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一日の授業が終わり、学院から家に帰宅するために下校する。
グレイスとエルダの家の方向は同じで、一緒に下校するのもよくある光景だ。
なんとか補習を免れたエルダは心配そうに、グレイスに問いかける。
「授業中、大丈夫だったの? グレイス」
「……うん、平気。エルダもよかったね、補習」
「いや、ほんとこれは助かった。この埋め合わせは必ずするから。あ、そうだ」
そう言って、エルダは自分の鞄を漁り、「あった」と言って、布に包まれた箱状のものを取りだした。
「母さんから。クッキー詰め合わせ。よかったら食べて」
「……これがエルダの埋め合わせ?」
「違うよ。これは母さんに頼まれてたの。グレイスに持って行けって。これ、今度ギフトセットで売り出すんだって。だから色々入ってる。グレイスに食べて欲しいんだってさ。はいどうぞ」
エルダの母親は、お菓子作りが趣味、というより、本職なのだ。
なので、エルダの自宅は店舗も兼ねている。
今までもケーキや焼き菓子など、定期的に販売前の商品の味見をと持ってきてくれたりしている。
なので、味の方は保証済みだ。
エルダの両親もグレイスの事を知っているし、昔からの交流もあるので、何かとよくしてもらっている。
「……そっか。頂くね。ありがとう」
そう言って、エルダからクッキーの詰め合わせを受け取る。
少しずつ食べよう、そう思った。
「おう! じゃ、俺こっちだから。また明日!」
今日一番に元気になったように、エルダはそう言って、家へと向かっていく。
分かれ道は山手の手前だ。
エルダの背中を見送ってから、グレイスもまた、家へ戻る。
夕日が徐々に落ちて行く。
夜を告げるサインかのように。
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