3.救いの手を差し伸べて
「どうだった? クッキー」
クッキーを貰った翌日、グレイスはエルダにやはり感想を求められた。
いつもお菓子を貰うと、エルダの母親が感想を聞いてきなさいと言うらしい。
どうやら、今後の製品作りの参考にするのだという。
「……うん。美味しかった。意外だったのは、チョコチップミントクッキーだったかな。ミントの香りが鼻を抜けて、チョコチップがちゃんと味を締めてて、アイスのチョコミントを食べてるみたいで、レーヴェとヴェルエも驚いてた。「アイスでは食べた事あるけど、この発想はなかった」って。定番どころも美味しいけど、こういう一風変わったのもいいと思ったよ」
いつも事務的な返事でしか返さないグレイスも、さすがにこの類の話になると違う。
ちゃんと感想を言わなければ、と思った事をしっかりと口にする。
どちらかと言うと、エルダは幼馴染なので、喋りやすい、というのも一理あるのだが。
「俺もチョコチップミントクッキーは試食したけど、あれはびっくりしたなー。斬新過ぎて。でもあれは確かに美味かった。あれは新作だけど、「自信作なのよ、ふふん」みたいな感じだったよ」
ギフト商品にすると言うのだから、少し変わったものも入っているのもいいのかもしれない。
長年培って来たお菓子作りの中でも、チョコチップミントクッキーに関しては、かなりチャレンジしたほうだったのかもしれない。
エルダの母親のお菓子は王国の中でも有名で、普段でもお店は繁盛している。
休みの日はエルダも接客の手伝いに駆り出されているのも、グレイスは知っている。
「ていうか、やっぱレーヴェとヴェルエも食べたんだ」
エルダは二匹が人間の姿になって出てきて、食事をしたりすることを知っている。
それは、生前のアドゥンがいた頃から変わっていないし、今更驚く事もなかった。
確かに、最初は驚いてはいたが。
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