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9-3

 夕食後に食べた、エルダの母親のミルクレープも三人で美味しく頂いた。

 エルダの店の人気商品でもあるし、何より何度か頂いた経歴もある。

 味は保証済みだし、グレイスも好きだったので、表情にはあまり出さなかったものの、内心嬉しかった。

 やがてグレイスは寝室に入って、そろそろ寝ようかと思った時。

 扉をノックする音が聞こえる。


「入るよ」


 そう言って入ってきたのは、レーヴェだった。


「何かあった?」


「グレイスと少し、話がしたくて」


 そう言って、二人で並んで、グレイスのベッドの縁に座る。

 床で座るのもどうかと思ったし、椅子はグレイスの勉強机の一脚しかない。

 ならば、と何も言わずにそうした。

 こうすることも、慣れている。


「話って、何?」


 明日は学院に登校する日だ。

 早めに話を終わらせよう、そう思ってすぐにグレイスが切りだした。


「うん。グレイスの事」


 レーヴェは問いかけた。


「本当はもう、決まってるんじゃないかって。グレイスの中で」


 その言葉が指す意味は、二人の告白の件だ。


「別にね、ヴェルエが今やってる事が早く終わらないかなとか、そういうのは考えてないよ。だけどね、もし決まっているんだとしたら、早く答えは出してあげた方がいいと僕は思うよ」


「……ねぇ、レーヴェ」


「うん?」


「今朝、お父さんの夢を見た」


「マスターの?」


「うん」


 グレイスは言葉を続ける。


「幼い私がいて、お父さんとお母さんのどこが好きなの? って聞いてた。そしたら、お父さんはお母さんの好きなところを自然に私に教えてくれた。まっすぐで、不器用で、甘え下手で、でもお父さん自身のフォローをするところ。そんなところが好きなんだって。これからもずっとお父さんはお母さんの事が好きだって。その話を聞いた私がどうして、って聞いたら、お父さんはずっと一緒にいたいから、だって」


 そして、グレイスにもそれがいつか訪れる、と。

 その話を聞いて、レーヴェはふと笑んで、グレイスに言った。


「グレイスが選ぶ事だけど、僕が見ていて、グレイスはもう既にその答えを見つけていると思うよ」


「え?」


「一緒にいたいから、って思える人が。それは、その人も同じ気持ちなんじゃないかな」


 そう言って、レーヴェは立ち上がる。


「寝る前に邪魔しちゃったね。おやすみ、グレイス」


「ううん。……なんだか、はっきりした気がする。今までもやもやしてたのが、晴れるみたいに」


「ならよかった。後はちゃんと、グレイスが気持ちを伝えてあげてね」


「うん。おやすみなさい」


「おやすみ」


 そう言って、レーヴェは部屋を出た。

 グレイスはその背を見送ってから、ベッドに入る。

 自分の答えは、知らない間に決まっていたのだと、そう感じて。


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