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3-10

 ノインが城に戻ると、皆の姿はなかった。

 その代わり、魔女がノインと対峙する形になっていた。

 魔女の表情は、怒りとは取れない、けれどあまり穏やかではない空気を醸し出していた。


「ノインくん。あなたはどこへ行っていたの? お友達が心配していたわ」


「……」


「別に私は怒ってなんていないの。あなたがどこへ行って、何をしてきたのか。まぁ、無理に教えてとは言わないわ。あなたが出て行った事にペナルティはないし、何より無事に戻ってきてくれた事に、私は嬉しく思っているの」


 優しい裏に、冷たい笑顔を浮かべて、ノインにそう言うと、椅子から立ち上がってノインに告げた。


「さぁ、夕食にしましょう。お友達が待ってるわ」


 言葉の一つ一つが、ノインには冷たく感じられて、背筋が凍るような思いだった。



 まだ皆、存命だった。

 ノインはその事実を確認して、ほっとした。

 もし、自分がいない間に皆が魔女によって殺されてしまっていたら、と考えれば、恐ろしかったのだ。

 食事も皆でしたし、お風呂にも入った。

 魔女が部屋から去って、子供たちだけになった部屋で、ノインは、今日の事を話すことにした。


「〝聖竜使い〟さん、見つかったよ」


「おい、ノイン、ほんとかよ!」


「うん。ちゃんと、知らせて来たよ」


「じゃあ、あたしたちもしかしたら、助かるかもしれないんだ……! よく頑張ったね、ノイン」


 ノーヴェやドリー、他の子供たちが希望を見出したように、喜んでそう言った。

 けれど、本当にグレイスと名乗った〝聖竜使い〟が自分たちを助けてくれるか、はまだ定かではない。

 けれど、喜んでいる皆にノインはそれを言えなかった。

 それでもノインは、グレイスに助けてもらえると、希望を捨てないようにと心の中で思った。


「ねえ、ノイン。〝聖竜使い〟さんって、どんな人だったの?」


「えっと……ルーネスタ王国にフィーリア魔法学院ってあるでしょ? そこの、生徒さんみたい」


「そこって、ノインが勧められてた学院じゃん。すげぇな」


「……口数は少なかったけど、きっと優しい人なんだろうなって思った。その人――グレイスさん、なんか、僕とよく似た雰囲気持ってる人だったな」


「ノインと?」


「うん。……誰か、大切な人を失ったような、そんな気持ちを持っている人なのかな、って。でも、きっとグレイスさんは、助けてくれると思う」


 興味を持って、皆がノインが出会ったグレイスの話を聞く。

 第一印象としか受け取れなかったものの、ノインはきっとグレイスがそういう人なのかもしれないと思ったからだ。

 皆はそれを聞いて、やはり少し希望を持った瞳で、気持ちが緩んだ。

 今はまだ、助けを待つ事しか出来ない。

 しかし、必ずグレイスが救ってくれる事を、信じている。

 そんな会話を気づかれずに部屋の外で盗み聞きしていたカーマイン。


「……あの子のところへ出かけたのね、ノインくんは」


 一部始終を聞いて、不敵に笑む。


「――いつ会えるのかしら。そして、あの子をいつ殺せるのかしら。今から楽しみ。ふふっ」


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