2-6
確かに食事には何も入っていなかった。
人数分のミネストローネとパン。
どこでそれを仕入れたのかは分からないが、魔女というぐらいだから何かしたのだろう。
食事を済ませ、入浴までも許可された。
汚いのは嫌なの、というカーマインの言葉だった。
ノインは入浴を済ませた頭で、カーマインという魔女の事を考えていた。
この人はもしかすると、〝普通の魔女〟ではないのではないのだろうか。
そもそも、自分たちを捕えた、という段階で自分たちに危害を加えると思っていた。
けれど、今はそういう兆候はない。
それは、彼女の言う〝お仕事〟にも関係してくるのだろうが、節々に違和感を覚えるのだ。
食事を与えた、温かい食事。
入浴まで許可された、捕えたはずの自分たちに対して、汚いのは嫌、という理由はあっても。
そういうものなのだろうか、魔女とは。
――そういえば、魔女って、どういう存在なんだっけ。
以前、母方の姉――現在の両親に聞いた事があった。
それは、昔話の一節のように語られていた気がした。
「ノイン。魔女と言うのはね、悪魔と契約する事によって、その悪魔から力を借りるの。それで、魔法を使うのよ。魔法使いとは逆に、悪い魔法使い、って言った方がノインにはわかりやすいのかしら」
「悪い魔法使い?」
「そう。でもね、魔女を追い払ってくれる魔法使いもいるのよ。そうね――」
ノインは記憶を辿ってその言葉を思い出す。
「ルーネスタ王国にいる、〝聖竜使い〟さんとか」
――ルーネスタ王国にいる〝聖竜使い〟。
そういえば、と思った。
噂程度で、聞いた事がある。
フィーリア魔法学院に、その〝聖竜使い〟の女の人がいる、と。
「……もしかしたら」
その人に会えたら、自分たちは救ってもらえるかもしれない。
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