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食堂から教室に戻り、何度も何度もエルダに「宿題を写させて!」と頭を下げられるので、あまりにも面倒になったグレイスは「もう次はないから」と釘を刺して、宿題のノートを貸した。
マッハで写し終えた頃には、ちょうど授業時間を知らせるチャイムが鳴っていた。
現在、教壇に立つレナード先生は、いつものように授業を開始している。
教室のクラスメイトたちは真剣にその授業に向き合う。
気の緩みを見せたら、レナード先生の機嫌を損ねるのを全員が知っているからだ。
今日の授業は、〝魔女の成り立ち〟。
グレイスにとって、今日の授業はいい気分にならない授業内容だった。
悪魔と契約した者が、それに基づいて力を借りている。
脳裏にちらつく、夢の内容。
――どうして。
その先の言葉こそ夢でも出ないが、父を殺したのは間違いなくそれだ。
授業を受けながら、心の中で苦しんでいた。
幼い自分と、今の自分が、そこに同じくして。
ふと、顔色が悪いのに気づいたのか、レナード先生がグレイスを見た。
「顔色が優れませんが、大丈夫ですか? グレイス・マルスモーデン」
心配そうに問いかけられて、ふと我に返った。
「……大丈夫です。続けてください」
「そうですか。もし体調が悪いなら、すぐに申し出てください。わかりましたね?」
「……ご心配、感謝します」
グレイスはそのまま授業を受ける事を決めた。
自分は、逃げてはいけないと。
父を殺したそれが、魔女である、というはっきりとした事実を自覚して。
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