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10-2

 今日の夕食のメニューは、オムライスだった。


「今日こそリベンジだ! 前回は惜しいって二人に言われたからな」


 ヴェルエはそう言って、グレイスと〝聖竜の石〟から人間の姿で出て来たレーヴェに向かって言った。

 今日は別添えでサラダがついている。

 ベビーリーフとレタス、ミニトマトが色どりを添えている。

 アドゥンのレシピ帳に、レモンソースドレッシングのレシピが載っていたので、それを作ってみたのだと言う。


「大丈夫。ちゃんと味見したから、今回は全体的に完璧だ! ……と思う」


 最後の言葉が少し尻ごみしているような気がしたのに、グレイスとレーヴェは苦笑した。

 そんなところはヴェルエらしい、と思って。

 エルダはエルダで、ヴェルエの料理を食べるのは初めてだ。

 確かに、常々グレイスから噂は聞いているから、どんなものなのかは興味はあった。

 楽しみ半分、不安半分、と言ったところだろうか、そんな気分だった。

 全員が席に着いて、自然にいただきますをする。

 オムライスは、卵に包まれているシンプルで家庭的なもの。


「今回はリベンジだからな! 前回はバターライスだったけど、今回はケチャップライスにしてみた!」


「……前回バターライスだったの?」


 エルダはそれを聞いて疑問を呈した。


「おう。そしたら、二人は何か足りないって言ったんだよな。マスターのレシピ帳見て作ったけど、書いてあったものはちゃんと入れたつもりだったんだけどな」


 不意にグレイスはその言葉に眉根を寄せた。


「ヴェルエ。お父さんのレシピ帳、ちょっと見せて」


「ん、あぁ。はい」


 ヴェルエがそう言って手渡すと、素早くオムライスのレシピのページに辿りつく。

 そして、グレイスは「あぁ」と納得したような声を出した。


「初歩的なミスだと踏んだんだけど。ヴェルエ、あの日、ご飯にコンソメ入れた?」


「コンソメ……?」


「うち、あったはずだよ。調味料は基本常備してあるし」


 そう言って、立ち上がったグレイスがキッチンにある調味料をまとめて置いてある引き戸を開けて、それを出す。


「ほら、ある」


「……足りなかった原因はそれだったのか……!」


「かもね。材料も大切だけど、お父さんのレシピ帳、工程とポイントも一応書いてあるから。……適当そうに見えて、案外細かいから、お父さん。――お父さん、は語弊かな。元々の料理の先生はお父さんよりお母さんだしね。はい。謎が解けたところで、食べよう。リベンジなんでしょ?」


「お、おう。……今の論破で完全に弱気になったけどな」


 苦笑いのヴェルエを促して、グレイスが着席して、再び食事を始める。

 ケチャップライスになったオムライスは、小さく切られたチキンに、玉ねぎのみじん切り、人参のみじん切りにグリンピース。


「うん、美味しい」


「おお! 本当か、グレイス!」


「うん。具材もちゃんと主張してるし、ケチャップライスもいい感じに仕上がってる」


「それに、このサラダのドレッシングも美味しいよね。さっぱりしてるから、バランスも取れてる」


 グレイスとレーヴェのお墨付きがついて、ぱあぁと表情が明るくなるヴェルエ。


「俺も美味しいと思う。最初聞いてた頃はどうなのかなって思ってたけど、凄い美味しいよ」


「マジか! エルダにもそう言ってもらえるなら、俺も少しは上達したな……」


 嬉しそうにガッツポーズを決めて見せるヴェルエ。

 ヴェルエに聞こえないように小声で、グレイスとエルダにレーヴェは言った。


「ヴェルエは単純だから」


 その言葉に、二人は苦笑した。

 確かにそうだな、そう思って。


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