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W×Ⅱorld gate ~ダブルワールドゲート~  作者: 白鷺
三章 多種多様精霊界巡会記
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三十七話 キジュ村

夜が明け、時は経ち、現在昼過ぎ。

日は傾き影は長く伸びている。

キジュ村があるのは、川外れの山の麓。

この付近の土は、良質で農作物が良く育つらしく、田畑が多く野菜の種類も豊富だ。

それに合わせ家畜の飼育も多く、良質な餌を食べた良い品質の家畜が育つ。


「随分とド田舎だな」


作物や家畜を載せた何台もの木製の荷台が幅の広い通路を行き交う。

人々は額に汗を浮かべ、のんびりと自分のペースで働いている。

時間の経過も遅く感じるようなのんびりとした田舎という印象の村。


「川外れの村はあまり人が住まわないからしょうがないわ」


「人より家畜の方が多いんじゃないか?」


「それはあるかもしれないわね」


ロードとシンシアが雑談をしていると進行方向に家屋が集まる明かりが見える。

長い時間の末、一行は無事キジュ村に到着したのだった。


「やっと着いたー! それにしても何事も無く村に着くなんて珍しいね!」


「おい、朔桜。そんなフラグみたいな事を言うな。まるでこれから起きるみたいだろうが」


「あっ……ごめん!」


ロードたちは早急に一等な宿屋を借り、この日は休む事にした。

みんなシネト村の事で精神と肉体が疲弊(ひへい)しきっていたらしく

その日の晩は皆、泥のように眠りに落ちた。


翌日の朝は、珍しくどんよりとした曇り空。

気温は涼しいというよりも、肌がヒリつくというのだろうか。

肌が張るような寒さに似た感覚を覚える。

その日、八人はロードと朔桜、ノアとキリエ

シンシアとリクーナ、レオとキーフで四班に別れ

影の聞き込みを行い、日暮れに宿で落ち合う事になった。


「俺と朔桜は村の入り口で聞き込みをする。行くぞ、朔桜」


「うん! みんな後でね!」


ロードは振り返る事無く速足で

朔桜は皆に大きく手を振って別れた。


「私たちは畑の方に行きましょうか」


シンシアはリクーナの手を握り、村外れの畑の方に向かう。


「じゃあ、私たちは広場の方に行こうか。。。」


「うん! キリちゃんこの村は来たあるの?」


「前に少しね。。。市場と広場くらいなら覚えてるよ。。。」


「そっか! じゃあ、キリちゃんに任せる!」


レオとキーフと別れ、数分後ノアとキリエは広場の方に到着した。

だが、広場にしては(いささか)か人が少なすぎる気がする。

周囲は少し薄暗く、白い霧も出てきていた。


「こんな時期に霧?」


村人も不思議そうに首を傾げる。

キジュ村の標高はそこまで高くない。

寒暖差を感じる気温でもなかった。

通りがかる人に聞き込みをしても、全く影の情報は無い。

どんどん広場に進んで行くと次第に不気味な違和感を覚える。

次第に霧が濃くなり、辺りを見回しても人が一人もいない。

小さい村だとしても市場の近くだ。

数人くらい行き交いしていてもおかしくないはず。


「ノアちゃん。。。何か変じゃない。。。?」


「ノアもそう思う。それに……」


ノアはスンスンと鼻を鳴らす。


「……血の臭いだ」


それに気づくと同時に、霧の奥から大柄の男と黒いローブを纏う者が音も無く現れる。

大柄の男は、下品に口を開くと唾液を広場のタイルに滴らせて突如、叫ぶ。


「ニクニクニクニクニク!!! ニク!

ニクニクニク! ニクニクニクニクニクニクニクゥ!!!」


ノアとキリエは異常な圧と身の毛もよだつほどの恐怖で身が固まる。


「ああ、情報はもう集まったし、いいよ。食べて」


ローブの者の言葉と同時に

ノアとキリエの目の前に巨大な口が広がった―――――――。

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