四十七話 Q&A LOVE&KILL
ロードはレオとと共に隣の部屋に入る。
そこには紐でガチガチに縛られた色々な獣が繋ぎ合わせられたような男と
椅子の上で足を組んだキーフがいた。
「どうやら無事みたいだな」
「あんたもな」
「今こいつを喋れるようにしますね」
「ああ。それにしても、こんな奴にノアは負けたのか」
「俺らが捕まえた“金有場”の一人。名はヌエ。属性は雷。
能力は電気を奪う霧だそうだ。
そしてあんたの仲間の青髪の子を殺した仇だ。処遇はあんたたちに任せる」
「勝手にノアを殺すな。あいつは今、ベッドで鶏肉を齧ってるぞ」
「何言ってんだ。脈も止まって呼吸もしていなかったぞ!」
「本当だぜ……キーフ。ノアちゃん生き返って今、ベッドで鶏肉齧ってるんだ」
「……マジかよ……パねぇな」
キーフはレオから一部を聞き、あまりの常識外れの事態に呆れていた。
そんな中、ロードはヌエを遠目から観察する。
「お前の姿、人間界の怖い怖い妖怪図鑑とかいう本で見た事あるな。
たしか……夜の鳥と書いて鵺。雷獣だっけか。そりゃ、ノアじゃ相性最悪だな」
「何しに来た。殺すなら早く殺せ」
「バカ言うな。お前には色々と教えてもらわなくちゃならない」
「言うと思うか?」
「ああ、お前は言う。口の拘束を外されても自害しないって事は、死ぬ気は無いみたいだしな。
そうだ、言っておくが、お前は逃げるタイミングを逃した。この意味が分かるか?」
「ああ、分かるぜ、お前の尋常じゃないエナジードの量。
そんなものを見せられたら抵抗する気も失せた」
「利口な判断だ」
ロードは朔桜たちが居る部屋にヌエを連れて行き、
全員の前で話をさせる。
朔桜は既にシンシアの傷も完治させて万全で待機していた。
「マントの下こんなだったんだ?」
ノアは興味深そうにヌエの姿を観察する。
「バカな……。お前は殺したはず……!」
驚愕するヌエを風の魔術で壁に叩き付ける。
「雑談はいい。手早く聞く。手早く答えろ。
まず、お前らの雇い主は誰だ?」
「雇い主はメサ。メサ・イングレイザって魔人だ」
「私とロードが会った赤紫っぽい髪の人だね」
「メサの能力は?」
「さあ? 分からねぇ」
「奴に雇われた人数は?」
「僕の他に雇われてたのはカシャ、メティニ、オーヌの三人だ」
「カシャは俺が戦った変態ペンギンだな」
「メティニは私が倒した髪の長い女の子ね」
「オーヌってのはノアが殺した~」
「“金有場”の刺客を全員退けたのか!?」
「俺たちなら当然の結果だ。いいからお前は質問にだけ答えろ。
メサがお前らを雇った目的はなんだ?」
「障害の排除と聞き込みだよ」
「障害とは俺たちの事か。じゃあ、聞き込みとはなんだ?」
ヌエはにやりと笑う。
「精霊女王が生み出した六体の精霊の一体。
六の大賢者と万の賢者たちの命を使い
この世界に封印された風の精霊神 シ・セウア。
その封印の場所さ……」
その言葉を聞き、シンシアの顔色が急変する。
「お前達!!」
シンシアは怒りに身を任せ、ヌエの胸ぐらを掴んで壁に叩き付けた。
「へへへ。ちゃんとこの言葉の意味が分かる奴が居たか」
「その封印の場所を知ってどうする?」
「決まっているじゃないか。勿論、その封印を解くのさ!」
「不可能よ! アレを封じた神鍵は文字通り、神すら封じる鍵。
あれを解く事はできないわ!」
「それを僕に言われても。彼らには解く方法があるみたいだったけどね」
「そのシ・セウアは強いのか?」
「……強いとかのレベルじゃないわ。戦いにすらならない。
あのカウルですら手も足も出なかった相手よ。
アレが蘇れば間違いなくこの精霊界は滅びる」
あのシンシアが言い切った。
その意味の重さを理解した全員は息を呑む。
「俺とメサが会った時、あの黒い影が現れた。
そして異空間へと去る際、メサは封印の場所が分かったと言っていた。
この情報は確かっぽいな。その封印の場所は何処にある?」
「さあ? それは本当に知らないよ」
ヌエは首を傾げる。
「“戻りの森”よ。シ・セウアを封印した場所は戻りの森にあるわ」
封印の場所を毅然と答えたのは、シンシアだった。
「お前……どこまで……」
「全てよ。私は全てを知っているわ……」
過去を思い出し、シンシアは胸を抑え、俯く。
ヌエは笑みを浮かべ、追加の情報を出した。
「約一か月後の日食。その時、封印を解くって言ってたよ」
「お前、雇われのくせに随分と詳しいな」
「まあ、教えてもらったからね」
ヌエは誇らしく胸を張る。
「お前より強いカシャは何も聞かされていなかったぞ」
「それは知らないよ。彼らは僕を気に入ってたのかもね」
「じゃあ、あの影の事で知ってる事を話せ」
「知っている事ねぇ……何でも影で侵食出来るって事くらいかな」
「その能力で封印を解くつもりなのかしら?」
「さあ?」
その後も何個か質問したが、目ぼしい情報は出てこなかった。
「……こんなもんだな。他にこいつに聞きたい事がある奴は居るか?」
全員は首を横に振る。
「そうか。じゃあ、もう用済みだ」
「用済みって……ちょっ――――」
「消え果てろ、ヌエ」
ロードは風握―縮でヌエを一瞬で小さく凝縮し、握り潰す。
ヌエはエナとなり、周囲に散った。
その慈悲の欠片も無い一瞬の出来事を目の当たりにして
シンシアは目を大きく見開くと、険しい形相でロードに詰め寄る。
「なんで……なんで殺したの!? ちゃんと情報を言ってたじゃない!
おそらく、嘘は付いていなかったわ!」
「知っている」
感情を露わにして怒っているシンシアとは対照的に
ロードは酷く冷静に淡々とエナを吸収している。
「それに、生かしておけば、今後まだ聞ける情報もあったかもしれないのにっ!」
大きく張り上げたシンシアの声。
その後に誰も言葉を挿まず、静寂が訪れる。
ロードは今まで向けた事のない鋭い目でシンシアを睨む。
激しい怒りの眼。その眼を見てシンシアの身体は緊張する。
「このロード・フォン・ディオスの配下を酷く害された。それ以外に殺す理由が必要か?」
ロードの眼には迷いも後悔も一切窺えない。
初めから、ノアを害された時点でヌエを殺す事は確定していた。
怒りを抑え、情報のために最大限殺すのをただ我慢していただけの話。
「ロードくんは……本当に……素直じゃないっ……!」
その言葉を聞いて、意味を理解したノアは目に涙を浮かべて小さく微笑んだ。




