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W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~  作者: 白鷺
三章 多種多様精霊界巡会記
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四十六話  電池切れ

「あれ……?」


眠り姫が目を覚ます。

時は丁度、ロードがカシャを退けた後だ。


「起きたか、朔桜」


「私、何して…………そうだ。

あの赤っぽい髪の人の出した蝶々がおでこに当たって……それで……」


「見せて見ろ」


ロードは朔桜の頬を両手で掴み、自分に向かせる。


「ぶむぅ」


「見たところ外傷は無いな」


「いたたたたっ! 首折れちゃうよっ!」


朔桜がもがくとロードは手を放す。


「痛みはないか?」


「しいて言えば首が痛いよ」


「その蝶の影響の話だ。

以前は感じなかったが、お前から微かにエナの力を感じる」


「え。私から!?」


「メサの能力でお前もエナ持ちに目覚めたのかもな」


「じゃあ、私もロードたちみたいに術が使えるの?」


「おそらく」


それを聞いて、朔桜は目を輝かせる。

対照的にロードはため息をつき、続けて問う。


「お前自身、身体に違和感は無いか?」


「え? あ、うーん……違和感というか、なんか不思議なの。

私ね、色々な事を思い出した」


「思い出した?」


「うん。昔の記憶。私の小さい頃の記憶を」


「メサがそんな事言ってたな。宝具の結界と記憶の封印がどうたらって。

ショックを受けて記憶が呼び起こされたのか……?」


「そういうのとは違くて……なんていうか……こう……」


朔桜はぎこちない身振り手振りで説明しようとする。


「まあいい。とりあえず回復してくれ」


「ねえ!?」


「お前が起きたらもう勝手に使えないだろ」


「その口調だと寝てた時、勝手に使ったよねっ!?

胸元空いてるしっ! 変態っ!」


「こっちは本物の変態と戦って満身創痍(まんしんそうい)なんだ。早く頼む」


「まったくもう……」


小言を言いつつも、朔桜は宝具を使いロードを完治させる。


「さて、次の問題は他の奴らが生きてるかだ」


「何かあったの?」


「お前が(よだれ)を垂らして寝ている間、影の刺客と戦っていたんだ。

おそらく、他の奴らも戦っているかもしれない」


「大丈夫……だよね?」


「ああ、涎を垂らして寝てたというのは冗談だ」


「そっちじゃないよ!? みんなの方の心配だよ!」


「そっちか。生きてればいいな」


ロードは朔桜を抱え、飛翔で仲間を探す。

上空から見ても誰も見つける事ができない。

だが、遠くの畑と広場が荒れているのを見て

ロードは戦いがあったと確信する。


「集合は日暮れに宿だったよね」


「ああ、戻ってみるか」


時刻は昼過ぎ頃。

二人が宿に戻ると、宿の店先にレオが気を張って立っていた。


「二人とも……無事で良かったっす!!」


レオは安心すると笑顔で二人を迎える。


「当たり前だ」


「ロード、ボロボロだったよね!」


「だまれ。他の奴らも居るのか?」


「はい、お二人以外揃ってます」


「みんな……無事?」


「無事……とは言えないです。なので朔桜さん――――」


「分かったっ!」


朔桜はレオの言葉を聞く前に急いで宿の中に駆け出す。

その後を追って二人も宿に入る。


「ご主人様。御無事で」


「ロード……貴方も無事で良かったわ」


リクーナが深々と頭を下げ、ロードを迎える。

胸と左腕に包帯を巻いて布を羽織ったシンシアが

胸に手を当て安堵の表情を浮かべた。


「一応な。お前は、流石に無事そうだな」


「腕と背中に貰ったけど、命に別状はないわ。でも……」


シンシアの視線の先にはベッドで眠るノアの姿があった。

頭には包帯が巻かれており、寝息すらたてていない。

その傍で腹部に包帯を巻いたキリエは、その横でひたすらに泣きじゃくっていた。

朔桜はそんなキリエの怪我を寄り添うように静かに治している。


「……ノアが負けたのか?」


「一体は倒したみたいっす。でも、もう一体に……。俺が診た時にはもう……」


「私のせいです。。。私が弱いから。。。ノアちゃんが一人で戦って。。。」


ロードは速足でノアへと寄る。


「そこに居ると邪魔だ。朔桜、こいつをどかせ」


朔桜はロードの言う通りキリエに寄り添い、ベッドから優しく離す。

ロードはベッドの横に立つと勢いよくノアに掛けられた布団をめくる。

そして、その身体を診て深く息を漏らした。


「ロード……」


朔桜は最初の言葉を固唾を呑んで待つ。


「おい、いつまで寝てんだ。起きろ、ノア。

お前のせいで空気が重いだろ」


そのままノアの口に手を捻じ込み、大量の電気を流す。

暫くするとノアの指先が微かに動いた。


「っ。。。!」


何かを期待し、キリエがそれを食い入るように見つめ、見守る。

電気を流し終え、ロードが手を放すと

ノアの重く閉ざされた(まぶた)はゆっくりと開き、この世界を見据える。

むくりと起き上がり周囲の景色を窺う。


「あれぇ? ここどこ?」


鈴の様な声色が聞こえた途端、キリエはノアに飛び付いた。


「うわっ! キリちゃん? どしたの?」


その姿を不思議そうに見るノア。

ノアは死んだのではなく、電力を失い一時的なスリープ状態に陥っていたのだ。

給電すると復活するとノアを造ったDr.Jから聞いていたロードは

症状を診て、適切に復活させる事が出来た。


「ノア。お前、負けたらしいな」

 

「ロードくん? あーそうえば戦ってたんだっけ。

そっか、ノア負けちゃったんだね。

でも、キリちゃんが無事で良かった!」


「ノアちゃんのおかげだよ。。。」


「最終的に助けたのは俺らなんだけどね」


「しーっ。この空気で無粋な事を言わないの」


シンシアはレオに向かって人差し指を口の前に立てる。


「そういえば、お前の連れはどこだ?」


辺りを見回すも、キーフの姿がない。


「ああ、キーフは別室で捕虜(ほりょ)を見張ってます」


「捕虜?」


「はい! 俺ら捕まえたんすよ! “金有場(カナリバ)”の一人を!」


そう言ってレオは自慢げに胸を強く叩くのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] サブタイトル、格好いいw
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