8-2
グレイスは、よくわからなかった。
エルダもヴェルエもだが、なぜ自分に好意を寄せたのか。
エルダは幼馴染だ、グレイスによくしてくれる、信頼出来る人。
ましてやヴェルエは、自分の〝聖竜〟だ、信頼はしているけれど、どうしてグレイスに好意を寄せたのか、全くの謎である。
「……いたずらかな……?」
自分の部屋にこもって、グレイスはぽつりと呟いた。
もしかしたら単なるいたずらかもしれない。
ヴェルエにからかわれたのか、何なのか。
けれど、あの瞳はどうも違う様に見えた。
しっかりとグレイスを射抜いて、本気の瞳。
「……じゃあ夢?」
二人が言った事は夢。
そう思って、頬をつねってみた。
夢なら痛くないのだろうけれど、明らかに痛みの感覚があった。
ということは、これは夢ではない。
「……私のどこがいいのか全く分からない」
よく考えれば、自分のいいところが全くわからない。
正直、あまり話さない方だし、多分愛想もそこそこない。
これ以上考えるのは、あまりよくない。
隙を見て、レーヴェに相談してみよう、それも一つかもしれない。
そう思ってから、とりあえずベッドに入って眠ることにした。
「……学院、明日から行こう、かな」
学院にはエルダがいるから居づらいかもしれないけれど、家に居てもヴェルエがいるからきっと居づらい。
それに、授業も出ないでいるのもよくないし、いつまでも家にこもるのもどうかと思ったからだ。
明日からは、また普通の学院生として、勉学に励もう。
やがてグレイスは、疲れからかすぐに眠りに落ちていった。
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