3-7
少年が目を開くと、そこは山手と街の境界線のような場所だった。
「……ここ、どこ……?」
見覚えのない風景に、一瞬戸惑う。
少年――ノインが周囲を見渡すと、立派な城を視認した。
「ここって……。本当に、僕、自分の魔法で……?」
ノインは驚いたように呟く。
立派な城の存在、あの城に見覚えがあった。
ルーネスタ城。
石垣で造られた城壁、城の屋根は空と同じようにはっきりした青が広がり、ノインが立っている場所はどうやら小高い丘のようになっているらしく、城の広い庭園やその向こう側に広がる海まで見える。
本物を見るのは初めてだが、映像や写真では見た事がある。
そして本当にここが、ルーネスタ王国なのだと理解する。
同時に、自分の成すべき事を思い出す。
〝聖竜使い〟を探すためにここにやって来たのだ。
けれど、そもそもどこにいるのか、どんな人間なのか、全く見当がついていない。
噂程度の話、なので、ノインも正直事細かく相手を知らないのだ。
「……でも、探さなきゃ……。それで、皆を助けてってお願いしなきゃ。……でもどうしよう、どんな人かもわかんないよ……」
早速行き詰まりを感じたノインは少し涙目になる。
女性、という事だけは知っている。
けれど、フィーリア魔法学院の生徒だと言う事しか知らず、容姿であるとか、どんな人間なのか、というのは全く知らないのだ。
そもそも、見つけられるのだろうか。
きっとそれも容易ではない。
まず、どこへ向かうべきか。
街? それともフィーリア魔法学院を見つける方が先?
そもそも、この街の人間ではない人間が、魔法で転移してきたわけだが、これは違法になるのか。
それもわからないノインはその場で困り果てる。
けれど、早く見つけて帰らなければ、魔女に自分がいない事がわかってしまう。
そうなれば、もしかしたら他の皆が自分より先に殺されてしまうかもしれない。
「……うぅ、どうしたら……」
そう呟いた瞬間。
「おい、ガキ。お前どこの奴だ。見ない顔だな」
聞き覚えのない男性の声が聞こえて、ノインの身体がびくりと震える。
声のした方を見ると、やはり男性が立っていた。
赤い髪の男性。
彼は切れ長の瞳で、ノインを見下すように見ていた。
説明した方がいいのか、とも思ったが、蛇に睨まれた蛙の状態だ、声が出ない。
すると、もう一人、男性が現れる。
「ヴェルエ、何? ……ああもう、何してるの。怖がってるじゃない」
青い髪の男性。
優しそうな瞳をして、ノインを見た。
「レーヴェ、お前も気配感じたろ? このガキだよ、変な気配」
「……二人とも、何してるの」
そこにもう一人現れたのは、女性というか、女の子。
女の子が着ている制服に、ノインは見覚えがあった。
「あ、あの……フィーリア魔法学院の生徒さん、です、か?」
怯えた声しか出ないノインは、勇気だけを振り絞って彼女に問いかける。
「……そうだけど。何?」
表情を変えず、それでもあまり威圧感は感じない。
もしかしたら、何かを知っているかもしれない。
聞いてみれば分かるかもしれない。
そう思って、ノインが口を開きかけた時。
「……ここじゃ何だし。家、おいで」
彼女――グレイスは、ノインにそう言った。
†




