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「よし! 出来た!」
威勢よくヴェルエが言って、目の前に配膳されたハンバーグは、歪な形と焦げが目立つもの。
それにご飯がついてきた。
添えられたサラダは、なぜかキャベツの千切り。
「ヴェルエ。どうしてキャベツの千切りが添えられてるの?」
レーヴェは疑問に思ってすぐに問いかけた。
「なんで、って。色どりだよ、色どり。大事って言うじゃん? それに美味いし」
「……これは添えるメインを間違えてる気がするんだけどな……」
キャベツの千切りが美味しいのは否定しないが、ハンバーグと比較すればミスマッチだ。
まぁ、ヴェルエは料理初心者――今日から急に料理を作り始めたのだ、無理もない。
多少の違和感を覚えながらも、ヴェルエも食卓に着いたのを見て、グレイスが「いただきます」と食事を始める言葉を発する。
習って二人も「いただきます」と言って、食事が始まる。
ハンバーグソースはケチャップとウスターソースを混ぜたもの、これもレシピ帳に載っているソースだ。
グレイスとレーヴェはハンバーグに手をつけて、口に運ぶ。
様子を伺う様に、二人の感想を待つヴェルエ。
主に、グレイスの、だが。
「ソースは悪くないんじゃないかな」
まずはレーヴェ。
確かに、ソースに関しては普通で、今朝の教訓を生かしたか、味付けもちょうどいい。
だが、問題のハンバーグ本体、だ。
「硬いし、苦い」
そう発したのはグレイスだ。
予想していた通りだった、とグレイスとレーヴェは内心思った。
「……また失敗か……」
そう言って、しょげるヴェルエに、グレイスは言った。
「でも、味は美味しい」
そう言って、グレイスは食事を進める。
失敗なんて誰でもある事だ、対して咎める事もない。
最も、グレイス自身も最初はよく失敗して二人に指摘されていたのだ。
それでも、二人はグレイスの失敗した料理をちゃんと食べてくれた。
その立場が今はヴェルエなだけで、当たり前のようにちゃんと食べきる。
味だけは褒めてもらえて、ヴェルエは内心嬉しそうに、ほっとしたのは事実。
「……やっぱりキャベツの千切りだけはどうかな」
ぽつりとグレイスが呟いた言葉が、ヴェルエにぐさりと刺さったのは、言うまでもない。
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