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4-8

「風は攻撃出来るの。授業で習ったよね」


「習った。でも、具体的にどうするかは難しいんだよな」


 風で攻撃、と言っても、吹き飛ばす事だけではない。

 風は物質に変化出来る。

 それを応用する事で、対人にも効果的なのだと、授業で習っている。

 ただ、具体的にそれをどう扱うか、それは操る人間の裁量にかかってくる。


「じゃあ、そろそろ出番か?」


 グレイスとエルダの会話を聞いて、ヴェルエが立ち上がる。

 どうやら練習に参加したいらしい。


「え、俺、ヴェルエと実技すんの? ……自信ないんだけど」


「でも、手合わせだけでもするのもいいかもね。まだ、エルダも風を操れるようになったってだけだから、模索しながら使いこなせるようにならないと」


「……止めてくれないのね、グレイスは」


「心配すんなって。本気出さねぇから」


「ええー……」


 ヴェルエの言葉に少し慄きながらエルダがグレイスを見る。

 どうやらグレイスは前言撤回する気は全くないらしい。

 かと言って、楽しんでいる様子もない。

 グレイスとしては、どこまで風を操れるようになったのか見たい、それだけなのだ。


「……ほんとに本気は勘弁してよ、ヴェルエ」


「しねーよ。俺が本気出したらエルダ死んじまうだろうが」


 ヴェルエは人間の姿でエルダと手合わせをする。

 竜の姿でもいいのだろうが、攻撃竜であるヴェルエは、人間の姿のままでも訓練程度の戦いならできる。

 そもそも、竜の姿でエルダに向かえば、確実にエルダを殺してしまう。


「グレイス、始めていいか?」


「うん。エルダ、とりあえず風を操って攻撃してみて」


「……なんだこの実戦……。すげー緊張」


「現地に行けばもっとだよ、それじゃあ。……じゃ、始め」


 グレイスの号令で、魔法実技が始まる。

 学院の授業でもこんな事をした経験があまりないエルダにとって、緊張しかなかった。

 しかし、なんとか気持ちを静め、集中する。

 まず、自分自身に風を集めるイメージ。

 徐々に集まってくると、エルダを囲むように、風が巻き起こる。

 そして、エルダは攻撃態勢を取る。

 この先、攻撃という課題がエルダにとって初めてだった。

 とりあえず、風で相手を吹き飛ばすイメージをする。

 エルダが攻撃してくるのに、ヴェルエは動じる事はない。

 ヴェルエに風が向かい、吹き飛ばそうとするが、片手でその風をなぎ払った。


「おー。やればできる子じゃんか、エルダ」


 何事もなかったかのように、ヴェルエはそう言った。


「これが、全力なんて、言わないよな?」


 ぎらり、ヴェルエの瞳が光る。

 どうやら、闘争心にスイッチが入ったようだった。

 それを察したグレイスが二人に言った。


「うん。エルダ、凄いね。一週間でこんなに風を操れるようになったなんて。もう少し物理的な攻撃でもよかったかもね。あと、ヴェルエ。私はヴェルエに戦えなんて一言も言ってないから」


「……はいはい。すいませんでした」


 ヴェルエがグレイスにそう返事をするも、エルダは納得出来ていないような表情を浮かべていた。


「納得できない?」


 不意にレーヴェがエルダに問いかける。


「納得、というかその……、やっぱ俺の中でまだどうやって操っていいのかわかんないんだよね。一週間、練習しても、答えが出なかった。しかも、今だってヴェルエに簡単になぎ払われちゃった」


 そう言って、エルダは苦笑した。


「気を落とす事はないと思うよ? あれはあれで、しっかりとした操り方だと思うし。まぁ、僕たち聖竜は普通の魔法使いと違ってけた違いのレベルを持ってるから。そのあたりは気にしない方がいいと思う」


 レーヴェは、エルダにそう言う。

 まだ、身につけて一週間の魔法。

 ここにいるエルダ以外の全員が、一週間で出せた結果に驚いているぐらいだ。


「エルダ」


 不意に、グレイスがエルダに提案した。


「午後は、私と直接手合わせしよう」


「……グレイスと?」


「うん。二人は見学。私とエルダ、二人で〝戦う〟実技をしよう」


 その提案に、エルダは黙って頷いた。


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