勇者に渡す予定だった銅の剣を渡せなかった国王物語
「おぉ、勇者よ。これはワシからのささやかな贈り物じゃ!目の前にある宝箱を開けてみるがよい!」
謁見の間に国王の声が鳴り響く。
「まぁ、リハーサルはこのくらいでいいか…。けっこう威厳あるような声もだせるようになったし。やっぱりこの大事な場面でセリフを間違えたら恥ずかしいよね。よし!大臣よ!勇者様をここに呼べ!」
「陛下、勇者様はもう出掛けました…」
「なに!?ワシにまだ会ってないではないか!冒険の記録はここでしかできんのだぞ!」
「いえ、今は宿屋でも冒険の記録ができます」
「なに!?それを早く言わんか!せっかく用意したこの銅の剣どうするんじゃ?」
「陛下がお使いになっては?」
「ワシは銅の剣は使えん…。だって重いたいじゃん。あ~!もう!ワシが直接渡してくる!まだ近くにいるじゃろう」
「えっ!?へっ陛下~!待ってください~!!」
こうして国王と大臣は勇者を探す旅に出た。
城下町を探索する。
宿屋に聞き込みに行く。
路地裏にも入ってみる。
やっぱり勇者はいない。
「へ、陛下…。勇者はもう次の町にいったのでは?」
心配そうな顔をしながら大臣はワシにそう言う。
「いや、そんなはずはない。勇者というのは一度町に来たら次の冒険にいく準備を入念にするものじゃ。そう簡単にはこの城下町から出んじゃろう。大臣よ他に勇者が行きそうな場所の心当たりはないかの?」
「そうですね…。あっ!?武器屋とかどうでしょう?まだ見に行ってなかったですよね」
「おぉ、武器屋か!よし!行ってみよう!」
こうして二人は武器屋に向かって歩き出した。
「カナンの武器屋…。ここですね?」
「おう、そのようだな。入ってみよう」
ガチャ…!玄関の扉を開けた。
「へい!いらっしゃい!カナンの武器屋だよ!」
ノリの良い声が店内から聴こえる。
「カナンの武器屋って知ってるから。看板にしっかり店名書いてあったし」
「へ、陛下…。威厳のある風にしゃべってください…。国民に陛下が実は軽い男だというのがばれてしまいます」
大臣が耳元でそうささやく。
「おっおう…。ゴッホン!カナンよ。そなたに聞きたいことがある。勇者がこの店に来なかったか?」
「勇者…。あぁ!来ましたよ。武器がないからと言って、悩んだ末にこんぼうを買っていきましたよ」
「ほら言わんこっちゃない…。こんぼうよりも銅の剣の方が攻撃力高いのに」
国王は心の中でそうつぶやいた。
「で、勇者はどちらへ?」
「あ~なんか魔法使いに転職するって言ってましたよ。なんでも魔法使いの方がオシャレで女性にモテるんですって。だから中央通りにある職業案内所に行きましたよ」
「なに!?勇者を転職したいじゃと!?情けない…。勇者というのは選ばれし者の証じゃぞ!それを転職したいとは何事じゃ!?そもそも転職するならなぜこんぼうを買ったのじゃ??」
「いや、武器屋の私に言われても…そこまではわかりません」
困った顔をしながらカナンはそう言った。
「たしかにね。カナン、サンキュー。情報ありがとね」
「へ、陛下…。だから威厳のある感じでしゃべってください…」
大臣が耳元でそうささやく。
「おぉ、ゴッホン!カナンとやら情報提供感謝するぞ!誉めてつかわそう!」
「ありがとうございます!」
嬉しそうな表情をしながらカナンはそう言った。
そして、二人は武器屋を出た。
「陛下、勇者様に会いに職業案内所まで行くんですか?ここからだとちょっと遠いですよ?」
大臣がそう聞いてくる。
「いや、もうよい。魔法使いになるなら剣は必要ないじゃろ。探して損したわ!その銅の剣はそこら辺に捨てとけ」
「はい、わかりました」
大臣は道端に銅の剣を捨てた。
「城に帰ったら少し昼寝しよう。なんだか今日は疲れた」
「へ、陛下!今日は午後からアルブール王国の外交使節団が城に来ますぞ。ですから昼寝はできません」
「な、何と…。国王は忙しいの…。あぁ、ワシも転職しようかの」
「へ、陛下!国王は転職できませんぞ!」
「ハハッ…。冗談じゃよ。さて帰るか!」
こうして二人は城に帰って行った。
職業案内所からの帰り道、俺は道端に剣が落ちてるのに気がついた。
よく見てみる。
それはなんと銅の剣だ。武器屋で買うと620ゴールドはする。
「おっ!ラッキー!道端に銅の剣が落ちてる。これなかなか攻撃力高いんだよね。魔法使いにならなくて良かった。これでフレイムドラゴン倒せるかも」
勇者は銅の剣を手に入れた!!
おわり。




