2.砂の国・マーレ
ルーネスタ王国から中東部に位置する国・マーレ。
規模はそんなに大きくはない。
国のはずれには砂丘があり、マーレの売りといえばそれぐらいのものだろう。
他の国に比べれば地味かもしれないが、ここに暮らす人々は何不自由なく暮らしている。
飢えている人間もいないし、争いごともない、穏やかな国だ。
一人の少年がいた。
少年の名前は、ノインと言う。
マーレにも魔法使いの家系がいくつかあり、ノインの家系もそれに該当する。
魔法、と言っても別段凄いものではないし、マーレにはルーネスタ王国より、魔法を専門に学ばせてくれる学院もないので、生まれながらにして持つ能力と言うほうが正しいのかもしれない。
彼の持つ魔法は〝転移魔法〟。
名の通り、自らが他の国に行ける、という魔法である。
普段使う事のない魔法だが、魔法を使える、というだけでも何かあった場合心強いものだ。
ただ、実際使うとなると、まだ簡単に扱う事が出来ない。
本当は両親もルーネスタ王国にあるフィーリア魔法学院に入学させたいと思っていたのだが、なにぶん金銭面的な余裕がなかったのだ。
決して優雅とも言えない暮らしであるし、それでも必ずしも貧しくはない。
本当はノインとしても学院に通いたかったが、家の事情も理解していたし、残念とは思いながら構わないと思っていた。
確かに魔法を学べば、自分の魔法も何かの役に立つのかもしれないと思ったが、自分の魔法が何に役立つのか、この頃はまだわからなかった。
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