8-5
授業の時はさすがに頭は切り替えたし、普段通り振る舞おうと決めて一日を乗り切ったグレイス。
家に帰って、すぐに自室に向かい、そのままベッドへダイブ。
「なんだか色々こんがらがってきた……」
朝から今まで、どう対応していいのか、さっぱりわからなかった。
普段と変わらず接してくるエルダに対して、やたら積極的になったヴェルエ。
あと、グレイス自身が二人に感じる魅力、のようなもの。
けれど、エルダは幼馴染、ヴェルエに至っては自分の聖竜だ。
――それに恋をしていいの?
今の感情が〝恋〟なのかは未だわかってはいないが、もしそうだとしたら、それは許される事なのだろうか。
そんな事を考えていると、身体は空腹を求めてくる。
人間とは、案外単純で正直な生き物だと思う。
「……晩ご飯の用意しなきゃ」
ずるずると身体を起こして、部屋を出る。
すると、今朝と同じような光景が、広がっていた。
「……ヴェルエ、晩ご飯なら私が作るよ?」
「いいって、グレイス。久々の登校で疲れたろ? 俺が作る」
座ってろ、と言うヴェルエの言葉を聞いて、仕方なくダイニングの椅子に座る。
今朝と同じような状況で、隣にレーヴェがいる。
全く、デジャヴだ。
「急に家事をするようになったヴェルエ見てると、ちょっと気持ち悪いね」
苦笑いを浮かべながら、レーヴェが言う。
グレイスは心の中で同感だと思う。
今までそんな事をしなかったヴェルエだ、違和感しかない。
「夕食はハンバーグだって」
隣でレーヴェがグレイスに言った。
レシピ帳を見ながら、悪戦苦闘しているヴェルエの後ろ姿を見ながら、内心不安になる。
「美味しくなるといいね」
「……本当にね」
二人で呟いて、調理の一部始終を見守ることにした。
いや、それしか出来なかった。
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