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8-4

 朝食を済ませ、いつも通り学院に行く。

 学院に顔を出すのは、およそ三週間ぶりでもある。


「グレイス、おはよう」


「……おはよう、エルダ」


 教室に入って、エルダに普段通り声をかけられる。

 ヴェルエの朝の出来事とは対照的に、エルダは昨日の事などなかったかのような普通の態度でグレイスに接してくる。


「母さんにグレイスが元気になったって言ったら、喜んでたよ」


「……エルダのお母さんにも迷惑かけてたんだね、私」


「母さんは心配性なだけだよ。それに、母さんのお菓子で元気になったって言ったらもう張り切るように、新作考えなきゃ、って。皆を元気に出来るお菓子を作らなきゃね、って言ってた。母さんの創作意欲にもより一層火が付いたみたいだよ」


 そう言って笑うエルダは、本当にいつものエルダ。

 グレイスは複雑な気分だった。

 ヴェルエは朝から滅多にしない料理をして、普段通りとは決して言えなかったのに、エルダは普段通り自分に接してくる。

 恐らく、ヴェルエは自分に振り向いてもらおうとアピールしての今朝の行動だったのだろう。

 しかし、エルダはそれを見せる素振りもない。


 ――なんかよくわからなくなってきた……。


 恋愛初心者のグレイスには、今の現状に頭の整理が追い付かない。


「グレイス?」


「な、何?」


 急にエルダに名前を呼ばれて、我に返る。


「凄い難しそうな顔してたけど……」


「……あ、いや、その、なんでもない……」


「ならいいけど……。あ、そうか。昨日のでまだ混乱してるのか」


 図星だった。

 グレイスは押し黙る。


「あー、えっと、別に答えは焦らないっていうか……。なんていうか、ゆっくり考えてくれていいよ。俺、いつまでも待ってるから」


 そう言って、エルダはグレイスに微笑んだ。

 どきり、とした。

 なぜかわからない。

 グレイスの心臓はばくばくと心拍数が上がっていく。


 ――レーヴェが言ってた魅力的に見える、ってこういう事?


 グレイスはさらに混乱していく。

 この混乱は、長期化しそうな、そんな予感がした。


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