで

レオはイツツという少年の首を抱え、坊主頭を遠慮なく触る。


「この触り心地……懐かしいな」


「やめてくださいよ、レオさーん」


イツツはレオのホールドを素早く解き、一回転して身を整える。


「おっ! いい身のこなしになったな!」


「まあ僕もここで鍛錬している身ですので……。

それにしても皆さん揃って突然ですね……。師匠にご挨拶ですか?」


「ああ、そんなところだ。師匠は中に()られるか?」


キーフが中を覗き込むと

イツツは身を逸らし中へと手を向ける。


「はい、いらっしゃいますよ。立ち話もなんですので、どうぞ中にお入り下さい」


鍛錬場の中は外見で見るよりも綺麗に掃除されている。

塵一つない綺麗な長い廊下を進み、人間界の和室の様な客間に案内された。

イツツが師匠を呼びに行き、客間で腰掛けていると

二つの足音と共に戸が開く。

そこにはイツツとイツツの三分の一程の小さな老人がいた。

菅笠(すげかさ)を被り、何度も縫った後のあるボロボロの服を着ている。

途端にレオ、キーフ、キリエの三人は立ち上がり頭を下げた。


「お久しぶりです師匠!」


「お久しぶりです師匠!」


「お久しぶりです師匠。。。!」


三人はキッチリ揃えたかの様に同じタイミングで挨拶した。

朔桜は困惑しつつもお辞儀をする。


「えと……こんにちは」


シンシアは老人の姿を見ると、目を丸くして驚いた。


「レオたちの師匠って貴方だったの!?」


「なんだ、知り合いか?」


ロードが興味なさげに聞く。


「この人は……」


「よいよい、シンシア様。儂が名乗ろう。

儂はポテ。元七天衆(しちてんしゅう)の一人でここイシデムで鍛錬場を営んでおる」


「七天衆? ってなんだ?」


「精霊王に反乱する者たちを率いた七人の英雄よ」


「よしてくだされ。英雄などと恥ずかしい呼び名。本当の英雄は貴女様と勇者カウルじゃ。

辛うじて生き残った老いぼれは、こうやって後続の若者に生きる(すべ)を教える事しか出来ません」


小さい身体を更に縮めてシンシアに敬意を示す。


「貴方のやっている事も精霊界にとっては十分立派で素敵な行動よ」


「おい待て、精霊王の戦いは千二百年前の話だろ? という事は……」


一同はその意味を察する。

ポテは隠すために被っていた笠を取り自身の長い耳を見せた。


「そう、儂はエルフじゃよ。シンシア様がお耳をお隠しになられていないという事は

我々に理解ある方々とお見受けする」


「ええ、ここにいる全員エルフへの差別意識は無いわ。安心して」


「それはそれは。儂も気が楽じゃ」


ポテはホッと胸を撫で下ろす。


「まさか貴方が生きて鍛錬場をやっているなんて思ってもみなかったわ」


「シンシア様こそ、こんな辺鄙(へんぴ)な所に何をしにいらっしゃったのですか?」


「ああ、それが本題だったわね。用があるのは私じゃないの」


シンシアはチラッとロードを見ると意図を理解し、静かに前に出る。


「俺はロード・フォン・ディオス。

単刀直入に言おう。一週間で俺に体術を教えてくれ」


「ほう……。それは何故? 何を目的とする」


ポテは途端に計るような鋭い目つきでロードを睨む。


「自分より強い奴をぶっ倒すためだ」


「それは建前じゃな。本音を話せ」


一瞬で建前を見破られ、ロードは躊躇し少しの間黙る。

しかし、それでは話が進まないと舌打ちをした後、包み隠さず本音を曝け出した。


「俺の魔術は超一流でも己の体術が三流な事に気づいた。その弱点を少しでも埋めたい。

そして、俺の配下たちを二度と危険な目に合わせないため

傷つけさせないため少しでも強くなりたい。これでいいか?」


ロードは悔やんでいたのだ。

カシャに足止めされ、朔桜とノアを危険に晒した事を。

そんな事が二度と起きないように。

自身が強くなりたいと思っていた。


「私も! 私もロードの負担にならないくらい強くなりたいです!」


朔桜は手をピンと伸ばし大きな声で立ち上がる。


「ノアも! もう誰も心配させたくない!」


「うむ、良い答えじゃ。他の者も同様の気合で良いか?」


ポテの声のトーンが一段階下がった。

シンシア、レオ、キーフ、キリエは真剣な面持ちで頷く。


「分かった。皆、明日から一週間覚悟するように。

シンシア様も鍛錬中は皆と堂々に扱いますのでよろしくお願い致します」


「もちろんよ」


「では、明日に備えて今日はもう休むと良い。部屋はこちらで個別に用意する」


そう言い残しポテは静かにその場から去ったのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] スネピハ……なんて幸せそうな名前……いや、逆か?
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