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学院の授業が終わって、エルダは早めに帰宅するようになった。
どうやら魔法の自主練習をしているようで、エルダの自宅近くの広場で一人で練習しているらしい。
練習二日目も一日中グレイスが練習に付き合ってくれたが、エルダ自身が納得する結果ではなかった。
グレイスも、それに関しては「焦るな」と言うが、やはりエルダには焦りがあった。
自分でグレイスの力になりたいと申し出たのだ、その言葉には責任を感じている。
何より、微力であろうが、早くグレイスの力になりたいのだ。
「……よし、集中集中」
エルダはそう気合いを入れて、練習を始める。
グレイスには確かに追いつけない、けれどエルダなりの努力はしたい、そう思いながら。
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次の休み。
エルダはグレイスの家にいた。
もちろん、この休みもグレイスに魔法の練習に付き合ってもらうためだ。
グレイスも嫌な顔一つせず、エルダの練習に付き合うことにした。
ただ、以前とは少し違うエルダに、驚きの声をあげたのは、ヴェルエだった。
「エルダ、お前一週間で風操れるようになったのかよ」
「……んー、まぁ、まだ簡単にしか扱えないけど」
「それでも一歩前進だよ、エルダくん」
「褒めてもらうとなんか嬉しいな。レーヴェ、ありがと」
嬉しそうにエルダが言う。
「……エルダは褒められて伸びるタイプか」
「間違ってはいないかもね、ヴェルエ」
二人はエルダに聞こえないようにそんな会話をする。
「ごめん、エルダ。お待たせ」
そう言って、家の中からグレイスが出てくる。
昼食の準備をしていたのだとレーヴェから聞いていたエルダは、別にいいよ、と返答する。
グレイスの服は、相変わらず学院の制服だ。
そして、今日のエルダの服装は、先週のジャージ姿と違って、学院の制服だ。
本人いわく、気合いを入れるためだと言っていた。
「いいのに。普通の服装で」
「いいの。やっぱさ、自分で練習してても思ったんだけど、学院制服着てないと、気合い入んないんだよね」
エルダがそう言うのを聞いて、なるほど、とグレイスは返す。
「エルダ偉いじゃん。やっぱ風格出てきたんじゃね?」
ヴェルエが茶化すように言う。
「だって、生半可な気持ちで挑みたくないし。グレイスの足も引っ張りたくない」
そう言うエルダの声音はとても真剣な様子だった。
グレイスはそれを見て、言った。
「じゃあ、始めようか」
「よろしくお願いします!」
気合い十分なエルダの返事に、グレイスは少し苦笑した。
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