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「惜しい」
今日の夕食はオムライスだった。
確かに、昨日よりはヴェルエの料理の腕は上達したように見えた。
中に入ったライスは、ケチャップのものではなく、バターライス。
全体的に味がうっすらぼやけている感覚のオムライスだった。
二人の感想はまさにそれだった。
「何か足りないんだよね……」
「でも、何が足りないかわからない」
二人がそう言いながらも、ヴェルエが頑張って作っているのを知っているから、全部平らげることにした。
「やっぱ味付けって難しいな……。どうやったら口に合うのかわかんねぇ」
ううーん、とヴェルエも困っている。
そんなに簡単に料理が上達するなら、シェフとか、料理人とかいらないと思う、とグレイスは思った。
「……あと、ヴェルエって、バランスとか考えないよね」
「あぁ、確かに」
グレイスが料理している時は、全体的にバランスを整えた食事だった。
ただ、今のヴェルエの料理はバランスがない。
主食しかない、と言う方が正しいのかもしれない。
グレイスの今日の昼食のお弁当しかり、だ。
昨夜のキャベツの千切りも、決してバランスが取れたものだった、とは言い難かった。
グレイスとレーヴェの批判がぐさりぐさりとヴェルエの心に刺さってはいたが、決してそれに折れるような事はなかった。
ただ、ほんの少しだけ、料理の才能がないのだろうか、とヴェルエは感じてしまった。
それでも自分の好きなグレイスのために、美味しいものを作れるように頑張ろう、すぐに頭を切り替えられるところが、ヴェルエの長所でもあったのかもしれない。
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