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8-6

「よし! 出来た!」


 威勢よくヴェルエが言って、目の前に配膳されたハンバーグは、歪な形と焦げが目立つもの。

 それにご飯がついてきた。

 添えられたサラダは、なぜかキャベツの千切り。


「ヴェルエ。どうしてキャベツの千切りが添えられてるの?」


 レーヴェは疑問に思ってすぐに問いかけた。


「なんで、って。色どりだよ、色どり。大事って言うじゃん? それに美味いし」


「……これは添えるメインを間違えてる気がするんだけどな……」


 キャベツの千切りが美味しいのは否定しないが、ハンバーグと比較すればミスマッチだ。

 まぁ、ヴェルエは料理初心者――今日から急に料理を作り始めたのだ、無理もない。

 多少の違和感を覚えながらも、ヴェルエも食卓に着いたのを見て、グレイスが「いただきます」と食事を始める言葉を発する。

 習って二人も「いただきます」と言って、食事が始まる。

 ハンバーグソースはケチャップとウスターソースを混ぜたもの、これもレシピ帳に載っているソースだ。

 グレイスとレーヴェはハンバーグに手をつけて、口に運ぶ。

 様子を伺う様に、二人の感想を待つヴェルエ。

 主に、グレイスの、だが。


「ソースは悪くないんじゃないかな」


 まずはレーヴェ。

 確かに、ソースに関しては普通で、今朝の教訓を生かしたか、味付けもちょうどいい。

 だが、問題のハンバーグ本体、だ。


「硬いし、苦い」


 そう発したのはグレイスだ。

 予想していた通りだった、とグレイスとレーヴェは内心思った。


「……また失敗か……」


 そう言って、しょげるヴェルエに、グレイスは言った。


「でも、味は美味しい」


 そう言って、グレイスは食事を進める。

 失敗なんて誰でもある事だ、対して咎める事もない。

 最も、グレイス自身も最初はよく失敗して二人に指摘されていたのだ。

 それでも、二人はグレイスの失敗した料理をちゃんと食べてくれた。

 その立場が今はヴェルエなだけで、当たり前のようにちゃんと食べきる。

 味だけは褒めてもらえて、ヴェルエは内心嬉しそうに、ほっとしたのは事実。


「……やっぱりキャベツの千切りだけはどうかな」


 ぽつりとグレイスが呟いた言葉が、ヴェルエにぐさりと刺さったのは、言うまでもない。


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