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1-2

 ルーネスタ王国。

 ここは、山と海に囲まれた、自然豊かな国。

 青々とした木々や海風、海鳥の鳴き声が聞こえ、人々の心を和ませる。

 街の中心には大きな噴水広場があり、様々な商店が軒を連ねる。

 国にある集合住宅は、大抵中心部にあり、最も中心にあるのは、国王が住むルーネスタ城だ。

 そして、その近くにあるのが、グレイスが通うフィーリア魔法学院である。

 フィーリア魔法学院は主に、魔術師(マジシャン)・魔法使い(ウィザード)を育成する学院で、初等部、中等部、高等部のエレベーター制の学院である。

 初等部、中等部、高等部共に共通する事は、三年制という事だ。

 学院の生徒たちは〝見習い〟と呼ばれ、互いに授業を学ぶ。

 どのクラスかわかるように、生徒たちには学院証が交付され、初等部は白のバッジ、中等部は男子生徒は青のバッジ、女子生徒はピンクのバッジ、高等部はブロンズのバッジ、と統一されている。

 なので、学院証の証であるバッジを見れば、すぐに学部がわかるようになっている。

 しかし、この学院には特級という学部が存在する。

 それは、上記三つのクラスには属さない特別なクラスで、特殊な魔法使いや魔術師も含まれている、いわゆる〝能力者(アヴィリティー)〟と呼ばれる者だけが入れるクラスである。

 学院証はシルバーのバッジ、これを所有している生徒はほんの一握り。

 入学して、すぐにそのクラスに割り当てられるので、このクラスで卒業すればすぐに一人前だと認められる。

 その〝能力者〟の部類にグレイスは該当する。

 国民全員承知の、十三代目聖竜使いという肩書きがあるからだ。

 聖竜など、安易に手なずけられるわけではない。

 けれど、グレイスの家系はたった一つの聖竜使いの家系であり、王国からすれば、特別な存在である。

 学院側は特級クラスへ入学するようにとグレイスに勧めたが、父親が亡くなった後の入学だった為、グレイスの心の傷が大きすぎた。


「特別扱いはされたくありません。普通の学院生でいたいです」


 グレイスは学院長にもしっかりと自分の意思を伝え、本人がそう言うなら、と初等部からの入学に決まった。

 確かに、マルスモーデン家の名前は有名で、グレイスも当然有名人になってしまうわけだったが、色めき立つ周囲とは正反対に、グレイスは感情を失い、愛想笑いの一つも苦手になってしまった。

 誰かと会話をする事もあまりしないし、会話をしてもあまり長くは続かない。

 そんなグレイスの学院生活も早いもので、初等部から現在は中等部の二年生になっていた。

 皆と同じように魔術の勉強をして、同等の授業を受ける。

 竜たちとの訓練は家でも出来る、今までだってそうしてきたのだから、授業で習う必要性はないし、魔術を習えば自分のスキルにもさらに磨きがかかる。

 いつものように学院に登校して、教室へ行き、グレイスは自分の席に座る。

 入学してから、腫れものを触るようにクラスメイトたちは、グレイスと少し距離を置いている。

 挨拶はする、少々の会話をするかと言われると、そうでもない。

 けれど、皆はグレイスを決していじめたりだとか、嫌っているわけではない。

 彼らもまた知っているのだ、グレイスの父親、十二代目聖竜使いアドゥン・マルスモーデンが亡くなったという事実を。

 グレイスが未だに傷ついているのも、なんとなく察しがついている。

 しかし、グレイスと距離を置くクラスメイトが多い中、たった一人だけは例外だった。


「おっはよー、グレイス」


 グレイスが声の主を見ると、それは見覚えのある男子生徒だった。

 エルダ・リモイア。

 彼はグレイスの幼馴染だ。

 昔からとても明るく、このクラスでもムードメーカー的な存在だ。

 そして、グレイスの事もずっと知っているし、父親が亡くなった事も承知している。

 けれど、エルダとしては、一日も早くグレイスに元気になってもらおうと、明るく振る舞っている。


「……おはよう」


 エルダに向けて、事務的に挨拶をするグレイス。

 エルダはちゃんと承知している。

 逆に、こうして挨拶を返してくれるだけましだとさえ思っている。

 笑顔もなくとも、挨拶はしてくれる。

 それだけで十分だった。

 満足したようにエルダは微笑んで、グレイスに言った。


「今日も来てくれて嬉しいよ」


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